表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
散文の後/南風  作者: 新辺守久/小珠久武
開幕 死を繋ぐ者
2/132

第〇〇二話

更新は気分的に、マイペースに、です。

我が妄想。……続きです。

 日本で深夜アニメを観ながら孤独に過労死した俺の魂は「輪廻転生、異世界転生」と言う甘い言葉に乗せられ死神に拉致られた。


 そして今、俺と死神はどこかの地球に似た惑星の遙か高空で実体の無い幽霊体の筈なのに全身を大気にあおられながら自由落下中である。


 空は青く澄んでいて、大地に緩やかな弧を描き、彼方まで見通せる。地平の果てに山脈や海らしきものが見えた。ここが剣と魔法のファンタジーな異世界。目的の地域なのか足元には黒々とした樹海。川が蛇行して巡り、湖が点在している。地球の南米に在るアマゾンのジャングルみたいだ。


 樹海と平原が重なる曖昧な外縁部の所々に都市や集落が存在している。多分、街道と思われる白い線がチラリと見えそれらが繋がっている。まず日本ではお目に掛かれない光景だろう。


 ちなみに、俺をこの世界へ案内してくれた死神の彼女は落下途中にも関わらず大地に背を向け、片手で丸い形の帽子を押さえながら、黒が基調の喪服ドレスを風になびかせて、もう片方の手にスマートフォンを持ってのん気に絶賛電話中である。


 異世界に転移して俺が貰えるオマケの話をしていた途中でスマホの着信音が鳴って、彼女が電話に出たのだ。落下に伴う大気の音で聞き取りづらいからなのか大声でスマホに向かって叫ぶように会話をしている。死神の通信ツールってスマホなんだ。って感心してしまった。


「えー、ヤですよー。こんな棺桶に片足突っ込んだ中老ちゅーろーの、おっさんの面倒を見ろとかー……」


 中老に関してはその通りなのでスルーは出来るけれど、棺桶に片足を突っ込んでるとか既に死んでる俺に対する嫌味かよ!? ちょっとだけイラっとした。つか、こんなのが死神で大丈夫なのか?


「えぇー……、同僚とやり取りするのと同じよーに渡しちゃいましたよー、名刺めーし。……だってそんなぁ、新人研修しんじんけんしゅーでそんな説明せつめー受けてませんしー……」


 おいっ、お前は新人だったのか! どんな職場なんだよ、死神の職場って? ……けど、新人ならば、なんとなく納得出来る、かな。誰でも最初はあるさ、ふふふ。


「はぁー、判りましたー。取り合えず現着しそうなんでー、一旦切りますよー」


 ようやく上司との電話が終わったようだ。さっきよりも黒々とした樹海が近づいている。やはりそこが目的地らしい。


「さっき、わたくしの名刺を渡しちゃったじゃないですか、それが駄目だったらしくてー、……今からでも返してくれませんかねぇ?」

「自分好みの可愛い死神から貰ったアイテムですよ、手放せません。ただでさえ、接点が殆ど無い女性からの貰い物なんです。絶っ対にです」

「自分好みとかマジキモっ、最高にキモっ! 取引先のマジキモいオタクの親父に勢いで渡したのが運の尽きだったのかぁ……」


 最高にマジキモいオタク結構、俺にとってご褒美……いや、褒め言葉だ。なんと言われようと名刺は返さん。それに取引先って言ってるけれどやり取りしたのはマイソウルだからな! 俺より不利益ないじゃん!!


「はぁー……基本、同僚としかやり取りできないって、早く言ってよ。もー、真名まなが書いてるから渡したら駄目だって今更言われても……あっ!」


 彼女は外部の人間に漏らしちゃいけない守秘義務的な事をしゃべってしまった模様。慌てて両手で口元を隠す仕草をしたけれど手遅れだ、いい事を聞いた。


 俺はにっこりと最上級の笑みを浮かべて感謝の言葉を述べる。


「あとでじっくり、名刺に書かれたお名前を拝見させて頂きますね」


 電話で途中になってたけれど、転生のオマケは<魔法特性>と死神データベースを元にこの世界用にデチューンした<鑑定眼>と<ストレージ>。速攻で<ストレージ>の奥に隠匿した彼女の名刺が加わった。忘れてなかったら後でじっくりねっとりと鑑賞しよう。


 ちなみにスキルの様な隠しパラメーターは個人の能力や技術特性に応じて様々に伸びていく感じらしい。この世界ではそう云った技術、特技を見出して生きていくのが基本なのだそうだ。記憶が残っていたら伸ばす様に努力しよう。


「……判りました。遺憾ながら諦める事にします」


 彼女は悔しそうな顔をして身体を震わせている。スーパーやコンビニ以外で久しぶりの女性との会話なのだし、どうせ新しい肉体に移ったらここまでの記憶なんて霧散するか消えるんだろうから、ホンの少しのささやかな死に際の思い出として楽しませて貰おう。


