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散文の後/南風  作者: 新辺守久/小珠久武
第〇四幕 死を刈る者
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第〇四三話

 私の不恰好な着地を見て、おー、パチパチーと手の平を打ち鳴らすのはエンヤさん。


「はっ、またとんでもない方法でかわしたモノだな。あきれるわ」


 先程、私が繰り出した三十二の炎弾にる攻撃で、ダメージを負って膝を付いていた宮廷魔術師はふらつきながらおおむろに立ち上がりそんな事を言ってきた。


 依然として身体から煙を上げながら、ローブや衣類はボロボロのままだけれど、徐々に怪我が再生している様子だった。この回復力が不死者と云われる所以ゆえんか。……ホント、吸血鬼ヴァンパイアの弱点を突くしかないのか。


 私は足場にしている三本が交差した土の柱の上からふわりと、宮廷魔術師ルーリエ・セーブルから離れた場所に、風の魔法を使って飛び降りた。そして彼女と再び相対する。むぅ、振り出しに戻ってしまった。


 宮廷魔術師がブツブツと詠唱を始めた。今度は私の先制攻撃だ。とばかりに展開していた八つの炎弾を撃ち込んだのだけれど、着弾直前、彼女が魔法名を叫んだ。


「<アンチマジックシールド>っ!!」

「……ッ!?」


 宮廷魔術師の眼前に半透明な魔法陣の盾が出現して、私の放った八つの炎弾が着弾寸前ではじかれ掻き消された。


「ふむ、なんとか相殺そうさい出来る、か。試験段階とは言え、結構な魔素を必要とした術式なのだがな。だがこれで、お前の魔法は私に届かない。倒すにしても魔法以外に手段は有るまい?」


 もう一度、今度は他の属性も試す様に、炎弾と同時に、風弾と水弾、石弾の四属性を三点バーストの要領で射出してみる。が、結果はどれも同じで、放った四種の魔法は次々と彼女の展開する半透明な魔法陣の盾に当たり消失していく。質量を伴っていると思われた水弾や石弾もである。


「……四大属性を使えるのか。大した才能だ。だが、諦めが悪い」


 とは言っているが、彼女もシールドを展開するのに労力を割いている所為か何もしてこない。お互いに決め手を欠いてジリジリと相手の出方を窺っている千日手状態だ。考えろ、考えるんだ。……あぁ、漫画やアニメ、ラノベみたくレールガンみたいな必殺技とか使えたらなぁ。なんて考えてしまう。


 あーゆーのって造作も無くレールガンを使っているけれど、記憶が曖昧で電磁石に依るリニアモーター的な射出機とか、そんな大雑把なイメージは有るものの、原理はよく判らないので使えない。奥の手みたく使えたら格好良いんだろうけれど、遠い記憶の彼方にある、キーワード一つで簡単に検索出来た前世のインターネッツ時代が懐かしい。有ったら速攻で調べて使っていたのに。


 で、現状の精一杯、か。物理的な攻撃をするにしても、父さんの形見のナイフと弓と矢しか……。ふと、記憶の片隅にかすめる物があった。行き当たりばったりだけれど試してみよう。


 外套の下から取り出すフリをして、<ストレージ>から弓を取り出して、弦を引き絞る。一射目、風魔法を使って曲射付与する。シールドに当たって矢ごと砕ける。二射目、何も付与せずそのまま真っ直ぐ射る。矢はシールドを貫通するも宮廷魔術師は簡単に射線を避けた。そして、そんな事をしても通じないぞ、とばかりにニヤリと笑みを作り私を見返してくる。


 今度は風魔法を使って宮廷魔術師に向けて、遠心分離の要領で中の空気を外に吐き出すイメージで、弓の前方に細い管の様な五メートルぐらいのミニ竜巻を発生させる。ずは銃身部分。狙うは宮廷魔術師の心臓。


「へぇ、<トルネード>まで使えるか。しかも規模が小さく横薙ぎ方向とか、器用だな。本来は広範囲に攻撃を加える魔法の筈だが、そんな短さじゃ<アンチマジックシールド>は抜けないぞ」


 ミニ竜巻は強風渦巻き、髪の毛がバサバサに、外套が煽られバタつく。左右に揺れ波打つ細い渦巻きの管を制御しながら、弦を引き絞る。宮廷魔術師は半透明な魔法陣の盾を展開しながら興味深げにこちらを見ている。


「ふん、矢をつがえていない弓で如何するつもりだ」


 向こうからは影になって見えない様だけれど、弦には矢の代わりに銀貨をつがえてある。弓を使った簡易スリングショット。これだけだと照準が不安定で貫通力も低いので、空気抵抗が少ない、真空に近い竜巻内部を通して、更に後ろから風を送り込み弾速を上げるつもりだ。そして、粛々と狙いを定め指から弦を離す。


 ビィンッ! ヒュボッ!!


 弦から放たれた銀貨は狙い通り竜巻の入り口部分に吸い込まれ、空気抵抗の少ない細い風の管の中を突き進んで、竜巻は突入口とつにゅうこうから先端へ、銀貨を押し出すように、しぼり出すように一瞬で、通り過ぎた場所からしぼんでいく。内部では、錐揉み状に風が巻いており、銀貨は銃身内部のバレルロールを通ったのと同じ効果を得て、最終的に高速回転しながら加速して出口から射出される。刹那の出来事。吐き出された銀貨は、そのまま宮廷魔術師の心臓を目掛けて飛んでいった。


 ドッ、パァアアン……。 


 使用した風魔法の残滓はことごとく<アンチマジックシールド>にはばまれ、消失していったけれど、唯一、魔法効果の持たない物理運動だけで飛翔した銀貨は、<アンチマジックシールド>の干渉を受けずにそのまま貫通して宮廷魔術師の胸を、心臓部分を大きく穿うがった。簡易銃弾としては銀貨一枚の千ダラー。三途の川の渡し賃としては破格だと思うけれど仕方が無い。これから黄泉路へ旅立つ先払いの餞別だ。


「……ごふっ、な、何をした?」


 胸に向こう側が見える程の大きく穴を開けた宮廷魔術師ルーリエ・セーブルは苦悶の表情を浮かべ、口からは血をしたたらせ、私が何をしたのか聞いてくる。


「思い付きの急造ハリボテ魔法を使っての攻撃」

「……は、……ははっ……なんだそれは……」

「弓で、銀貨を弾体として、撃ち出した」

「……銀……そう、か、おまえが、お前が、私の、死、だった、か……」


 その言葉を最後に宮廷魔術師ルーリエ・セーブルは力尽き、その場に崩れ落ちた。同時に身体全体が崩れ始め灰に変っていく。何時の間にか近くに寄ってきていたエンヤさんは軽くジャンプして両手で何かを振るう仕草をした。そして着地。


「灰は灰に、塵は塵に、塵は土とり、魂は魂の坩堝るつぼへと還る。永劫の刻を越え、再誕するその時まで安らかに眠れ」


 エンヤさんはレイナードの時と同じ言葉をつむいでいた。一陣の風が巻き起こり、地面で一塊となっていた灰が大気中に霧散していった。


 ……あれ、吸血鬼ヴァンパイアの討伐部位ってなんだっけ?

2020/09/06 戦闘シーンを一部修正しました。


更新は気分的に、マイペースに、です。

我が妄想。……続きです。

読んで頂き有り難うございます。

構成を考えず直感で自己満足しながら書いているので楽しく、面白く読めるかは判りません。

120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気で誤魔化しています。

読み手に不親切な駄作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。

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