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作者: キマ

絶対的にきらきらしていた。

私は少し騒々しい鳥のさえずりを目覚ましがわりに目を覚ました。大きな欠伸をし、身体の気だるさを感じながら、寝ぼけた頭でベット脇にあるテレビのリモコンを手に取り、つける。丁度朝のニュース番組が始まったところで、少し畏まっていながら明るい口調のニュースキャスターが、いつものようにあいさつをした。それを耳で聞き流して、私は今朝見た夢について考えていた。まだ鮮明に残っている夢の記憶は、私にとめどなく愛するペットを見ているときのような、また、洒落ているカフェのスイーツの上に乗っているイチゴを見ているときに湧き上がる感情と似たようなものを感じさせた。いつもは何かに追いかけられるような悪夢ばかりなのに、この時、私は夢の中で自分自身がこの世の“幸せ”を、全て手に入れられたようだった。例えば、“愛”や“平和”とかが、抽象的で絶対的に手に入らないものではなく、私たちの日常そのもので、価値観から生まれる矛盾という概念がない世界。それは私にとってはこの上ない喜びで、幸せで、全てを捨てて手に入るものなら、迷うことはないだろう。ふと現実に戻り、冴えてきた頭でテレビのニュースを見る。日常と化した殺人事件や、自殺のニュースをアナウンサーが淡々と読み上げ、頭が追いつかないうちにどんどん新しいニュースに切り替わる。幸せな夢に支配された私は、この世界は“愛”や“平和”に程遠いものだと現実にまざまざと見せつけられた気がして、悔しかった。変わることのない事実にただただ圧倒されて、いつのまにか目には涙が溢れて、粒になってこぼれた。とめどなく溢れた涙は、幸せな夢の記憶も一緒になって流し、泣き終わる頃には、絶望や矛盾を受容した、いつもの私だった。もう曖昧になってしまった夢の記憶は、私の中にこの世界を留めて離さなかった。

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