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散文の後/南風  作者: 新辺守久/小珠久武
第〇二幕 死を運ぶ者
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第〇〇三話

更新は気分的に、マイペースに、です。

我が妄想。……続きです。

 俺、もとい私は死神の導きに従って異世界へ転生した。この世界に生を受けたのは三年ぐらい前の話だったか。盛大にギャン泣きした記憶がある。


 生れ落ちた先は黒の樹海呼ばれる大森林の外縁部に点在する開拓村。その名前の通り広大な黒の樹海を少しづつ切り開く幾つ在る集落の一つ。


 これまでの期間、家族が話す日常会話でこの世界の言葉を脳内で一所懸命に解読、判別、変換、理解しながら、少しずつ生まれたこの場所の情報を収集。死神から貰った鑑定を併用しながらだったけれど、開拓村の狭いコミュニティ、それ程の使用頻度にはならなかった。


 父はアランと言って村の仲間達と共有財産の畑で農作業をこなし、そして合間には森を切り開き開墾しする。時折、その仲間達と一緒に近場の樹海に入って狩猟もこなす。一家の大黒柱らしく中々に忙しい日々を送っている。


 母はカーヤ。森で採れるキノコや薬草類を使って様々な薬品精製をする薬剤師の様な仕事をしている。結構腕前がいいらしく出来上がった製品はこの開拓村だけじゃなく、時折やって来る行商人に買い取られ、製品は高品質なポーションとして遠くの街まで出回っている模様。


 長男のアルタは昨年一〇歳を越えたのを機に、そんな両親に付いて畑の見回りや草取り、近場の森に在る薬草採取など手伝いをしている。どうやらこの世界では一〇歳が最初の節目らしい。実際は私が生まれた時、八歳の頃から手伝いをしていた様だったけれど、暇が有ると姉さんと一緒に甲斐甲斐しく面倒を見てくれていたので、全く気が付かなかった。


 そして長女のカレンは御歳九歳の見目麗しいレディとして積極的に雑用や家事手伝いをしている。所謂いわゆる背伸びをしたい年頃の女の子でままごとの延長線として、そして姉として私にいい所を見せたいと頑張っている様だった。転生前の私だったら父性本能を発揮して庇護ひご欲に駆られ手元に置きたい存在になっただろう。勘違いをしてはいけない、私は決してロリではない!


 ……さて、次女である私は満年齢でもう直ぐ三歳になる幼児だ。生まれて直ぐにカノンと名付けられた。家族や近所の人達とのやり取りで、この黒の樹海と開拓村、そして遠い街だけが彼等の世界の全てだと知った。


 私としてはそれが悲しくなるぐらい狭い世間なのだと認識しているが、情報伝達の未発達な世界の話なので仕方が無いのだと開き直り、ここではそれ程有意義な情報はそ得られないと思う事にした。無理をする気もないし、そのうち機会が有ったら行商人辺りから世界の話を聞こうかね。それに現状、家族全員が仕事をしているかたわらで、みんなに面倒を見られながら食っちゃ寝の悠々自適な生活をしているのでしとする。


 いや、自堕落な生活をしている訳ではないのよ。言い訳をすると合間を見て日課の魔力操作の鍛錬をしている。


 最初の頃は魔法の使用方法のあれこれ模索して、未発達な声帯を使って言葉にならない言葉を「アー」とか「ウー」とかしぼり出して、心の中では「我が意思の元に集え、炎よ!」とか「水の精霊よ、その加護をって、清らかなる水を生み出し給え!」と言った具合の中二病っぽい文言を唱えてみたり、空中に炎や水をイメージしたけれど、全然駄目だった。


 三日もたずにその作業に飽きた。そして童貞の三十歳は魔法使い、四十歳は大魔導師説は嘘だったと証明された瞬間でもあった。妄想した四大精霊使いなんて夢のまた夢の話だったのだと泣きそうになった。忙しくしている両親や兄さん姉さんに迷惑掛けたくないから泣かなかったけどね!


