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episode3 ヘラーレ王国将軍

元英雄捜索隊が立ち去り、ゴミ村マイアスゲートの広場は、村人と血だらけのユキヒロのみとなった。


蹴られた頬が赤みがかっている村長ジョゼは立ち上がって口を開く。

「兄ちゃん、元英雄だったのじゃな」

「ああ。迷惑をかけたな」

「兄ちゃんいや、元英雄様。今回はワシらを守ってくださってありがとうございました」

「感謝される理由はない。全て俺の行動が招いた結果だ。本当に申し訳ない」

「いやいや、昔話で聞かされていた大罪の元英雄とは全く違う。まさしくワシらにとって貴方様は英雄じゃ」

「英雄なんてやめてくれ。昔話がどのようなものかは知らないが、俺がしてきたことは悪そのものだ。大罪の元英雄は間違いのない認識だ。ほんとやめてくれ」

「英雄様が、どういうつもりで、この国に現れたかは分からんが、この村だけはあなたの味方だということだけは伝えておく」

「勝手にしろ。俺はこの国に死ぬために来た。」

「死ぬために来たとは...昔話の不死身になってしまったという話は実話だったのですな」

「ああそうだ。この身は呪われているようだ。ジョゼよ。おなたが知っている世界最強を教えてくれないか」

「そうですね。ワシが知っている最強といえば、この国の将軍ですな。その名をピーター・ジェームズ」

ピーター・ジェームズか...

もちろん初めて聞く名前だ。しかし、ジェームズという家名に心当たりがある。

エドワード・ジェームズ。俺の剣の師匠となってくれた人だ。元将軍でそれは大層強いお方だった。

後に俺は、そんな師匠も裏切ってしまうことになるわけだが...

「そのピーター・ジェームズとは、やはり首都の国軍本部にいるのか」

「いえ。確か、将軍は旧エランテルの首都ラザベスの第二支部にいらっしゃったと思います」

「ほぅ。なぜ将軍が本部にいない?」

「噂程度の話ですが、第二支部で若者の育成に努めていると聞きました」

「なるほど。それならば、俺はラザベスを目指すことにしよう」

「ワシとしては死ぬために行くのならば止めさせていただきたいが...」

「何を言われても俺の意思は変わらん。悪いなジョゼ。それと、また王城から村に誰かが派遣されるかもしれん。何か困ったことがあったら、俺を呼ぶか。俺の行き先でも言っといてくれ。これを渡しておく」

俺はアイテムボックスから転移水晶と伝達水晶を取り出す。

「この水晶は?」

「赤色の水晶は伝達水晶といって、そこに魔力を流せば、俺に合図が送られる。ピンチになったら魔力を流してくれ。青色の水晶は転移水晶といって、俺がここの村に転移するための道具だ。大切に保管してくれ」

「本当にありがとうございます。大切に保管させていただきます」

「また会うことも無いかもしれんが、達者でな。ジョゼ」

「英雄様こそ、良き余生をお過ごしください」

俺は血だらけのまま歩みを進めた。ジョゼの言葉に振り返ることは無かった。


この水晶が、まさかの結果を生むことになる。今の彼らは知る由もない。


俺はラザベスを目指して歩みを進める。旧エランテル首都ラザベス。

俺と魔王ハルジンが最後の決戦をした場所だ。

450年も経って景色も変わっているところもあるが、土地勘はある。

確かラザベスはマイアスゲートの少し南西にいったところにあったはずだ。

それにしても元魔族の国の首都の近くだというのに、こんなに貧民街が広がっているのは、どういうわけだ。

しばらく歩いていると、農耕地帯が広がっていた。魔力の量がちょうどよく作物もよく育つのだろう。

広大な農耕地帯のその先に見えるのは100メートルは優に超える壁だ。

首都ラザベスはその大きな壁に囲まれた都市で、俺も攻め落とすのには苦戦した。

ただの石で出来た壁ならば壊すのは容易だが、伝説級のマジックアイテム守護神の水晶による加護で守られたこの壁は、まず人の手で壊すのは不可能だった。それでおなお、俺はぶっ壊したが。

