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散文の後/南風  作者: 新辺守久/小珠久武
第〇五幕 矢を放つ者
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第〇四八話

 冒険者ギルドと騎士団本部が置かれている広場から何時も使っている門の方へ下る道を歩く。武器や防具を扱っている店、小物を扱っている店、雑貨を扱っている店、魔道具を扱っている店、あと食事処、飲み屋の店舗がチラホラ。そんな様々な商店が軒を連ねる屋根の無いアーケード街風な大通りの道。


 流石に家族へのお土産に武器や防具は無いだろうって事で除外して、近場の小物屋さんから覗いて見る。正直、前世から今世に至るまで女性に対するプレゼント的な物って縁が無かったので何を買えばいいか判らないので、髪の毛をくしとか髪飾り辺りを適当に見繕う事にした。となると手鏡も必要かなと思い立ち、置いてよし、手持ちにしてよしの金属製の鏡を見つけ三セット購入した。


 柄の違う櫛や髪飾りを三セットづつで百五十ダラー。金属製の手鏡三枚で二百四十ダラー。硝子製も有ったのだけれど金属製の方が安かったのでこちらにした。それでも手鏡一枚八十ダラーって事を考えると、やはりこっちの世界で鏡は高級品らしい。個人的な気持ちとしては初任給で家族にプレゼントを買う感覚だ。


 店員さんに銀貨一枚渡すといぶかしそうな顔をしていたので、冒険者ギルドのカードを見せて「真っ当に得たお金です」と説明して、なんとか納得して貰い、商品を購入した。やはり銀貨は子供が持っていると不釣合いな高額硬貨らしい。お釣りとして銅貨六枚と硝子のお弾き一枚。六百十ダラーを受け取ったけれど、冒険者ギルドで両替して貰えばよかった思った。


 小物屋さんを出て、今度は雑貨屋さんを覗く。店内の日用品を見て回る。開拓村にやって来る行商人が持ってくる色々な商品と比べると輸送費分お高くなっているのか、こちらの店に置いてある商品の方が若干安く感じられた。


 エンヤさんから貰ったメモを見る。必要な道具は鍋とザルぐらいかなぁ……。母さんがポーションや薬剤作りに使っている道具を流用出来そうだけれど、一応、砂糖作りなので新品を買う事にした。あとレンガみたいな石鹸、使用時に必要な分を切ったり削ったりする塊だ。行商人が持ってくるのより安かったのでそれを三つ買った。締めて六十五ダラー。買い物を済ませ外に出る。購入した物は全部背負い袋に入れる振りをして<ストレージ>に収納した。


 ちょっと時間に余裕が有りそうだったので、ちらっと気になった魔道具のお店に足を踏み入れた。前世で言う個人経営の家電屋さんっぽい店構えだった。展示物を手に取ってみると何かしらの効果が付与された魔法陣が施され、色の付いた石が嵌っていた。これが動力源になっているだろうか? 店主曰く、魔法陣に魔力を通すと機能を発揮する。色の付いた石は魔石で、前世で言う所の乾電池みたいな物で魔力が少ない人でも使える様になっていた。ただ、値段を見ると結構値が張りそうだったので、冷やかしで終わってしまった。もっと稼げる様になったら手に入れてみたいと思い魔道具のお店を後にする。そのまま壁門に向かった。


 今日の門番はロリでチャラそうなアイツなので、その目をくぐり……や、避けて壁外に脱出する。壁外市場に居る串焼きのおっちゃんの所に顔を出した。屋開拓村に向かう帰路で小腹を満たす為にパク付くつもりで五本程串焼きを購入。と言うか、ノーセロの街に来て食事が串焼きだけな件。おっちゃんもそこに思い至ったのか「こいつまた来たよ」みたいな感じで苦笑いしている。


 なんと言うか、前世の仕事が徹夜作業が続いて牛丼のみの生活一週間繰り返した事を思い出す。ちなみに一週間後に飽きらかして立ち食い蕎麦にスイッチしたのを覚えている。これもトッピングで誤魔化しながら一週間続けたんだよなぁ。手早く小腹を満たすに通じるモノがある。そんなんだから過労死するんだよ、自分。


 現状だと……栄養が偏ると身体が、胸が大きくならない様な……まぁ、いいか。それはそれで。自分の好みで考えると丁度いいのかもしれん。今度来る時にノーセロの街の食事処を開拓してみようと思った。あと、一応、料理スキルは欲しいので帰ったら母さんとカレン姉さんに教えて貰えるようにお願いしてみようかな。私にセンスがあればいいのだけれど……。


 串焼きのおっちゃんに「家に帰ったらちゃんといいモン食わせて貰えよ」と言われその場を後にする。


 そのまま何時もの街道を東へ向かう。緩やかなアップダウンが続く街道を風魔法を背に受けて走り、時折すれ違う行商人を見かけるとテクテクと歩きに替えて、幾つかの村を越え陽が傾き始めた頃、開拓村とフノヌツイ村の分岐点であるトドメキ村に到達した。


 村の兄ちゃん達は相変わらず出入り口で椅子に座って駄弁だべりながら見張りをしている。何時もの様に挨拶して村の道を通らせて貰い、その先にある分岐点から開拓村に至る北の道へ進路を取り歩みを進める。そして、陽が沈む前に開拓村が見えてきた。


 以前は初めて見る景色に気を取られ結構な時間を掛けて移動していたけれど、何度か往復をしてみると慣れてきたのか随分と早く到着した感じがする。


 開拓村の出入り口には、数日前に村を出た時と同じ様に、若い衆のまとめ役ロイドと村長次男のトマソが見張り役をしていた。二人と雑談がてら少し村の事、街の事を話したぐらいにして、最後に「お帰り」「ただいま」の挨拶を交わして村の中へ入る。


 村内の道を抜けて外れの、黒の樹海近くに在る自宅へ、家の玄関の扉を開け居間に向かうと、そこには鍋や食器を抱えて夕食の準備をしていた母さんとカレン姉さん、テーブルの上にパンを置いてるリアン義姉ねえさんの三人が居た。


「あら、カノンお帰り」

「カノンお帰り」

「カノンさん、お帰りなさい」

「あ、ただいま」

「もう直ぐ晩御飯だから部屋に荷物置いてきなさい」

「あ、はい」


 この世界、電話やケータイとか無いので仕方がないとは言え、帰宅の連絡を入れなかったのに、余りに呆気あっけの無い感じで、普通に迎え入れてくれた家族に感謝して、部屋に荷物を置いて居間に戻った。


 取り敢えず、晩御飯にして、みんなには後でお土産を渡す事にしよう。喜んでくれるといいなぁ。

更新は気分的に、マイペースに、です。

我が妄想。……続きです。


2020/09/19 一部追記。

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