2 テイクアウトは家政婦メシ風で?
全国的に感染が拡大し、不要不急の外出自粛が求められる中、テイクアウトの利用を増やすことが飲食店を維持してもらう上で重要になると思うのですが。
テイクアウトってお弁当や鉢盛だけでは利用者が増えにくそうな気がします。
そこで、家政婦メシ風のテイクアウトはどうかな? と。
料理を小分けにしたものを何品かまとめてテイクアウトできたら、どんな料理が入っているか楽しめるし、飽きがこなくて楽しいかな? と……。
飲食店のテイクアウトについてのアイディアを書いてみたので、ぜひ、読んでみて下さい!
【 家政婦メシ風テイクアウト 】
・〇人前〇品○○○円で注文を受け付ける。
・献立は基本的にお店の自由。外してほしいアレルギー食材や入れてほしい料理(お店の看板メニューなど)等、お客さんから要望があれば臨機応変に。
・料理は1品ずつジップロックやタッパに入れて、冷蔵庫にしまったり、レンジで温めたりできるようにしておく。
・店舗を持たない料理人はSNS等で注文を受け付け、自宅で調理。注文者に自宅へ取りに来てもらうか、料理人が注文者のところに届けるか、宅配を利用する。引き受けてくれる飲食店があれば料理を預け、注文者にはそちらに取りに来てもらう。
この方法なら
・鉢盛だと温めるのが大変だし、食べきれないときに冷蔵庫にしまうのも手間。
・お弁当はいいけどメニューが固定化されていて変化が少ない。
・料理が小分けにされているので、食べたい量を食べたいタイミングで食べやすい。
・店側が食材の管理をしやすくなる。
「ユーリんとこってテイクアウトって利用する?」
天平に聞かれて考える。
「んっと……そんなにしない、かな? うちは元々、テイクアウトも出前も取ることあんまなかったし、外食することもあんまり……」
うちはおばあちゃんが毎日ごはんを作ってくれるから、スーパーでお惣菜を買ってきたりたまにお弁当屋さんでお弁当買ってきて食べることはあるんだけど……。
「あ、うどん」
そうそう、そうだった、と思いつく。
「うどんはお持ち帰りのうどん買ってきてうちで温めて食べてるよ。僕もおじいちゃんもおばあちゃんも好きなうどん屋さんがあって、たまに無性に食べたくなるんだよね」
「うどんな♡ ちかっぱうどんだろ? 安くてうまいよな♡」
天平が僕の好きなうどん屋さんを言い当てる。
地元では人気のうどん屋さんでとにかく安くておいしい。お昼時はよく行列が出来ていたけど、うどんが出てくるのが異常に早くてお客さんの回転が早いのでそんなに待たずに食べられるお店――だったんだけど……。
「あそこのうどん屋さんもお店の中で食べる人がすごく減ったみたいなんだよね」
僕も、新型コロナがテレビで取り沙汰されるようになってからずっと、お店では食べていない。
うちでは、うどんを買いに行くのはおじいちゃんなんだけど、おじいちゃんによるとちかっぱうどんのお客さんは前よりやっぱり少なくなったみたい、なんだよね? それはそれだけ外食を自粛する人が多いってことで、感染を抑えるためには安心なことだし、ちかっぱうどんの場合はお客さんが減ったといっても元々お客さんがたくさんいたときのころに比べれば少ない、ということだから、お客さんが全然いなくなったってわけではないんだけど……。
「あの店は前から持ち帰りする人多かったけどな」
天平が言う。
それはその通りなんだけど――。
「それでもやっぱり、前に比べるとお持ち帰りする人も少なくなってる気がするっておじいちゃんが」
「そっか。……やっぱそうだよなー」
天平が肩を落とす。
「どうかした?」
「んー、いやさぁ? うちのクラスのヤツで、親が共働きで忙しくて平日はあんまり親と話したりできないんで、その分、日曜のお昼は親と一緒によく近場にドライブランチしに行くっていうのがいるんだけど」
天平が語り出す。
「ドライブランチ? って、ドライブしてお店でランチ食べるってことだよね?」
お出かけするって言っても、僕たちの住む街やその周辺って、お祭りやイベントでもやらない限り、都会みたいに人がぎっしりになる場所なんてそうそうないし。家族でドライブするくらいなら感染リスクって別にないと思うけど……天平、なんでこんな話を?
