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散文の後/南風  作者: 新辺守久/小珠久武
第〇八幕 支に踊る者
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第〇九五話

 クリスさんとイーサさんが用意した大きなたらいと大樽は、結局、私が盥で装備品の洗濯、洗浄をする為に使っただけで、大樽を使う事は無かった。


 残念ながら魅惑のお風呂回、キャッキャウフフタイムの延期。と云う事では無く、民宿<峠道>の洗い場に大きな水甕みずがめの形をした湯船が設置されていたので、大樽の出番は次回へと持ち越しになったのだ。


 ただ、浴槽代わりに使える大樽の存在が明るみになった今、これからの旅の日程で宿泊する度にお湯、お風呂の所望が、主に女性陣から湧き上がるのが予想される。今後、入浴シーンが展開される毎に、私の魔法が火を吹くぜ、ふふふ。


 現在、丁度いい湯加減にする為に棒で水甕の中を掻き混ぜてるんだけど、傍目に魔女が怪しげな薬を作ってる風に見えるんじゃなかろうか。


 さて、今晩最初に入浴するのはマチルダ嬢からだ。最初はオリガさん達が「戦闘に参加した皆さんからお先にどうぞ」と言われて譲ってきたらしい。私の勝手な偏見で、マチルダ嬢は貴族の娘として自尊心が高いのかと思っていたけれど、空気を読めると言うか、こまやかな心配りが出来る女性の様だ。


 オリガさんの方は建前上、ギフトを使ってお湯を作って入れている事になっているので、その作業が終わってから最後に入ると返してこれを譲らなかった。


 クリスさんとイーサさんは、現在冒険者のパーティーのてい商隊キャラバンの護衛に付いているけれど、実際はオリガさんの従士なので彼女の世話で一緒に入ると辞退していた。私は平民なのでその遣り取りに混じる事は無かった。


 お風呂の準備が整ったので、横で作業を見ているオリガさんに伝えて貰う。


 一番風呂の栄誉は、マチルダ嬢に。残念ながら接待風呂なので、マチルダ嬢と御付のメイドさんとのキャッキャウフフは衝立の外で、二人の言葉を聞きながら白百合の世界を想像するつもりだったのだけれど、殆どは洗い流す時のお湯の跳ねた音しか聞こえず、粛々と湯浴みをして身体を清めたのであろう。メイドさんが掛けていた言葉以外、会話が聞こえてこなかった。サービス心が皆無である。


 三十分程経ってから、とても満足した表情で洗い場から出てきて。オリガさんにお湯の御礼をして、民宿<峠道>に用意された少しお高めの部屋へ戻っていった。


 私とオリガさん二人でお湯を足しに洗い場へ入ると、貴族のたしなみなのか、水甕のお湯は全部抜かれていた。魔法でお湯を作るので労力としてはそれ程苦にならないのだけれど、一度だけの使いきりで、お湯を足して使い回すという考えは無い模様。……まぁ、いいさ。


 次に誰が入浴するか、なのだけれど、先程オリガさんはお湯を作る関係で最後に入浴すると話していたので、クリスさんとイーサさんのどちらかが入浴、或いは彼女達が一緒に入浴、の筈だった。


 ここでイーサさんが、自分はオリガさんの従士として一緒に入り、入浴の手伝いをしたいと名乗りを上げた。これをオリガさんは了承した。その時のイーサさんの表情はささやかな願望が成就した花が咲いた様な、それはもう素晴らしい笑顔だった。


 けれども、私にはそのいい笑顔の裏によこしまな思考を巡らせた毒花……いや、罠に掛かった獲物を捕食する食虫植物が背後に重なって見えた。……まぁ、根拠は無いけれどオリガさんなら簡単に脱出出来るだろう。


 なので先にクリスさんが入る事になったのだけれど、彼女は一人で入浴せず、私に一緒に入って世話をする様にと、顔を赤らめながら言い渡してきた。こちらとしても何時も通りの流れなので、これを了承した。ふひひ。


 以前、開拓村で石鹸と魔法を使った超震動によるマッサージを施した事が有る。この時はオリガさんと母さんにガッツリ怒られてしまったけどね。


 私がノーセロの騎士団宿舎で世話になり始めると、お風呂回、入浴する際には必ずと言っていい程に、クリスさんから誘われて、入浴の最中に、またはお風呂から上がった後に部屋の寝台ベットでよくご所望された。前世師匠の猿の話じゃないけれど、イケナイ遊びを教えてしまった感がある。ってこれじゃ、私もイーサさんの事は何も言えなくなるね。


