第〇〇八話
更新は気分的に、マイペースに、です。
我が妄想。……続きです。
エンヤの上司と名乗る糸目の死神と邂逅してから幾日か経った。さて、今日は村でちょっとしたイベントがある。
月に一度の行商人が商隊を組んでやって来る日だ。村長の家に一泊して、帰るのは翌日。街と開拓村を往復する彼等は子供達にとって、ちょっとした英雄扱いになっている。
街道の向こうに商隊の姿が見えると畑仕事の手伝いをしていた子供達は我先にと走っていき、商隊を先頭に子供達の行列が出来る。村に到着する頃には商隊の荷車は周りを囲まれ、身動きが取れない程になっている。そんな光景が見られる。その時の行商人の顔は笑顔を見せているが、頬を引き攣らせて苦笑い気味の表情だ。落ち着いた辺りで荷車を使った簡易店舗が作られる。
娯楽の無い世界。特に何もない開拓村では、見た事の無い場所の話はひとつの物語に匹敵する。外の世界の話を聞く事が出来るまたとないチャンスなのだから、子供達が彼等に群がるのは当然の結果だ。まぁ、私もその子供達の中の一人なのだが。そんな子供達を押し退ける様に大人達は必要な物資を次々と金銭、或いは物々交換で買っていく。
今回も何時もの如く、予定通り昼前ぐらいに商隊を組んだ行商人がやって来た。ところが普段の商隊構成とは少々毛色が違っていた。普段は見かけない装備を整えた冒険者が何人も同行していたのだ。その物々しさから子供達は遠くから眺めるだけだった。
私の鑑定は死神のデータベースを元にした劣化版となっている。結構な優れモノで植物や鉱物は普通に鑑定が出来るのだけれど、その本領を発揮するのは実は生物に対してなのだ。
樹海の獣や鳥、魔物はもちろんの事、それは人間にも同じで、そのモノの岐路に纏わる、簡略的なプロフィールが表示される。今世、魂を文章表記された履歴が見られるのだ。残念なのはこの世界はゲームじゃないので数値化されたステータス表記はされない。
では、何が優れているのかと言うと、この鑑定を私が樹海で遭遇した獣に使用すると文章の最後に<開拓村のカノンに狩られ命を落とす>等と表記されるのだ。当然、様々な理由で狩らない場合もある。その時の鑑定文章には生物としての最後に関する事柄は何も表記されない。そう云った具合で若干の未来視が入っているっぽいのだ。
以前、最後の文章が表記されていないブラックベアに襲われた時がある。戦闘を避けやり過ごすつもりだったのだけれど運悪く見つかり攻撃された。警戒していたので反撃して屠る事が出来たけれど、その戦闘中に再度鑑定を発動させブラックベアを見たら、最後の方に<開拓村のカノンを見つけ襲い掛かかるが反撃され命を落とす>と追記されていた。
またある時は、狩る気満々でホロホロ鳥を鑑定した時に、最後の部分に<カノンに狩られる>と表記が有ったけれど、途中に<親鳥、子育て>の文言に気が付いて狩るのを止めた。距離を取ってから改めて鑑定を発動させたらたら最後の表記が消えていた。私のちょっとした行動や思考の変化で表記された事柄、未来が変化したのだ。これがエンヤの上司と名乗る死神が言っていた死の歪み。なのだと思う。
私が出来るだけ樹海探索時に遭遇率を下げたのは、樹海の獣とは言っても悪戯に彼等の命を刈り取りたくなかったからだった。ストレージで肥やしにしている獣の死体は、自己満足もあるだろうけれど、刈り取った命に対する礼として、それと弔いの意味も込めて何時か必ず使用すると心に決めている。勿体無いお化けに取り憑かれたくない。
余談として、人間に対して、試しに父さんと母さんの二人の履歴を見たけれど、少し見てそっと閉じたのはいい思い出。その後、他人を無闇矢鱈と鑑定をするのは止めようと心に誓った。
……のだけれど、この世界の人生で初めて目の前に現れた冒険者。興味を引かれ、商隊と一緒にやって来た彼等を思わず鑑定をしてしまった。そして、その中の一人を鑑定して、私は激しい動揺を覚え、覗いた事を後悔してしまった。
<名前はバートン。ノキセ村のゴードンの三男として生まれる。十二歳で冒険者ギルドに登録し、ランクFから地道に功績を重ねランクDに至る。二十三歳の時、パーティーを組んでいた者達と商隊の護衛の依頼を受けるが盗賊に襲われ失敗。幾人かの死者を出し、生き残った商人とパーティーメンバーが人質になる。解放の条件として街や村の情報収集とギルド情報の横流しをさせられる>
させられる。って、いや、それって現在進行形だろう。そして、これは誰にも話せない厄介事。
ストレージや鑑定の話は誰も知らない秘密。当然、両親にすら話していない。そんな状況で誰かに話しても信じては貰えないだろう。私は頭を抱えてそっとその場から離れた。
その日も商隊の運んできた生活必需品はあれよあれよと金銭や物々交換による取引がなされた。村長宅で行商人や護衛の冒険者達の持て成しに宴会が設けられた。彼等は一泊した次の日、街への帰路に着いた。
宴会に参加していた父さんから聞いた話。宴会の席で行商人のリーダーが冒険者を護衛に雇った理由を語っていたそうだ。最近、街道や近場の村々で盗賊が出没し荒らし回っており、警戒と警護の為、冒険者ギルドへ警護を依頼して就いて貰ったらしい。スパイが居るとも知らずに。
鑑定結果を考えると、落ち着いてもいられないのだが、小さい私にはどうしようもないと諦めていた。最悪、秘密にしていた魔法を使って出来るか判らないけれど、盗賊を撃退しようかとも考えていた。そんな私の不安や心配を余所に、その後も月一で冒険者を引き連れた商隊が取引にやって来ていたけれど、その年は何事も無いまま穏やかに過ぎていった。
読んで頂き有り難うございます。
構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので面白く読めるかは判りません。
120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。
読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。