「そいつ、喘息持ちだから、コロナが入って来てからは念のため外食はしないでいるらしいんだよな? だから、日曜の楽しみだったドライブランチはやんなくなって」
「そっか……そうなんだ……」
持病があるから外食しちゃダメ、ってことはないと思うけど、持病があるから絶対にコロナにかかりたくないって、本人の意思で自粛を徹底するってことはあるだろう。
「んで、車でどっか行って、行った先のお店でお昼食べてまた車で戻って来る、っていうのはやめたわけだけど。日曜に家でじっとしてるのもなんだし? お店でごはん食べずにドライブするだけならいいんじゃないのってことで、お昼食べる前にドライブに行って家に帰ってお昼食べるか、お昼食べてからドライブに行くかしようか? とか。それか、ドライブに行ってどこかで何かテイクアウトして車の中かどこか人気のないとこでテイクアウトしたヤツ食べてまたドライブするとか? そんなことしようかって親と話したりしたらしいんだけど」
「けど?」
「なんか、そうなると出かけるのがめんどうになったらしくって。すんげー出かけなくなったっていうんだよ。なんつーか、『人のいるとこには行かずに家でじっとしてなきゃ!』って無理くり自分を抑えこむとかじゃなくてさ、もっと自然なカンジで出かけなくていいや、みたいな?」
「そうなんだ……?」
我慢して家にじっとしてるより、家にいていいと無理せず思えるなら、それはそれですごくいいことなんじゃないかな? と思っていると――。
「家にいると、やっぱ自炊するらしくってさ?」
と、天平が言う。
「うん? まあ、そうかもね? 家にいるなら家でごはん作るってなるんじゃないの?」
家にいる場合は自炊しなきゃいけないってことじゃなくて。それこそ、自然な感じで家でごはん作るってなる人は多いだろうって思う。――僕は料理できないんでそれをふつうだとは言えないけど、それがふつうな人は結構いるんじゃないかな?
天平はさっきから何が引っかかっているんだろう? とふしぎに思いながら聞いていたら――。
「何が言いたいかっつーと。そいつの話聞いて思ったわけだ。外食するためには出かけるけど、テイクアウトするために出かけるかっつーと、意外とそうでもないんだな、と」
天平は難しい顔でそう言った。
「え?」
「ほら、どこかに出かけると、いちいち家に戻ってらんないから、出先で食べられるとこ探して食べるから外食するけど。外食をテイクアウトに置き換えると、テイクアウトしたものをどこで食べるかを考えなきゃいけないから。考えてみるとさ? 外食をテイクアウトに置き換えるって、意外と難しいよな……」
「テイクアウトするために出かけるか……」
天平に言われて考えてみると――。
あれ? 出かけないもの、なのかな……?
だとしたら――?
天平が何を問題視してそんなことを言い出したかがうっすらわかって、じんわり、心が落ち着かなくなる。
果たして――。
「理論上は、これまで外食してた人が、それまでと同じペースで飲食店で外食してた分テイクアウトにお金を使えば、飲食店の経営に影響は出ないはずだろ?」
「うん」
理論上は――そうだと思うけど。
現実にそうはいかないという話になるんだなと天平の話の続きを聞く。
「ぜんぜん外食してなかった人がわざわざテイクアウトするかっつーとそうはならないんじゃないかって思うけど。よく外食してた人なら、いつも外食している通りに、それをテイクアウトして帰るようにすれば、飲食店の売上げってそんなに落ちないと思ったんだけど――」
「――けど」
「けど、外食してた人が外食してた分をテイクアウトに置き換えるかっつーと、意外とそうでもないんだな、って」
渋い顔で言い、天平はため息をつく。
「そっか……」
そういうものか……。
僕のうちはそんなに外食しないから、家での生活自体はそこまで大きく変わってないんで、あんまりピンと来てなかったんだけど、そういうもの、なのかな……?
「簡単な話じゃないんだね」
僕がつぶやくと、「ホントそうだな」と天平もつぶやく。それから、
「オレは外食に連れてってもらわなくなったけど、その分、なんやかんや差し入れ増えたんで、そんなに気にしてなかったんだけどさ?」
と肩をすくめた。
天平の家は母子家庭でお母さんは看護師さんで忙しいので、お母さんと外食に行くことはそんなにないみたいなんだけど、天平の場合、お母さんの友達――天平が言うところの『母友』――にごはんを食べに連れまわされ――じゃない、ええと、連れて行ってもらうことが多いので、天平は近隣のおいしいごはん屋さんにそこそこくわしい。
だけど、新型コロナの感染が拡大し、天平は母友に外食に連れていってもらうことがなくなったということみたいで。それはそうかな、と思う。寝食を共にする家族ならともかく、母友と天平が一緒に外食するというのはお互いに遠慮するのだろう。もしも感染させたら――そう思うと、一緒に外食に行くのはやめておこう、になるんだろう。
ただ、その分、差し入れが増えたというのが、天平と母友さんたちの付き合いだな、と思う。話に聞く感じでは、親子じゃないけど親子的で、それでいて友達っぽい付き合いなんだよね。だから、天平を気にかけて何か差し入れでも、ってなっちゃうんだろうな。
天平自身はというと――天平は料理男子で自炊上等なので、天平自身がテイクアウトや出前を利用することは少ないみたいだけど、もらい飯が多いのが天平で。天平って、とにかく食べるのに困らないタイプなんだよね。
そんな天平だから、世の中の人はそれなりにテイクアウトを利用するんじゃないかと思っていたみたいなんだけど――。
「なんか、思った以上にテイクアウトって売れてないんかもしんない。と思って」
どう思う? と天平。
どう思う? と言われても、そこそこ売れてるだろうし、そこそこ売れてないだろうし? 実際、どれくらい売れてるのかなんてわかんないよ?
