第〇〇四話
更新は気分的に、マイペースに、です。
我が妄想。……続きです。
私の足元に、全身が黒で統一された色合いで丸い形の帽子、丸い眼鏡、髪はお下げにして後ろで纏め、身体のラインに合った喪服のドレスを纏った女性が立っている。
「なんか私の名刺が穢れた視線に晒された気がしたので様子を見に来ました」
「純粋な幼女の目を穢れた視線扱いにしないで頂きたい」
「大人っぽい口調をした気持ち悪い幼女ですね、貴女は。……ところで昼前っから布団に横になって何をやっていたのですか、カノンさん?」」
「……魔法を使う訓練等?」
「ふーん。私、今回、一応、仕方がなく、嫌々ながら、アフターケアの一環で様子を見に来たのですが、如何ですか、この世界。女性体に転生してまだ三年ぐらい経ったと思いますが、不便とかは無いですか?やって行ける自信はありますか?」
むー、刺々しいな。それにひと言ふた言余計な気もするけれども、今更如何でもいいか。それに本業のアフターケアの仕事に来たらしいし。と言うか、質問がなんか再就職雇用の追跡調査みたいだな。
私としては、ハーレムを作って童貞を捨てる夢は速攻で破れたけれど、次点で前世で過労に因る孤独死しているから、魔法を覚えて瑣末な煩わしさから最低限身を守る術として、異世界でスローライフを目指そうかと思っていた。
その為、精神統一による体内魔力を練る訓練をしていたけれど、果たしてこれで大丈夫なのか?折角なので、私の現在の状態と魔法に付いて確認してみたいと思う。
「そうですね。この世界は己の中に在る魔力を種に指定した座標にイメージを起因とした事象改変を行い魔法を発現させます。貴女の現状は……ぶふーっ!!」
魔法の使い方の説明をしながらスッと目を細め観察する様に私を見た途端、なんか噴出した。
「……失礼。貴女は何を仮想敵としているんですか?既に大人の魔法使い並みの魔力を持っているのですがこれは。アホですか?このまま続けると成人時に魔王級の魔力の持ち主になりますよ」
「生まれて直ぐ辺りから意識が無くなるまで精神鍛錬の瞑想して、たまに魔法を使ってみる。みたいな感じ?」
「何故、疑問形ですか。でも、そうですか。新生児からずっとそれを、魔力欠乏症になるまで繰り返して容量を増やしたんですか、貴女命知らずですね。普通はやりませんよ、そんな訓練。下手すると死んでましたよ、カノンさん」
どっかの白い悪魔を作った父ちゃんみたいな症状だな!つか、マジか!!意識を失う寸前、天にも昇る気持ちよさがあったからそんなに気にしていなかったけれど、本当に昇天する寸前だったのか、やべぇ……。
「ちなみに今度死んでしまうと如何なるんです?」
「如何なるもこうなるも、魂の坩堝送りです。他の魂と共に練成と生成を繰り返し漂白されて自我すら無くなってますよ。一度見に来ませんか、中々綺麗ですよ。なんなら内部に入られても構いませんよ」
「……有り難いお誘いですが、謹んでお断り致します」
「童貞の三十歳は魔法使い、四十歳は大魔導師は嘘でも五十歳は魔法少女で決定ですね。貴女だけに適用っぽいですけれど」
「……私の心を無断で読んだのね!酷いっ、誰にも読まれた事がなかったのにっ!!」
私の心は何処まで読まれたんだろう?……やめて、恥かしい。
魔法に関しては概ね想定通りだったけれど、イメージで具現化するならば前世の記憶がある分、精度の高い魔法が使えるんじゃないかな。ただ、まさか精神鍛錬の方が命懸けだったとは。……以後、色々と気を付けよう。
オマケとして私が貰った魔法特性、ストレージ、鑑定は使用頻度に因って成長するのだそうだ。魔力欠乏症で何とかなったのも魔法特性が有ったお陰らしい。
他の人にも言えるらしく、その人が得意な技術は延び易く、不得意な人は伸び辛い。そして、それは表面から判らないので得手不得手を模索しながら生活していくのだそうだ。知らずに不得意な分野で頑張り過ぎて不遇な扱いを受ける場合も有る様なので注意しないといけないらしい。稀に得意技術として新たに生えてきて臨界突破する者も居るそうだが。「虚仮の一念、岩をも通す」ってヤツだね。もしかしたら私も他に手を出したら生えてくるかもしれん。一応、覚えておこう。
ただ、私は最初から得意な技術を知っていたのと一番延び代の在る子供のうちからに始めたのもの一因が在るので今のところは問題ないようだ。さらに言えば私の鑑定で他の人の得手不得手が判るらしい。けれど表立って使う気はしないな。
暫くそんな内容のレクチャーを受けていた。お互い、若干、罵倒交じりな言葉のキャッチボールだったけれど。徐に彼女は「ふぅ」と溜息を付きこちらに向き直る。なにか安堵した顔をしている。
「カノンさんならこの世界で上手くやっていけそうですね。私は今回で担当を離れるのでこれでお別れです。次は死に間際に別の担当が対応すると思うので、それまでこの世界をエンジョイして下さい」
追跡調査は今回だけで終了らしく、もう二度と会う事は無いらしい。ふと考える。私が持っていても宝の持ち腐れにしかならない彼女の名刺。同僚以外に渡しちゃ駄目と言われているのであれば、やはり返した方がいいのではないだろうか?