戦争が終わったあとは、壁も修復して、都市として素晴らしい作りだったため、ヘラーレ王国の副首都として活用することにしたんだっけな。ラザベスに入るには東西南北に一つずつある門をくぐらないとだが、恐らく門番であれば俺の顔の手配書を見たことはあるだろう。別に捕まってもいいが、今の将軍の姿をお忍びで見ておきたい。

もし、王国最強に俺を殺せる実力がなければ、この国にもう用は無いのだ。

俺は魔法で自分の顔を変化させる。穏やかにことをすませたいからだ。

俺は一番近い東門へ向かう。商人たちや傭兵の列ができている。俺は最後尾へ行き、順番を待つ。

1時間程して、やっと門番のところまでたどり着く。

「お前、身分証はあるか?」

この時代でもやはり必要だったか...

こういう困ったときはお金で解決するべきだが、今は持ち合わせもない。

ここは、魔法の力を頼るとするか。俺の職業は勇者だ。勇者とは全能力に伸びしろがある最強の職業であって、魔法も俺にかかればお手の物だ。門番にばれないように、無詠唱で第三位階魔法「幻視」をかける。俺は門番にただの紙を渡した。

「ありますよ。これです」

「なるほど、確かにこれは本物だな。通ってよし」

「どうもー」

どうやら上手く魔法がかかったみたいだ。

門をくぐると、そこに広がるのは石やレンガで出来た高い建物だらけの大都市だった。

「昔より、大分発展しているな...」

俺が都市の光景に感心してキョロキョロしていると、ガタイのいい男二人が俺に絡んでくる。

「兄ちゃん、都市は初めてかい?俺たちが案内してやるよ」

男たちが肩を組んでくる。

「俺たちの案内は少し高くつくけどなぁ。へっへ」

弱そうな田舎者を狙う下衆な連中か。450年前もこんなやつらはいたな。俺は決して、がたいが良い方ではない。むしろ170センチメートル程度しか無いため、この世界では小さい方だ。そして、今被っているボロボロのローブ。さらに、明らかに田舎者の態度ときたら、舐められるのも当然か。

まぁお金を全く持っていないから絡んできても意味が無いんだが...

「おい、無視してんじゃねえよ」

右にいる男が右手で俺を殴ろうとしたその瞬間、俺達に急速に近づく者がいた。そのものは、男の右手を俺が殴られる前にガシッと掴み。男達を睨む。

「お前達、弱いものによってたかって何をしている」

「お、お前は将軍ピーター・ジェームズ?!!」

「ああ。そうだが、それがどうした?下衆共」

ピーターの目つきがより鋭さを増す。男たちにもはや戦意は無かった。

「い...いや、なんでも無いさ。俺たち、その男が知り合いに似てたから...話しかけてただけですぜ」

「殴りにかかっているように見えたが?」

「い...いや、すいませーーーん」

男二人は、さらに睨まれると、そそくさと逃げていった。

「君危ないところだったね」

ピーターは逃げた男たちに向けた表情とは全く異なる優しい笑みを俺に見せる。

ホントびっくりするぐらい師匠にそっくりだな...

「ありがとうございます...」

「初めてで都市に驚く気持ちも分かるが、あまりキョロキョロしていると、また絡まれるから気をつけるんだ」

「はい。分かりました」

「分かればよろしい。また何かあったら助けを呼びな。俺たち王国軍が助けるぜ」


あれが、今の国内最強、現将軍ピーター・ジェームズ。

あのスピード、体からみなぎるパワー、そして魔力。どれを見ても一流だ。





しかし...俺を殺すには足りない。



ユキヒロが死ぬにはどうすれば良いんだ?

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