「そうだね、どんなもんだろう……?」
首を傾げるしかできない。
「さすがにコロナの前に比べたら飲食店の売上げってすごく減っただろうとは思ってたけど。でも、テイクアウトやデリバリーが、お店をなんとか維持していく力になるかな、って思ってたんだよな? もちろん、テイクアウトの売れ行きってお店によってよかったり悪かったりとすると思うけど」
「そうだね」
「でもさー、考えてみたら、例えば、お店屋さんで八百円の生姜焼き定食たべるのは、そんなに高いって感じなくても――っつか、むしろ安いって感じる人のが多いと思うけど――生姜焼き弁当が八百円だったら高く感じて買わないかもって思ってさ~」
天平は申し訳なさそうな声を出す。
生姜焼き弁当八百円――!
それは僕の金銭感覚でいくと、ちょっと衝撃のお値段かも……?
「た、確かに……。ふつうのお弁当屋さんだったらその半額くらいで生姜焼き弁当って買えるよね……?」
「スーパーのお弁当だとさらに安かったりすることもあるしな?」
「それ考えると、なんか、もういいか、って気になるかも……?」
「それに、どうせ家にいるんだから、だったら生姜焼き作っちゃえばよくない? になると思うわ」
「ああ、そっか……。それはそうなのかな……?」
なにぶん、料理しないんでその辺の感覚はわからないけど――。
「けどそうやってそう考えると、飲食店のテイクアウトって、思ってた以上に利用しないかもね……?」
「なあ……?」
なんとなくしんみりな感じになって、二人で沈黙。
「なんていうか、外食の持つパワーって、思っていた以上にスゴいのかもね……?」
テイクアウトでは売れにくいものが外食では売れるということは、そういうこと、なのかも?
「出来立ての料理食べるのと、持ち帰ってお弁当で食べるのと、やっぱ違うしな」
「うん」
「お店で食べるときって、メニュー見て『これ頼もう、こっちもうまそう』って選んで、料理が運ばれてくるまで待ってて、出来立てのを食べて、っていうのでテンション上がってくるんだよなー」
「うん」
「テイクアウトはテイクアウトでどれにしようって盛り上がるんは盛り上がるけど、やっぱり、出来立てを食べるのとはちょっと違うし。テイクアウトしてまで食べなくてもいいかな、ってカンジになるんかもな……?」
「うん。ちょっとわかるかも? うちは日曜のお昼とかにおじいちゃんたちが僕のために宅配ピザ頼もうかって言ってくれることあるんだけど」
「おお! 宅配ピザ!」
「うちの場合の話なんだけど、メニュー見て選んでるうちに、最初はこれにしようこっちがいいかなってテンション上がるんだけど、どれもいいねって思ううちに、どれもいいや、になっちゃって、やっぱりまた今度にして、今日は高菜メシにでもしようかってなっちゃったりするんだよね……」
「高菜メシ♡ いいよな♡」
高菜は天平の好物の一つだ。
思わず笑顔がほころんだ天平だったが、顔を引き締め、話を続ける。
「けどまあ、テイクアウトにしろ、デリバリーにしろ、いざ選ぶとなると、どれにしていいかわかんなくなってもういいかになるパターンってあるよな?」
「あるよね?」
なんでそうなるんだろう?
いや、ならない人もいっぱいいるんだろうし、僕だっていつもいつもそんな感じになるわけじゃないんだけど。
「あのカンジってなんだろうな? なんか選んでるうちに……もう一つの選択肢に行っちゃってんのかな?」
「もう一つの選択肢?」
「『選ばない』っていう選択肢?」
「選ばない?」
「そ。ほら、ごはん屋さんに入ったら、ごはん食べずに出ていくわけにいかないから、もうメニューを選ぶっつー選択肢しかないけど。デリバリーだと頼まなきゃいいし、テイクアウトもお店の前まで行ってやっぱ引き返すとかできちゃうし。選ばなくてもいいっちゃいいんで、頭の中が『選ぼう』ってなりにくいんかもよ?」
天平がまじめな顔で言うので、何か根拠があって言ってるのかと思って、
「そういうもの?」
と聞いたら、
「わかんない」
と天平。
どうやらオリジナルの考えだったらしい。
まあでも、デリバリーやテイクアウトだと『選ばない』という選択肢があるせいでやめてしまうというのは、僕の感覚的には『ある』かもしれない。
「天平の言うようなことがあるなら、テイクアウトやデリバリーって『選ばない』っていう選択肢を克服しないと利用されにくいかもね……?」
「そうだなぁ……?」
二人で考えこむ。
『選ばない』っていう選択肢を克服しようと思ったら――。
テイクアウトやデリバリーを頼もうとしたとき、『選ばなくてもいい』と思わないような、『選ばないわけにいかない』と思えるような何かがあればいい、ってことだよね?
