第〇〇七話
更新は気分的に、マイペースに、です。
我が妄想。……続きです。
ある日の晩。一家団欒の晩御飯の最中に父さんから「最近、村の彼方此方でボロい黒い装束の男がたびたび目撃されている。人攫いかもしれないので、子供達にも注意するように」等と、注意喚起された。……筈なのだが。
私が何時もの様に樹海でキノコや薬草類を採取しながら、湖の畔にある秘密基地へ向かい、ログハウスの扉を開けたら、その男がいた。リビングのテーブルに着いて、そんな嗜好品は無かった筈なのに、優雅に紅茶を嗜みながら、湖側に設置した大き目の窓の外を眺め寛いでいた。
窓からの逆光の所為ではない、黒一色で統一された装束。丸い形の帽子を被り、ビシッと決まった詰襟学生服の様な制服を着て、何故か対照的にボロボロの外套を纏っている男。
「…………」
私が扉を開けて想定外の光景にフリーズしていると、彼はこちらに気付き、この世界へ誘った死神、エンヤの上司だと名乗って立ち上がり、被っていた帽子を胸の辺りに置き軽く会釈をしてきた。肩まで伸ばされた黒い髪の毛は一見、無造作に見えて、しかしきっちりと手入れされている。外見的に年齢不肖な彼は細い糸目が弧を描き柔和そうな笑顔をこちらに向ける。
「これは失礼。留守中、勝手にお邪魔していました」
向こう世界で、昔、夏休みに田舎の親戚の家に遊びに行ったら、知らないオジサンが親戚の帰りを待つ為に勝手に上がり込んでお酒を飲んで寛いでいたのを思い出してしまった。まぁ、誰も来ないと思って鍵を付けてなかった私も悪いけれど、なにか汚された気分。でも、人攫いじゃなさそうだから良しとする。いやいや、人攫いじゃないけれど死神だから良くねーよっ!……もしかして、私はまた別の異世界へ攫われるのか?……等と自意識過剰気味な混乱中に関わらず死神は話を続けた。
「ここはいい所ですね。カノンさん、貴女がお造りになり整備したのですか?中々いい趣味をお持ちです」
「と、当然ですよ、何故か残っていた前世の記憶をフル動員で建造しましたからね。自分でもお気に入りの場所です」
「そうですね。とても漢心を擽られると言いますか、落ち着く場所です」
彼の社交辞令的な挨拶の様な、本心の様なそんな言葉に、私も負け惜しみを含んだ強がりの言葉を返す。そんな二、三の会話をして緊張感を解す。そのタイミングでエンヤの上司と名乗る男が本題を切り出してきた。
「死すべき人間が死なず、死なない人間が死ぬ。そんな歪み。色々と観察した結果、貴女を中心に死の歪みを感じるのです。そして、それが直近だったり数年後だったり、様々なブレを生じさせて、現状我々にも読めない状態です」
内容は死神の仕事らしく、もう直ぐ開拓村近辺で人死にがある予定だから下見に来たのだけれど、下見をした人間達の命数がブレているのだそうだ。
……開拓村での目撃情報に上がった黒装束の男はこの死神だろう。人は死ぬ間際、死神を見ると言う。もしかして村でこの男を見た人の命数は近々尽きて亡くなる予定、だったのだろうか?村のみんなはまだ若いし元気に過ごしているから直ぐに死ぬ様イメージは湧かないし、そんな人もいなさそうだけれど。なんとも漠然とした不安が過ぎる……。
「現地調査も兼ねて、私が赴いた訳ですが、貴女を目にして確信しました。他人の命運を狂わす魔性の女性と言いますか、カノンさん、貴女はこの世界に於けるイレギュラーな存在の様ですね」
「えぇ……」
そんな事を言われても、私は九歳のただ女の子だから、魔性の女って言わないで!男を誑し込む九歳のロリ少女。別な意味で拙い。つか、私はこの世界の女性体へ転生して来ただけの、ただのオタクな爺ですから!!前世記憶はあるけれど、そんな力無いから!!!……心の叫びを上げてしまったけれど、叫んだ内容はただの普通の九歳の女の子じゃないよね、私。
糸目の死神は苦笑しながら、心当たりはあるんじゃないの?って顔をして、何処からとも無く出した一客のティーセットをテーブルに出し、カップにハーブの香りのするお茶を淹れて進めてきた。取り敢えず落ち着けって事なのだろう。どっちがホストかゲストか判らない状態になってしまった。ふぅ、お茶が美味しい。
そのまま守秘に掛からない情報としてエンヤの話をしてくれた。エンヤは名刺の名前、真名を同僚以外の私に知られたペナルティーとして外部との情報遮断で謹慎を命じられていたそうだ。そりゃ、私の呼び掛けに反応できないわなぁ。てっきり無視されてると思ってたわ。そんな彼女も最近はその謹慎も解かれ、再研修真っ只中なのだそうだ。取り敢えず、元気そうで何よりだ。
世間話をしながら二人して美味しいお茶を嗜んだ後、「一応、君の周りの観測は続けるので、普段通りお過ごしになられて構いません。我々は事後処理だけなので何かしらが遭っても干渉しません。それでは、また次の機会にお会いしましょう、失礼します」と言って、不吉な言葉を残して糸目の死神は辞去して消えた。
外を見ると太陽は西に傾き始め赤みを増していた。予定していたログハウスの改造や整備を諦め戸締りをしっかりして、次にここへ来たら鍵を取り付けようと心に誓って帰路に着く。
私は風魔法を背中に当て樹海の中を疾走した。陽が沈む前に開拓村の近くに到着すると、ストレージからキノコや薬草類を取り出す。家へ帰宅した時に母さんとカレン姉さんへ渡した。
読んで頂き有り難うございます。
構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので面白く読めるかは判りません。
120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。
読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。