第〇二〇話
広場には幾つかの歴史を感じさせる建物が並んで存在していた。その中の一つに先程見かけた老若男女達が列を成して建物に吸い込まれる様に入っていく。
辺りを見回すと建物の近くに似た様な風体をした者達が固まりを作っていた。立ち話をしたり草臥れた様子で座り込んでいたりして屯っているけれど建物に入っていく様子は無い。入場待ちの一般参加列の人達だろうか、と思い至る分、まだ例のイベントと重ねてしまっている自分が居た。
取り合えず、みんなが吸い込まれて行ってる建物へ入る事にする。入り口の脇には看板が据え付けられており、剣と杖がクロスして背景に盾といった具合の紋章と「冒険者ギルド・ノーセロ支所」と文字が書かれていた。鉄の扉は内側に開け放たれていて誰でも簡単に入れる様だった。
中へ入ると大きな病院のフロントを思わせる広さになっており、当然、蛍光灯なんて代物は無いので多少薄暗く、天井を高くして窓などの配置で上手く光を取り入れる造りになっていた。壁際にボードが立て掛けられ何かメモ用紙みたいな物が大量に貼られそれを食い入る様に見ている者が多数居る。
他にも、誰かを待っているのか中央に置かれた長椅子に座っている者。所在無さげに立っている者。集団を作って情報交換らしき事をしている者の姿も見られた。奥には受付カウンターらしきものが並んでいて、幾つかの列が出来ていて、その先に綺麗所が座ってテキパキと仕事を、お客様の対応していた。
登録するにも勝手が判らないので適当な列に並んでみる。今のところ幸運な事に、門番のあの軽そうな小僧以外絡んできそうな者は居ない。滞りなく私の順番が来た。
「冒険者ギルド、ノーセロ支所へようこそ、お嬢さん。本日のご用件は何でしょうか?」
「ぎ、ギルドに登録、したいんですが、手続きはここでいいんでしょうか?」
「はい、構いません。登録手続料金五十ダラーと書類へ幾つか記入して頂くのですが代筆は必要ですか?」
「あ、文字は書けるので問題ないです」
「ではこちらに記入をお願いします。最低限、名前、年齢は記入して、判らない所が有ったら教えて下さい」
笑顔を湛えた見事な営業スマイルで対応してくれるお姉さん。その笑顔はゼロダラーでお願いします。しかし、登録料金は五十ダラーか。門番の好青年はやってくれたな。入城料金、昨日の宿代金、そしてギルド登録料金で丁度七十五ダラー。ホロホロ鳥の買い取ってくれた金額と同じじゃないか。もしこれで相場以上払ってくれていたのであれば本当に感謝しかない。
差し出された用紙……羊皮紙に文字を書いていく。項目は出身地、名前、年齢、希望職業、得意な事、等々。最低限、名前と年齢と言っていたので、それだけ書いて出したら渋い顔をしていた。折角の美人さんが台無しだ。
結局、希望職業と得意な事を聞かれてお姉さんが書いていた。個人個人で適正の仕事とか有るからそこ等辺は必要事項なんだろう。弓による狩りとキノコや薬草類の採取と簡単な薬剤やポーション作りが出来ると申告したら驚かれた。採取は兎も角、誰かの弟子にならないと薬剤やポーション作りは難しいらしい。
それとは別に「魔法って誰でも使えるんですか?」って聞いてみたらお貴族様に使える者が居るらしい。平民にも居ない訳ではないけれど少ないそうだ。血統や遺伝の関係だろうか。変な詮索をされるのも嫌なで魔法を使える事は内緒にしておいた。
あとは幾つかの注意事項とギルドの説明を受けた。ギルドが身元を保障、証明する代わりに最低限の義務と最低限のモラルを守ってね、とかそんな感じのヤツ。
登録は十歳から可能だけれど、あくまで仮登録、仮免許扱いでランクはFで十二歳未満。ランクFは十二歳になったら仮が取れてランクEになる。
ランクEは少し特殊で、所謂十二歳以上の仮登録や仮免許の扱いらしく、受けられる依頼は大差が無いらしい。ただ、少し特殊な部分があり、実技やギルドへの貢献度に拠っては基本二年の試用期間を置かずにランクDに昇格する場合もあるらしい。これはランクFから昇格した者にも当て嵌まり、早ければ十二歳でランクDに成る事もありえるそうだ。逆に万年ランクEという言葉も有るらしい。
その関係で本格的な討伐系の依頼も十二歳から、ランクD以降じゃないと受付は出来ないそうだ。本格的な、とは野生のスライムやゴブリン、オーク等の体内に魔石を有する魔物の討伐になるとの事。例外も有るそうだけれど、若い内、経験の浅い内は危険な事に首を突っ込まないでね。って事らしい。ちなみに魔石を持っていない動物、ホーンラビットやホロホロ鳥等は魔物対象外扱いで常時受け付けしているそうだ。
余談として、冒険者ギルドの登録者が自分で就職活動をしたり依頼による人の繋がり等で仕事に就けた場合には登録解除が必要で事務手続きの手数料として二十ダラー引かれた三十ダラーが返金されるらしい。冒険者ギルドと言うより職安やハロワと言って欲しいの心。
如何やら十二歳までは街の雑務や採取系が主流になる模様。手に入れた素材等の買い取りも別の窓口でしている様なので、手続きが終わったら売りに行こうと思った。お姉さん曰く、素材だけじゃなく製薬した物も買い取ってくれるらしい。が、それは後でもいいだろう。現在、残金ゼロなので助かる。
お姉さんの説明を受け手続きをしている最中に、後ろの職員がなにやら作業をしていた様だけれど、如何やらギルドカード作っていた様だ。出来上がった金属製のカードと尖ったピンを渡される。場所は何処でもいいので血液を付着させると自分専用のカードになるそうだ。
繁々とカードとピンを眺め、徐にカードの端を口に含んで舐めてみた。「あっ」と受付のお姉さんとカードを持ってきてくれた職員の人が声を重ねて上げた。そして確認の為、二人にカードを戻す。
「も、問題なく契約されています」
「えーっ、こんなんで大丈夫なの?」
職員の人は信じられないのかカードの表裏を何度も確認して、受付のお姉さんは私の方をじっと見ていた。血液や唾液からDNAが抽出出来るって聞いた事が有ったし、もしかして体液なら他も行けるんじゃないかと、駄目元で試してみたら案の定、認証された。だって痛いの嫌じゃない。
手続きも問題なく終わりギルドカードも返してくれた。私は硝子製のお弾きを五枚、五十ダラーを差し出す。何度見ても玩具みたいだ。
「冒険種ギルドへの登録有り難うございます。職員一同、カノン様のご活躍を期待しております」
受付のお姉さんは登録手続料金の五十ダラーを受け取りニッコリと微笑んでそんな事を言ってくれた。
読んで頂き有り難うございます。
我が妄想。更新は気分的に、マイペースに、です。
構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので面白く読めるかは判りません。
120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。
読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。
2020.11.17 以上、以下、未満の言葉を修正。