選ばないわけにいかない何か――。
「あ、爆弾おにぎりデー」
閃いた。
「爆弾おにぎりデー?」
きょとんとオウム返しする天平に、思いついたことを頭の中で手早くまとめる。
「前に休校で給食用の海苔の在庫を多く抱えているところが取り上げられているってテレビでやってるの見たとき、天平、いろんな店で爆弾おにぎり作って、毎週この曜日は爆弾おにぎりデーとか商店街ごとに決めたらどうかって言ってたの、覚えてる?」
僕が聞くと、天平はうなずいて、
「中華の店なら角煮とかエビチリとか麻婆ナスとか中華料理店ならではの具を入れたり、和食の店ならだし巻き卵と佃煮と塩サバを具にしたり、洋食の店ならハンバーグとかナポリタンとかコロッケとかを具にしたり、店ごとに具材を工夫してごっついおにぎりにしてでっかい海苔で巻いて爆弾おにぎりにしたらよくない? って言ってた話だろ?」
とノリよくしゃべる。
前は中華料理の爆弾おにぎりの具は角煮とエビチリと麻婆豆腐をチョイスしていて、麻婆豆腐は汁気があるんで外した方がいいと言ってたけど……豆腐の代わりにナスにしたんだな、と細かいところが気になりつつ。
天平はさらにノリノリで、
「あ、そう言えば、爆弾おにぎりって、チャーハンとか味付きのごはんで作ってもおいしそうだと思わん? チキン抜きのチキンライス、要はケチャップライス? でローストチキンや鶏の唐揚げを具にしておっきなおにぎり作って海苔の代わりに薄焼き卵で包んだらオムライスおにぎりになんの。なんか楽しくない?」
と爆弾おにぎり新メニューを提案。
「うん。それはおいしそうでいいけど」
大きなオムライスおにぎりは想像するとわくわくするけど。
どんなメニューにするか考え出すと天平は延々考えてしまうので、軌道修正。
「爆弾おにぎりじゃなくてもいいんだけど、とにかく、曜日限定メニューを出すと、その曜日じゃないと買えないから、買いたくなるんじゃないかな? と思って」
僕が言うと、天平が反応よく、「あ、そゆコトね」と僕の意図を理解した。
「曜日限定メニューな? 限定って、購買意欲を掻き立てるよな♡」
それはありかも、と天平がにっこり笑う。
それから、
「この日だけの限定メニューです! とかも、ときめくよな♡」
と天平に言われ、
「節分の恵方巻も初午のいなり寿司も、やっぱり買っちゃうもんね」
と僕。
恵方巻や初午いなりは毎年おじいちゃんとおばあちゃんが楽しみにしてるんだよね。
「だよなー。――そう言えば恵方巻って、前に、売れるからってたくさん作るもんだからハンパない量が売れ残って廃棄されてるって問題になってたけど。そのせいか、今年は夕方にスーパー行ったら恵方巻コーナーがガラガラになっててさ。あ、もうないやん! って、アレはびっくりしたなー」
大人ってしれっと進化してるよな、と天平が感慨深そうに言う。
「しれっと」という言い方はちょっとないよと思いつつ、天平の気持ちはわからないでもない。大人たちは全然やってないようでいていつの間にかしっかり対策をとっていたりする。大人たちの「さりげなさ」で、世の中がいつの間にか好転していたりする。そういうのは素直にスゴいって思う。
恵方巻はこれまでの売り方との落差が激しかったようだけど、恵方巻の売れ残りをなくそうという取り組みは、ある意味、不自然な姿から正しい姿になったってことかな?
今はコロナのせいで、食材も料理も何もかも、本来の売れ方とは違う姿が出現している……。
「恵方巻が大量廃棄されずにすんだならよかったよね。食べ物が廃棄されるのってやっぱりダメだと思うし」
「だよな」
「それって、コロナのせいで食べ物がいっぱい廃棄されるのもよくないって思う」
「……そうなんだよなぁ……」
僕の言うのに天平も同意して、二人でしんみり。
去年は給食用の食材が余って大量廃棄されたという話をテレビ等で見聞きした。うちのおじいちゃんは給食用の野菜を作っているわけじゃなかったから大きな打撃は受けなかったみたいだけど……。
豪雨や地震で作物がダメになるのもつらいけど、せっかく育ったものを廃棄しなくてはいけないのって、本当につらいだろうって思う。
「食材をうまく使うには、オレはやっぱ、家政婦メシ風のテイクアウトがいいと思うんだけど――?」
天平が声に力を入れる。
天平の言う『家政婦メシ風テイクアウト』というのは、テレビで時々見かけるプロの家政婦さんの番組から天平が思いついたやり方だ。
プロの家政婦さんが有名人の自宅で、その家の冷蔵庫の食材や調味料などを使って、制限された時間内にたくさんの品数の料理を作るように、プロの料理人が料理を作って、それをテイクアウトするといいんじゃないか、という発想で――。
「ソレって『何人前 何品 いくら で作ってください』ってお店に注文したら、お店の人が注文された通りに料理を作って、タッパやジップロックに詰めるんだよね? それを紙袋か何かにまとめて入れて、受け取りに来たお客さんに渡したり、宅配で届けたりするといいんじゃないかって――」
