下品で不愉快な食事
唾液で浸潤された口を、喉ちんこが覗き見える程に大きく開けてから骨付きチキンにむしゃぶりつく男性。口に入れてもあまり噛まないまま喋り始めるので、んっちゃんっちゃと空気を含んだ咀嚼音が止まらない。
「うんめぇ! これマジでうんめぇ!」
その興奮によりもれなく向かいの席まで飛散される荒いツバのスプリンクラー。
「私タピオカミルクティーがいい〜〜。わ〜〜いいただきまーす」
赤いストローに自ら唇を吸い寄せたはいいが、肝心のタピオカを上手く吸えないがために必死の吸引力を晒す女性。その吸いつきたるやおぞましく、汚い轟音と共に段々と口元周辺の皮まで吸われていき、エイリアンのような変貌を遂げていく。
「全然吸えないんだけどぉ!」
彼氏の前でドスを効かせ、目を血走らせて激昂している。
「ひ〜ぃ、もう食べられないよぉ」
「駄目でしょ貴方。残したら勿体無いじゃない」
子どもの残飯を処理させられている父親。嫌々ながら海老フライをつまみ上げ、しぶしぶ口へと放りこむ。楽しいはずの食事が拷問へと変化している。
「っおぇ…………」
口は受け付けても喉は受け付けてくれなかった。妻に牽制されながら父親は慌てて手を当てる。
「ちょっとぉ! やめてよこんなところで!」
「パパどーしたのー?」
地獄絵図だ。このフードコートでアルバイトをしている店員は思った。
会食恐怖症の彼には、感覚として人間の口が肛門と同様に見える。彼にとっての食事とは、皆が上の肛門をおっ広げて何の羞恥もなくそれを公開し合う、これ以上にない奇妙な行為であった。まさしく破廉恥極まりないものであった。やはり、他人と食事なんて一生できる気がしない。
きめぇと思わせたら勝ちです。