 だがしかしっ、私は、死神から魔法適正を貰っている、なので使えない筈が無い!!と、強く前向きに考えた。考える事にした。だって、赤ちゃんが出来る事ってなにも無いんだもん。


 さて、如何どうしたもんかと悩んだ挙句、それならばと思考を内に向け身体を巡る魔力を感じるんだと深く深く全身を精査する様に精神統一をした。その試みを幾度か繰り返したけれど、そのたびぐに疲れが出て、最悪意識を飛ばすぐらいの深い眠りにおちいったりして散々だった。なのだけれど、それは無駄ではなかったらしい。


 しばらくすると、体内を巡る血液とは違う別のナニか、全身をいまわる微妙な感覚に気が付いた。その感覚を認識する様に精神を研ぎ澄ませていくと徐々に、ではあったけれど、確実にねっとりとまったりとはっきりと、身体を這い回るそれに意識する事が出来た。もしかしてと思い、その時丁度精神集中のし過ぎで喉も渇いていたのもあって、目の前に水のイメージをしたら渦巻く様に空中に小さな水の球が出現した。


 喜びの余り集中力が散漫になった。その所為で水の球を支えていた魔力が霧散してしまったのか、かごで横になっている私の身体に降りかかった。全身水浸しである。それはもうビショビショである。生まれたばかりの小さい身体は自由も利かないので、どうしようもないまま、成すすべなく固まった状態のまま、うつろろな眼をして母さんがやって来るまで中空を見ていた。


 この頃の母さんは結構な頻度で仕事の合間に様子を見に来ていたのだけれど「こ、これはいったい?!お漏らしですか?こんなになるまで我慢しちゃって……カノンってば、まったくもう」と大量の水分に苦笑いを浮かべながら、姉さんのお下がりのベビー服とオシメを変えられた。「こーゆー時こそ泣いて、知らせるんですよ」なんて、困った顔をしながら寝ていた布団を交換してくれた。その時の母さんの独り言っぽい小言を聞いて私はハッとした。


 あのギャン泣きした一件から私は両親に迷惑は掛けられないと出来るだけ大人しくしていた。お腹が空いた時も漏らした時も静かにしていた。我慢した。けれども、母さんは何か有った時にすぐ対応が出来る様にと、様子を見る頻度を増やしていたっぽい。無駄に私の面倒を見る時間を増やしてしまった様だった。かえって手をわずらわせていたのか。……意思表示って大事だね!カノン、また一つお利口になった!!


 魔法の話に戻す。如何やらイメージと精神集中の順番が逆だったらしい。その発見から精神統一による体内の魔力を練る練習を日課とし、家族が誰も見ていないタイミングで魔法発現の訓練も始めた。水の球誤爆お漏らし事件を反省として、出来るだけ周囲に気を付けながらのイメージトレーニングである。切っ掛けさえつかめれば後はそれの繰り返しだけである。


 そして現在。今日も今日とて意識が飛んだ時の事を考え、布団に横になって魔法の訓練をしていた。決してダラけている訳ではない。そして、ふと思い出す。そう言えばあれからもう三年になる。つか、もう直ぐ四年目になる。


「様子を見に来ます。三年後ぐらいに」


 死神の、彼女の言葉を思い出す。やはり、五十を越えたキモオタ中老爺の相手は嫌だったんだろうな。って思ってしまう。


 ストレージの奥に仕舞っていた死神の名刺を思い浮かべ右手に取り出して眺める。キモオタのさがであるまとわり付くような視線で、穴が開くくらい何度も観察した名刺は色褪いろあせる事も無く新品同様に綺麗なままだ。


「貴女は何をやっているのですか?」


 足元に、全身が黒で統一された色合いで丸い形の帽子、丸い眼鏡、髪はお下げにして後ろでまとめ、身体のラインに合った喪服のドレスをまとった女性が立っている。約三年前、いや、四年近く前に私をこの世界へ導いてくれた死神。あの時と変らない。丁度、窓から差し込む逆光を浴びて影になり彼女の顔がはっきりと見えない。きっと嫌そうな顔しているんだろうな。


「ちょっと匂いを嗅ぎたくなってね。癖になって止められないんだ」

「……相変わらずのドン引きするぐらいの変態っぷりですね。女性体になってもお変わりなさそうですね。お元気そうで何よりです。カノンさん」


 彼女との会話をしたのはホンの少しだけ。前世の死に間際とこっちの世界へ案内された時。その短い間でのやり取りしか無かった。四年近く経っての再会だけれど、そんな事を感じさせないスムーズな会話を交わす事が出来た。

読んで頂き有り難うございます。

構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので面白く読めるかは判りません。

120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。

読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。

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