そう話してたヤツだよね? と確認すると、
「そう、ソレソレ」
と天平。
テレビでは、家政婦さんは作った料理をお皿に盛りつけるのではなく、タッパやジップロックに詰めておく。これだと依頼者はその中から食べたいものを自由に温めたりお皿に移したりして食べられる。その要領で、テイクアウトしたものをお客さんが自由に食べられるように小分けしたのが『家政婦メシ風』テイクアウト。名付けたのはもちろん天平だ。
テレビの家政婦さんは、制限時間内に何品つくれるか! でやっているけど、家政婦メシ風テイクアウトで制限時間内に何品つくれるかというやり方でやるのは……やりにくいと思うので、お客さんが何品つくってほしいか指定するといいんじゃないかということで落ち着いた。
テイクアウトの代表と言えばお弁当だと思うけど――。
「お弁当だとお弁当で完結しちゃって、それはそれで一食たべる分にはちょうどいいけど、一食たべる分以上にはならないっていうか。お弁当って一人の人や一つの家庭に一度にたくさんは売れないと思うし。何回か食べてたらやっぱりどこか飽きちゃう人多いと思うんで――」
というのが天平の考えで、この考えには僕も同意。
お弁当っておいしいのたくさんあるけど、僕はたまに食べるくらいがちょうどいい。……食べると間違いなくおいしいのに飽きちゃうなんて、贅沢な話だよなと思うけど。
それに、と天平が話し始める。
「お店ではランチに一人千円前後、夜だったら何千円か食べるのに使うのに、お弁当にすると一個五百円前後くらいの値段にしないと割高に感じちゃうっつーか?」
「――だね?」
「そうなると、お店でごはん食べる場合には一人から千円以上のお金を払ってもらえてた分を、五百円前後のお弁当で稼ごうと思ったら、お弁当たくさん売らないと追いつかないと思うけど、お弁当売ってるとこってたくさんあるからお弁当をたくさん売るのって大変だろうなって思うし?」
「うん」
「デカ盛り弁当にしてその分お値段を高くするとか、ゴージャスなお弁当を高額で売るとか、逆にすっごく安くしたお弁当をたくさん売るとか? いろいろ工夫のしようはあるだろうけど……うまいとこヒットするお弁当を開発できればいいけど、もともとお弁当屋さんじゃないわけだし……やっぱそんな簡単にはいかないんじゃないかって思うんだよな……?」
「……うん」
「そうなると、一度に売る額を大きくしようと思った場合、鉢盛って手もあると思うけど――」
「あ、そうか。鉢盛もあるよね?」
「けど、鉢盛だったら高額にはなるけど、鉢盛って親戚一同が集まるとか、誕生会か何かの集まりとかでもない限り、一度に食べる食事としてはちょっと量が多いと思うし」
「まあ、量が多いかどうかは、鉢盛のおかずの数量と一緒に食べる人の人数によると思うけど……。基本的に鉢盛ってパーティーサイズだもんね?」
「それに鉢盛って、料理をレンジで温めたくてもケースがデカすぎるから、おかずをお皿とかに取り分けて温めなきゃ温めらんないし。食べ残った分を冷蔵庫にしまおうと思ったときも、残りをタッパやお皿に移さなきゃいけないし? そういうの、微妙に手間だと思うんだよ」
日頃から家のことをやっている天平は力説する。やたら実感がこもって聞こえるのは気のせいではない気がする。
「そっか……」
としか言えない僕。
そして天平は、家政婦メシ風にするおすすめポイントを挙げ始めた。
「その点、家政婦メシみたいにジップロックやタッパにお惣菜を詰めてもらえると、温めるとき温めやすいし。冷蔵庫にもしまいやすいし。料理は一度の食事で全部たべてもいいし、これとこれは夕飯に食べて、これとこれは次の日の朝食にしよう、とか好きにできるし」
「うん」
「お弁当だと品数が固定されるけど、家政婦メシ風にすると、お客さんからの要望でメイン料理とか副菜とかいろんな料理を作れるんで、何品もまとめて頼んでもらうことができると思うし。何品も注文してくれればそれなりにまとまったお金もらえるし?」
「うん」
「いくらでどんな料理にするかは調理する料理人次第なんで、いろんなお店の家政婦メシ風を試したくなると思うし?」
「うん」
「料理を受け取ったら、こんな料理が入ってた、こんな料理も入ってた、とか、どんな料理が入ってたか見るの楽しいだろうし。プロが作ってくれたおいしい料理なんだから、キレイにお皿に盛りつけて写真撮りたくなっちゃって? この店の家政婦メシ風はこんなでした、ってSNSで紹介したくなるんじゃないかな? とか思ったりして?」
「それを見た人が、自分もこの店に頼んでみよう、なんて思ってくれるかもしれない、ってことだよね?」
「そうそう。そんで。いろんな料理が出て来るんで飽きにくいと思うんだよな? なので、また頼もうってなりやすそうっつーか」
「リピーターがつきやすそう?」
