0話 出会い
村の外は、何があるのだろうか。ふと子供の頃気になった。村の大人達に聞いても、誰もが、危険だから知る必要なんてないと言う、きっと何かを隠している。そう思っても外に出る勇気はなかった・・・。
半年後、村に一人の男がやってくる。初めて見る格好に、只者ならぬ雰囲気を纏っていた。俺はこの人なら答えを知っている、そんな気がして声をかけた。俺の人生を変える運命の出会いだった。
「ねえ、おじさんって村の外から来た人でしょ?村の外って何があるか、知ってる?」
「なんだ?坊主は村の外に出たことがないのか?」
「うん、村の外は危ないから知らなくていいってみんな言うんだ」
「確かに外は危険だ、だが知っていたら避けれる事も多いだろうしな、村長の家に案内してくれたら後で外の事を教えてやるよ」
「本当に!?すぐ家まで案内してあげる!」
僕は案内している間に気になった事を聞くことにした。
「僕の名前はジーク!おじさんの名前は?」
「俺のことはみんなマークって呼んでる。まあマークおじさんとでも呼んでくれ」
「マークおじさんはじいちゃんになんの用があって来たの?」
「俺はある物を届ける用に言われて王都からここまで来たんだ」
「それでじいちゃんに届ける物ってどういう物なの?教えてよ!」
「秘密だぞ?こいつは魔法書だ、だが普通のもんじゃねえ。王都の研究者達でも解読出来なかった古代の魔法が掛かった魔法書って話だ。ここの村長にしか解読出来ないって話になってな、運び手に俺が選ばれたってわけだ」
「そんなに凄いなら面白そうだしちょっと見せてよ!」
「残念だが、さっきの話で我慢してくれ、それでこの家か?」
「そうだよ!ここが僕とじいちゃんの家だよ!さあ入って!」
僕はマークおじさんをじいちゃんがいる部屋まで連れて行った。
「ギルじいちゃん!入るよー!」。僕は返事を待たずに、扉を開けた。
「なんじゃ、ジーク客人か?珍しいのう」
「お初にお目にかかります。私はマーカスと申します。国王の命により、古代魔法研究の世界的権威であらせられる、ギル・フォーシャス様にこちらの魔法書の解読をお願い致したく王都より参りました。」
「なるほどのう・・・お主程の冒険者を雇ってまで頼むとは、よっぽど重要な場所から出た魔法書という事かのう」
「左様でございます。王都地下に広がるダンジョンの20階層にある祭祀場より発見された物になります。現在それより先の扉が開けれず、探索は中断、唯一の手がかりはその魔法書のみとなっています。引き受けて頂けますでしょうか」
「引き受けるしかなかろうよ、わざわざ来てもらったお主に悪いしのう。ただし条件が一つあるがいいかのう?」
「条件とはなんでしょうか?」
「わしの孫であるジークの面倒を見てやってほしいのじゃ、解読を始めるとほかの事はやれなくなるからのう、どうじゃ?やってくれるかの?やってくれるなら家は好きに使ってもらって構わんよ」
「わかりました、責任を持って面倒を見させていただきます。それと魔法書をお渡ししておきます」
「ではわしは早速解読の準備をするとしようかのう、ジークも彼の言うことを聞くんじゃぞ?」
「うんわかった!マークおじさん、家の中を案内してあげる!約束も守ってね!」
「ああ、後でいくらでも教えてやるさ。時間は沢山あるだろうからな」。おじさんはそう呟いた。
じいちゃんが魔法書の解読を終えるのに3年近く掛かった。その間、僕はマークおじさんから外の世界の事や外の世界で生き抜く為の方法を教わった。
そして僕は15歳になった。おじさんが王都に帰ってから一年半。教わった事を忘れず、自分自身の鍛錬も毎日続けている。そして僕は5年前と違って外の世界に出るための知恵と勇気と力を持っている・・・。