「本来、私達はアフターケアはしないのですがこうなったら仕方ありません。また後で様子を見に来ます。そうですね、今度は三年後ぐらいに」

「や、君の初歩的ミスじゃん。きちんと責任は取って下さいよ」

「キモオタのおっさんから言われたくない言葉ですよ、それ!!」


 達観した様な、疲れた様な、それでいて無理に笑顔を取りつくろうとして、苦笑いの表情になる彼女。そして俺と彼女は視線を下に向ける。黒い樹海の合間に小さな集落が見える。


「……やっと時間ですね。準備はいいですか、いいですね、拒否権無しですよ」


 そう言って彼女は右のこぶしを振り上げる。こいつ何するつもりだ?


「それじゃ、アデュー!!」

「げぼぉあっ!!」


 そんな彼女の声と共に顔面を思いっきり殴られる。彼女いない暦イコール年齢。最終的に女性の握り拳で五十年の人生の幕を閉じるのか。まぁ、それも一興だろう。そのまま彼女は黒い喪服ドレスをひるがえし光の中へ消えていった。


 俺は殴られた勢いのままボロい家屋の屋根を付き抜け、横になって休んでいる妊婦さんの身体の中にある小さな生命、自分の生まれ変わる事を約束された小さな肉体の中へ己の魂が放り込まれた。


 ――――― 数日後。


「フ、フギャー! フギャー! プギャー!!」


 自分が母親の中から生まれ出でて、初めて外気に触れた時、混濁した記憶は鮮明になり、生まれ変わった肉体が女性体だと知って俺は泣いた。それは、それは、もう、もの凄く泣いた。生まれ変わったら童貞を卒業するドコロの話ではない。


 最初の四日間は己の運命をはかなんで、三日間は惰性で泣いた。約一週間程の間、生んでくれた両親が寝不足におちいり、疲労困憊ひろうこんぱいになるぐらい俺はギャン泣きした。


 一週間過ぎた辺りで俺は泣くのを止めた。理由として、この頃になるとピンボケながら薄っすらと目が見える様になっていた。一生懸命あやしてくれていた両親を見た時、ボヤけた像の所為で補正が掛かったのか、二人がイケメン男子と美少女に見えたからだ。


 君達、若そうだな! まだ二十台前半ぐらいか? 二人の年齢を足しても前世の俺の年齢以下なんじゃないか!? 赤ちゃんなのに精神的にダブルスコアで年上とか、地味にショックを受けてしまった。泣いてる場合じゃない。


 そんな二人は俺が泣き止んだのを見てあからさまにホッとしていた。……ご迷惑を掛けました、申し訳ありません。以後気を付けます。


 しかし、いまだ俺の中に前世で経験した記憶が鮮明に残っているのは如何なのだろう? てっきり生まれた当初だけ覚えていて、時間が経つにつれ夢を見ていたかの如く前世の記憶が希薄になっていくか、もしくはそれまでの記憶は全く無くなって、完全無垢な状態から俺の第二の人生、異世界編がスタートするものだと思っていた。


 なので短い時間だったけれど死神の彼女に対しても「どうせ忘れるなら」と軽い気持ちで接していた。こんな結果になるんだったら、もっと紳士的に会話をするんだった。と、ちょっぴり後悔した。三年後に来てくれたら誠心誠意謝ろう。


 取り合えず、現状の把握を兼ねて直近の目標として情報収拾と魔法の使用方法の模索辺りかな。


 情報収集は両親の会話がメインになるだろう。魔法の使用方法は物心付く年齢ぐらいまで自分で思考錯誤するしかあるまい。それで駄目だったら誰かに聞けばいいだろう。


 俺が泣き止んだ事で家族の団欒が増えた。その中で家族構成が判った。両親の他に兄と姉、そして俺の五人家族。


 男手が欲しくて両親が頑張った結果、現在一男二女になった。俺が女に生まれて御免なさい。一人称も俺じゃなく私に変えるべきか。中身は男だけれど、男なんだけれど。……くっ。


 一応、女手も必要不可欠で有るのだけれど、将来的に樹海を切り開いて畑を少しづつ広げる為にも、やはり男手が欲しかったらしい。俺が大泣きして両親の手をわずらわせていた時に会話の中でポロッとそんな事を漏らしていた。


 ついでに母さんが「体調が落ち着いたら次も頑張るぞっ!」ってりきんでいて、父さんが疲れた顔をしていたのを俺は見ていた。しばらくしたら、母さん主導でまた一人増えるかもしれん。父さん頑張れっ!

読んで頂き有り難うございます。

構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので面白く読めるかは判りません。

120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。

読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