「うん。んで、何より、何を使ってどんな料理を作るか料理人が決めるから、家政婦さんがその家にある食材で料理を作るみたいに、料理人がそのお店にある食材を使って自由に料理できると思うんだよな?」
「うん」
「メニューに応じて食材を仕入れておいたけど、思ってたほど売れなくて食材が余っちゃって? けどメニューが決まってるから余った食材を他のメニューには使えないんで捨てるしかない、みたいなことになりにくいっつーか?」
「要するに、食材をお店の人が自由に使い回しできるから、食材のロスが出にくいんじゃないかってことだよね?」
「そう。――もちろん、お客さんの要望次第ではお店の人の自由に作れない場合もあると思うけどな?」
「ん?」
「こういう食材で作ってほしいとか、そのお店の看板メニューや好きな料理を入れてほしいって指定されたり、アレルギー体質で食べられない食材があるからそれは使わないでほしいとか? そういうのはお客さんの注文に応じて臨機応変に対応するってカンジかな? って」
「あ、それはそうだよね?」
「それに、お客さんごとに料理を考えて作ってたら大変なんで、例えば『今週は一人前五品千五百円で、内容はこんなカンジです。ただし、その日の仕入れでメニューに多少の違いはあります』ってカンジで売り出すのもいいと思うし?」
「うんうん。その場合、二人前五品なら三千円、みたいな感じになるわけだよね?」
一人前五品千五百円なら、二人前だと単純に一人前の料金を倍にすれば三千円になる。
天平は明るく「そゆコト」とうなずいて、
「んで、そういうやり方で行くと、ほら、廃棄されそうになっちゃってる食材があったら、飲食店が協力して、その食材を使った料理を作るようにしたらいいんじゃないかと思って――」
と、料理に使う食材にも言及した。
それを聞いて、あ、そこに行きつくのか、とハッとする。
食材が廃棄されないようにしたいね、というのがそもそもの話で、それに対して天平が、食材をうまく使うには家政婦メシ風のテイクアウトがいいと言い出したんだった。
それってつまり――。
「廃棄されそうな食材があったら、その食材をテーマに料理を作るようにすれば、廃棄されそうな食材が活用できるわけだね? そしてそれは、依頼者の家の食材を使って料理をする家政婦さんの料理みたいなやり方だとやりやすいんじゃないか、って」
そういうことだね? と天平を見やると、天平は満足そうにうなずいた。
「テレビで家政婦さんが作った料理ってどれもおいしそうだし、ゲストの人たちもおいしいって喜んで食べてるし? 飲食店の人が作ったって、だって、プロの料理人なんだから、どうしたっておいしい料理に仕上がるだろうって思うし?」
いいと思うんだよなー、家政婦メシ風♡――と、自分こそ食べてみたいと顔に書いて、天平が言う。
それからまじめな顔になって、
「それに、コロナの影響とかで閉店した飲食店の料理人さんが再出発しようとするときも、家政婦メシ風のテイクアウトっていいんじゃないかと思ってさ?」
と言った。
「え?」
閉店した飲食店の料理人さんの再出発――?
「再出発にいいって、なんで――?」
僕が聞くと、
「家政婦メシ風ならお店がなくても料理を提供できるやん? 料理作ってタッパとかジップロックとかに詰めてお客さんに渡せばいいわけだから」
と天平。
「それは……」
「例えば、SNSで食べたい人を募集して注文を受けて、料理人さんが自宅で調理して料理を用意して、それを注文したお客さんが取りに行くか、お客さんのとこに届けに行くか宅配頼むかすれば、店舗を持たない料理人さんでも料理を仕事にできると思って」
と天平。
注文を受けて料理を作ってお客さんに渡す? お店なしに? ということは、料理人さんがフリーで仕事をするってことかな?
料理人さんがお店を持たずに料理するって言ったら――。
「コロナのせいもあるみたいだけど、今って、出張料理人を頼む人が増えてるってテレビで言ってたよね? 料理人がお店を持たずにフリーで仕事するなら出張料理人やるといいんじゃなくて――?」
コロナのせいで出張料理人をしている人が増えたとしても、その人たちがみんなお店を閉店したということではないと思うけど、お店の売上げが落ちて出張料理の仕事を始めるようになった人は多いんだろうなと思う。もちろん、もとから出張料理の仕事をしてた人もいるだろう。
腕一本で仕事ができるってスゴいなって思うけど……料理人なら誰でも出張料理の仕事ってできるのかな? いや、できるのはできるだろうけど、仕事になる人とならない人、つまり、出張料理の仕事の依頼が来る人と来ない人がいるかもしれない、よね……?
そういうこと考えると、いろんな可能性があった方がいいのかな? と思った。
いろんな仕事の仕方があって、いろんなやり方で仕事ができたら、それだけ、仕事になる可能性があるってこと、なのかな……?
