1話 覚醒
(一年前)
マークおじさんが王都に魔法書を持って帰ってから半年後、遂に覚醒した。
「やった!遂にマナが覚醒した!」。(爺ちゃんに報告しなきゃ!)
「爺ちゃん、遂にやったよ!マナが覚醒したんだ!」
「よく頑張ったのう、さてマナは何色が出たんじゃ?」
僕は精神を集中し、手のひらにマナを集めた。
マナは、≪赤≫ ≪青≫ ≪緑≫ の三種類存在し、それぞれに応じた能力がある。
≪赤のマナ≫
火属性を扱う事が出来る。主に攻撃魔法が得意
≪青のマナ≫
水属性を扱う事が出来る。主に防御魔法が得意
≪緑のマナ≫
風属性を扱う事が出来る。主に治癒魔法が得意
僕が覚醒したのは、≪赤のマナ≫だった。
「よく頑張ったのう、まずはマナの扱いに慣れることから始めてみるんじゃのう」
「わかった!もっと頑張る!」。(もっと強くならないと!)
この村はかなり特殊な場所にある。本来人の出入りが禁止されている魔境で、爺ちゃんが見つけたこの遺跡は不思議な力で守られていて魔物が近づかないようになっている。この村は遺跡を調べるための基地がそのまま村になったのが始まりだと聞いた。
魔境の周りを囲うように、西のシアン王国、北のマゼンタ共和国、東のキイロ連邦国、この三つの国々が存在する。南側には海があり、シアン王国から、キイロ連邦国に行く場合には、マゼンタ共和国を経由するか、南の海を渡るしかないと、マークおじさんに聞いた。余談だが、シロノ村と名付けたのは爺ちゃんらしい。
そして現在いるシロノ村からは西側から魔境を抜けるのが一番近いので、まずはマークおじさんのいる西の王国であるシアン王国を目指すのが目標だ。
(一年後)
赤のマナを使った攻撃魔法を覚え、赤のマナによる一時的な身体強化も使えるようになった。これで魔境を抜けられるかと思ったけど甘かった・・・
「魔境の魔物は強いってのは知ってたけど、全然攻撃が効かないんじゃどうしようもないよ・・・」
何度か魔境にトライしてみたが、まったく歯が立たない。今は村の不思議な力のおかげで追ってくる魔 物から逃げることは出来ても魔境の中に入ったらそうはいかないので、対策を立てる必要があった・・・。
「くよくよしててもしょうがないし!教わった事の中で、試せることは全部やってみよう!」
・
・
・
「結局色々試して良さそうだったのは二つだけかー」
一つ目は<魔法を凝縮して放つ>
二つ目は<赤のマナを身体能力だけに使って剣で戦う>
「一つ目は一回のマナの消費が凄いし、二つ目は火力が足りないんだよなぁ」
マナは一日に使える量が決まっている。使える量は鍛錬により鍛えることが出来るが、回復するには、しっかりご飯を食べて、ちゃんと睡眠を取らないと回復しないとマークおじさんは言っていた。
剣の練習は5年前からマークおじさんに教わった、マナが覚醒してからも毎日欠かさずやっている。
そんなことを考えながら素振りをしている時に珍しく爺ちゃんが現れた。
「ジークよ、苦戦しておるようじゃな」
「魔境の魔物達に攻撃が効かなくて、色々考えたんだけどさ、良い方法が思いつかないんだ」
「そうかそうか、そんな時は教わったことを全部相手にぶつけてみたらどうじゃ?」
「全部ぶつけるって言ってもマナが足りないよ」
「フォフォフォ!ヒントはここまでじゃ」
「全部ぶつけるかー、どうやったら出来るんだろ?」
今日はマナがもう無いので明日魔境の魔物に試してみる事にした。
(次の日)
目印を付けておいた場所まで来た。この場所は魔境の中でもトップクラスの防御力を誇る、猿に似た魔物の巣だ。
「こいつさえ、倒せれば他の魔物にも通用するはず!」
魔物は一匹。丁度今は食事中らしい・・・。足音を殺して背後から近づく、僕は全身の赤のマナを剣に凝縮した・・・。
僕は思いっきり魔物の背中に向けて赤のマナを纏った剣を振りかぶった。
前は傷を付ける事さえ出来なかった魔物の皮をあっさり切り裂くと、勢いそのままに肉を切り裂いた!
「ウギャアアアア!!!」。(魔物は切られた箇所を抑えながら悲鳴をあげている)
「ハアッ!!」
僕は間髪入れずに魔物の首目掛けて振りかぶった。
ボトッ!
魔物が抵抗するよりも早く僕の剣が魔物の首を落とした・・・。
「やった!これならいける!うまくやれば少ないマナで倒せるぞ!それにしても凄い威力だ、切断面が焼けてるよこれ・・・」
爺ちゃんの手助けのおかげで、一つ壁を突破出来た気がする。きっとマークおじさんも僕が壁にぶつかることを知ってて教えなかったんだと思った。
遂に明日15歳になる。そしたら村を出て、シアン王国を目指す。あの後魔境で魔物と何度も戦かった。少しずつ地理も覚えているので今なら三日で出れるはずだ。まさか外に出るのに5年もかかるなんて思わなかったよ・・・。
明日に備えて寝よう。