「……これは返した方が、いいよね?」
そう思い、それを彼女へ差し出したのだけれど、彼女の右手で押し返される。
「なんだかんだで、カノンさんとの会話が楽しかったので記念に差し上げますよ。私の初めての顧客でしたし、これもなにかの縁なのでしょう。お守り代わりでも、或いはストレージの肥やしにでもして下さい」
死神と言う激レアなキャラと知り合えた私としては大変に嬉しいのだけれど。二度と会えないと思うと、ふいに彼女の名前が知りたくなって、彼女の顔と彼女の名前が書かれている名刺を交互に見た。そんな私に彼女は嗤う様に言った。
「幾らその名刺を見てもカノンさんには私の名前は見つけられませんよ。たとえ名刺に書いてある私の名前を見つけても、人間の発声器官じゃ言えません。<■■■>なんて」
彼女はドヤ顔で酷い耳障りな音を発声する。激しいピーヒョロローなギャリッギャリ音。まるで昔のアナログ電話を使ってパソコンをネット回線に繋ぐ際の機械音。私はその中で薄っすらと微かな音を確かに聞いた。
「ェエ、ンニャ?……<■■■>か?」
持っていた名刺が光った。なにかの記号なのか言語なのか幾何学な模様が浮かんでいた。
「はああっ?!……なんでっ?なんでっ!なんでスクランブルしてる音を聞き分けて、しかも発声出来るんですかーっ、出来ちゃうんですかー!!」
つか、こいつはなんで自分で名乗っちゃうかなぁ。……余りの間抜けさにこいつって言っちゃった。直後、彼女のスマホから呼び出しベルっぽい音が鳴る。如何やら電話が掛かってきた様だ。電話の相手を確認して慌てて出る彼女。
「あ、はい私です。……えぇ?……言わんこっちゃないって!まさか、キモオタ幼じょ、人間が発音出来るなんて……」
キモオタ爺からキモオタ幼女ランクアップ?ダウン?どっちだ???まぁ、どっちでもいいや!それよりも彼女の言葉の端端で凄く焦っているのが判る。きっと想定外だったのだろう。
「名刺も持ってる状態の者に名乗るのは駄目、って……音を聞き分けられるかもしれない?……実地研修じゃなにも言ってないじゃないかー!!」
こいつは拙い。相手の言葉を反復しているの気付いていないのか?これじゃ、相手との会話は筒抜けじゃないか。……守秘義務もなにも有ったもんじゃない。
「同業以外に名刺を渡す事自体ないから説明の必要ないって……、カノンさんのところで再研修って……自業自得って、そんなっ、誰が責任を取って……」
ブツン。ツー。ツー。ツー。
上司に電話を切られた模様。切れた音がやたら大きく聞こえる。彼女の絶望した顔。ご愁傷様です。如何やら私は彼女の名刺をで以っての死神<■■■>を使役か召還を出来る様になったくさい。マジですか、そうですか。……如何しよう?
取り敢えず、今回はエンヤに帰って貰う事にした。今の情緒不安定の状態で会話が成り立ちそうに無かったからだ。呼び出し方法を聞いたら渋々と答えてくれた。名刺に念を込める。或いは名前を呼ぶといいらしい。落ち着いた辺りを見計って呼び出してみよう。
その日の夜、母さんに日中の事、私が部屋で昼寝と言う名目の精神鍛錬をしていた時に如何やらエンヤとの会話を母さんが聞いていたらしい。
部屋から私が誰かと会話をしている感じがして、気になって覗いたら部屋には私以外に誰も居らず、かと言って私が何も無い場所に話し掛けていて、でも、それが凄く自然に見えて不思議な光景だったと言われた。
どうやら彼女は、死神は他の人には見えていないようだ。
読んで頂き有り難うございます。
構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので面白く読めるかは判りません。
120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。
読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。