天平は、
「出張料理人頼む人が増えたっていうのは言われてるし、お金あったら頼んでみたいとは思うけどさ。出張料理人だぞ――?」
と、出張料理人に何か思うところがあるらしい。
「出張料理人が、何?」
何かイヤなの? ……よくわからない。
すると、
「家に来るんだぞ? うち、めっちゃ狭いのに来られてもさ? なぁんかさー、申し訳ないっつーかなんつーか……」
と天平がげんなりした様子で言う。
それから急に言い訳するように、
「いや、別に小汚くしてるわけじゃないんだぞ? うちの台所、不衛生にしているわけじゃないんで、来てくれても全然いいんだけど! 母友が持ちこんだ調味料がやたらあるんで、プロの人に調味料のおもしろい使い方とか教えてもらえていいんじゃないかとか思うし? 出張料理人がうちに来て料理作ってくれたらありがたいなと思うのは思うけどさ!」
とまくしたてる。
天平のお母さんの友達は天平のお母さんが夜勤で家を留守にするとき、天平のめんどうをみるという名目で――いや、もちろんそれが目的なんだけど――天平の家に集まって女子会状態になるということがよくあったらしく。
ある日の女子会で、母友の一人がめずらしい調味料を見つけて買ってみたものの、使い方がわからなくて余らせてるというのを聞いた天平が、だったらオレがそれを使って何か作るから捨てるなよと言ったところ、それ以降、めずらしい調味料を母友たちが次々と天平のところに持ちこんで、天平に何か作ってもらおうとするようになったらしく。一時期、どこかのお店屋さんかというくらい調味料が集まって「調味料パラダイスだ」と、「こんないっぱい、賞味期限切れるまでに使い切れっかな?」と天平がこぼしていたことがあったんだよね。
今はコロナのせいで女子会は開催されずにいるみたいだけど、その分、差し入れが多いということなので、調味料も持ちこまれているんだろうとお察しする。
天平は顔をしかめて、
「けど、プロの料理人にあんなせせこましいとこで料理してもらうとか、悪いやん。ウチとしてはちょっとご遠慮申し上げたいって」
と、胸の前で手を合わせ、謝るような仕草をする。
言われて想像すると、うちも家はそこそこ古いし……天平がうちの台所で料理しててもなんとも思わないけど、知り合いじゃない人が台所で料理するのって……おばあちゃんがイヤがるかも……?
「そっか……。出張料理人って自分の家に上がって料理してもらうってことで。それって、料理を作ってもらうのはいいけど、台所を見られたり使われたりするのがちょっと……ってなっちゃう人もいるよね……?」
天平の言いたいことがわかって理解を示すと、
「オシャレな家に住んでる人とか、オシャレってわけじゃないけど別に人を入れてもいいくらいいいカンジなとことか、そういうの全然気にしないよって人ならいいだろうけど、家に上がられるのちょっと抵抗感じる人もいると思うんだよ~。台所だけじゃなく、見える範囲ぜんぶキレイに片づけとかないといけないなーとかプレッシャーになるしさー」
と天平が主婦目線と思われる意見を出す。
「んー。そっか。そういう人もいるよね? となると、利用する人は利用するけど利用しない人は利用しないって、分かれちゃいそうだね……?」
「――と思う。なので、出張料理でお金を稼ごうと思ったら、飲食店を利用する人より利用者が少ないと思うんで薄利多売ってわけにいかないだろうから、利用してくれる人からは多めにお金をもらえるといいんじゃないかと思うけど、値段が高いと今度は誰でもは利用できないっつーか、ある程度お金持ってる人じゃないと利用できないよね、みたくなっちゃいそうだし?」
「んー、そうかもね……?」
「実際のところは、お手頃価格の出張料理から高級路線まで、いろいろあるみたいだけど」
「うん」
「料金設定はともかく、出張料理って、現場に行って作って帰って、ってなるから拘束時間も長いんじゃないかと思うんだよな?」
「ある意味、料理人さんをお客さんが貸し切っちゃうってことだもんね?」
「そうそう、貸し切り状態、ってことだよな?」
「うん。――それで?」
「それで、一回やるのにそれなりな時間がかかるだろうから、一日のうちたくさんは請け負えなさそうっていうか? しかも、家政婦さんだとおかずを作り置きすればいいんでどんな時間帯でも働けるけど、出張料理人だとライブで作るから、お昼ごはんのタイミングか夜ごはんのタイミングにしか働けないと思うし?」
「うん」
「飲食店を営業している場合、お店で作ってお客さんに料理を出すときもライブで作るけど、お店にお客さんが何組か入っててその人たちに作ってあげるなら、何組分かの売上げを得られるやん?」
「そうだね。だけど、出張料理やる場合だとその家の分しか作れないから、売上げを上げにくいんじゃないか? と――」
「そゆコト。利用するお客さん側からすると専属で作ってくれるのってすごくうれしいと思うけど、料理する人からするとあんまり儲からないかもしんないな? とか思ったり?」
「その点、家政婦メシ風だと、一度にたくさん料理を作って小分けにすれば、何組分もの注文に応えられるよ、と――」
「そうそう」
にっこりうなずく天平。
なるほど。