 まぁ、私も若い娘の身体を弄れるという事で、喜んでマッサージを施していたのだけれど、騎士団宿舎の共同の洗い場や壁の薄い部屋で、恥かしい声を上げるのを我慢している彼女の姿がまた嗜虐心に高まりを覚えて、ついつい力が入っしまい最終的には息も絶え絶えに身体中が痙攣、弛緩する所までがセットになっている。女子同士のたわむれなので決してやましい気持ちは無い。


 これは自己弁護になるけれど、あくまで超震動による全身マッサージなのだ。それに彼女のみさおにまで手を出していない。これは女子によく有る百合しい秘め事なのだ。クリスさんがやがて白馬に乗った素敵な王子様を見つけるまで彼女の貞操は守って頂きたい所存。


 自慢じゃないけれど、私は前世から今世に至るまで交際なんてした事の無い完全無欠の童貞のオタクなので女性の扱いに加減を知らないのだ。むしろ今の自分の身体でも試行錯誤しながら色々と微調整して運用しているのでまだ発展途上、開発途上にある。つか、前世の男だった経験しかなかったから知らなかったけれど、女性の身体って結構敏感なのな、吃驚ビックリだったよ。個人差は有るのだろうけれど、人にっては、こりゃ確かに癖になりそうだわ。


 尚、同じ様な具合に騎士団宿舎の寝台ベット上でオリガさんへ試したところ、気持ち良さそうにスヤスヤと眠りに付く大人の余裕を見せられた。我が手練手管が通じぬとは所詮、子供騙しだったのか。流石、不沈戦艦とわれた女性。おのれぇ解せぬ、ぐぬぬ。なんて思ったものだ。


 あとイーサさんは、クリスさんの惨状を幾度か目の当たりにしている所為で、謹んで遠慮されている。オリガさんに対しては今みたく結構イケイケになるのに、自分の身に関心が向けられると途端に守りに入ってしまう初心なお子様なのだ。


 さて、私とクリスさんのキャッキャウフフな時間帯が始まる。軽く掛け湯をしてクリスさんの身体を洗い流す。最初に頭皮をマッサージしながら髪の毛も優しくケアして洗っていく。続いて両手にペースト状になった石鹸を湛えながら身体の隅々をローションプレ……泡泡に洗浄しながら超震動による全身マッサージに移行して前から後ろから身体に溜まった疲れをほぐしていく。


 途中「……はふぅ」とか「……あっ!」とか「……んくっ!」とか「……んはっ!?」とかクリスさんから漏れ聞こえるつやっぽい甘美なBGMを耳にしながら、やがて恍惚とした表情で彼女の身体がビクンと最高潮クライマックスに達した所で、全身に纏わり付いている石鹸の泡を綺麗に洗い流して、今回の湯船である水甕に投げ入れる。今回も私の勝利で幕を閉じた。さて、今のうちにさっさと自分の身体も洗ってしまう。


 クリスさんはしばらくお湯に浸かり赤くとろけた顔をしていたけれど、お風呂から上がるつもりなのか、余韻で足元をフラ付かせながら湯船から出てきた。以前に比べて意識を失くさなくなったのは経験を積んで成長したからだろう。


 まだ足腰が覚束無おぼつかない動きをしているクリスさんの全身をタオルで拭いて替えの下着を履かせる。服を着せて身嗜みを整えて洗い場から出る。


 そこには無言で能面な表情で仁王立ちのオリガさんと頬を真っ赤に染め視線を彷徨わせるイーサさんが待っていた。洗い場は衝立だけで申し訳程度の天井しか無い場所だから、クリスさんが一所懸命押し殺していた恥かしい声が一部始終バッチリと漏れていた模様。てへぺろん。


 私は場を誤魔化す為、オリガさんへクリスさんをパスしようとして、そのままイーサさんにスルーパスされた。それを見た私は洗い場に回れ右をして逃げ込んだけれど、オリガさんが追いかける様に一緒に入ってきた。洗い場での攻防は直ぐに収まって、私はアイアンクローを受けながらお湯を作る羽目になった。時と場所と周りの状況を考えろとの事らしい。


 教訓。調子に乗って色々と遣り過ぎると身を滅ぼすので注意しよう。ふへへ。

我が妄想……続き、でした。

読んで頂き有り難うございます。

更新は不定期でマイペースです。

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