天平の推しどころがわかってきた。
天平はさらに調理する場所や料理を渡す場所についても、
「料理は料理人さんの自宅でもキッチンスタジオでもどこででも作れると思うし、なんならゴーストレストランっつーの? 営業してない時間帯の飲食店を間借りして作ってもいいと思うし? ――っつか、それ言い出したら料理の受け渡し場所も、知り合いの飲食店を間借りさせてもらうっつーか? 知り合いのお店に預けて、そこにお客さんに取りに来てもらうようにするようにしてもいいんかも?」
と考えを披露する。
それを聞いて、なるほどと思う反面、
「どこででも作れるって言っても食べ物を扱うわけだから、営業の許可とかがきちんとしてないといけないと思うけど――」
と気になったことを口にしつつ、
「――その辺はもともと飲食店やってた人ならちゃんとされるだろうしね……?」
プロの料理人なら衛生的な面も問題ないだろうな、と心配を打ち消す。
天平は僕が言ったことにうなずき、
「家政婦メシ風でやるとタッパやジップロック使うから、お皿だって不要だし? ――まあ、タッパはお客さんがそのまま繰り返し使えばいいとして、ジップロックは使い捨てにするとプラスチックごみ増やしちゃうかもだけど……」
と考えを語る。
家政婦メシ風のテイクアウトはお店を閉店した人が再出発するのにやりやすいんじゃないか、と天平が言い出したのは、初期投資、というのかな? 仕事を始めるために必要になる費用。それがあんまりかからないんじゃないかという点も考えたうえでのことだったらしい。
コロナの影響もあって今はキッチンカー人気も高いけど、キッチンカーって何百万円かするだろうから、コロナで売上げが落ちて閉店せざるを得なかった飲食店の人がキッチンカーを買うのって……厳しそうな気がする。
そういうことまで考えて、天平は家政婦メシ風テイクアウトを推している、ということだ。
もちろん、と天平が口を開く。
「お店の営業ができてるとこはそのままでいいだろうし、お弁当が売れてるならお弁当を売るといいだろうし、出張料理人として出張料理の依頼がいっぱいある人なら出張料理の仕事するといいと思うし、別に家政婦メシ風でやれやれ! ってことでもないんだけど――」
「うん」
確かに、やる必要がないお店ややる必要がない料理人の人にまでやってみてほしいということではないだろう。
あくまで、売上げが落ちて閉店したり経営が厳しくなっている飲食店の打開策の一つとして検討してもらうといいんじゃないか? ということで――。
「家政婦メシ風のテイクアウトって、お店閉めざるを得なかった料理人さんの再出発にいいと思うし、時短営業とか休業とか、営業はしてるけどお店の売上げが少ないとことか、そういうお店でも、売上げの足しに家政婦メシ風のテイクアウトやデリバリーやるのっていいんじゃないかと思うんだよな~」
と、天平がもどかしそうに口をゆがめる。
飲食店の人たち、大変だろうなと思うと……もどかしいよね。実際のところ、天平おすすめの家政婦メシ風が世間の人たちにウケるかどうかもわからないし……。
でも――。
「家政婦メシ風のテイクアウトって、ちょっと食べてみたいな」
本音を告げる。
「お♡ だろ♡」
僕が食べてみたいというのを聞いて、天平がうれしそうに笑う。
僕としては――。
「そもそも、テレビで見てる家政婦さんの作るごはんを食べてみたいもんね?」
あれって、何をしてるかよくわからないうちに料理が出来上がっていくんだよね。魔法みたい。正直、味が想像できないものもあって、食べてみないことには――。
僕の思いに「わかるわかる」と共感を示す天平。天平は続けて、
「家政婦さんお願いする人増えてるよってテレビとかで言ってるけど、まだまだ敷居高いカンジするっつーか、気軽に頼みにくいなって人は多いと思うし? それに、家政婦さんなら誰でもテレビでやってるみたいなカンジでごはん作ってるわけじゃないんじゃないかと思うしな……?」
と訝しむ。
「その点、家政婦メシ風なら、家政婦さんが作らなくてもいいわけだから……」
飲食店をやっている人ややっていた人なら、家政婦さんより頼みやすいと感じる人は多いと思うし、料理のプロだから、料理には期待できる。
「そうそう。家政婦メシ風は料理できる人ならやれるし。料理人は、全国津々浦々、それなりにいると思うんで、家政婦メシ風のテイクアウトなら誰でもありつけそうやん?」
天平がにっと笑う。
僕も笑った。 つづく
読んでいただいてありがとうございます。
家政婦メシ風のテイクアウトについて語っていることは、いわゆる素人考え、というもので。私は飲食店を経営しているわけではないし、経済学の専門家でもないので、このやり方が経済の回復に一役買えるかどうかはわかりません。ただ、個人的にはすごくいいと思うのですが……どうでしょうか?
医療従事者を休ませてあげるためにも、感染を広げないことが重要だと思います。
そのためにも、感染の拡大を抑える仕様の生活をストレス小さく送るために、工夫が必要じゃないかと思っています。
これからも経済を回しつつ感染を抑える生活を送れるようなアイディアを書いていく予定ですので、次回作もお読みいただければと思います。よろしくお願いします。