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散文の後/南風  作者: 新辺守久/小珠久武
第〇三幕 塩買う者
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第〇一九話

 門番の青年に教えて貰った宿の名前は<新緑屋>。食事は無しだけれど、素泊まりが出来て格安らしい。やる気の無さそうなフロント係りの小父おじさんに提示された前払いの料金二十ダラーを払ったら部屋番号の札が付いた鍵を渡された。てっきり大部屋みたいな所で大勢して雑魚寝なのかと心構えをしていたのだけれど、その気持ちは見事に空振った。


 番号が振られた部屋は三畳ほどの広さにベットが一つと脇に申し訳程度の大きさのサイドテーブルが置かれていた。清掃はされているけれど、この世界、芳香剤や消臭剤なんて物は無いので若干汗臭い。据え付けられた窓を開け、風魔法で空気を入れ替え、<ストレージ>から黒の樹海で採取した消臭に適したハーブを取り出し誤魔化した。寝床を整え明日に備え横になる。食事は……我慢した。


 開拓村の実家暮らしでは、母さんかカレン姉さんが調理担当だったので、ほぼ自動的に毎食出てきたけれど、一人暮らしを始めるとなると自分で作らないといけないんだよな。こっちの世界でも食事処は有る様だけれど、何時でも好きな時に直ぐに手に入れられた前世のコンビニや二十四時間スーパー、牛丼屋が懐かしい。


 私の居る地域、開拓村からノーセロの街は、日本の東北ぐらいの緯度に位置する様で、結構、冬場は雪が降り積もる。それに厳しい寒さが加わる。それを考えると今の時期、宿に泊まれたのはよかったのかもしれない。機転を利かせ鳥を買い取ってくれた門番の青年に感謝である。お金って大事だね。私は中身は男でオタク且つ、還暦過ぎの爺なので男に惚れるような事はしたくないのだが、好感が持てるのは確かなので、今度会ったらお礼をしようと思った。




 寒さで目を覚ます。あれこれ考えていると知らない間に寝ていた様だ。多少、寝過ごしていたけれど最終チェックアウト時間よりは少し早い辺りだ。出掛ける準備と身嗜みだしなみを整え、忘れ物が無いか確認する。部屋の鍵をフロントの、今朝の担当は若いお姉さんだった様で、彼女に鍵を返却して<新緑屋>を出る。一晩明け、改めて冒険者ギルドの登録を目指し昨日の門まで歩いていく。


 門の前には昨日と同じ様に列が出来ていた。朝のラッシュなのか出入りする人の数が多く、統一された制服を着た門番達が一人一人に応対しながら捌いていた。私の順番がやってくる。担当したのは昨日に続き、あの好青年でにこやかに応対してくれた。


「やぁ、昨日はよく眠れたかな? あの後、帰ってからホロホロ鳥頂いたけど美味しかったよ。ご馳走様」

「へぇー、このが昨日の鳥の。色々と、将来有望そうじゃん。今度、俺にも一羽売ってくれないかな、お駄賃弾むよ」


 青年が話し掛けてくると、他の列を整理していたもう一人の同じ制服を着た軽薄そうな男が手隙てすきになったのか、私をイロの混じった眼鏡で舐め回す様に見ながら、買取以外も含むニュアンスの言葉を吐きながら口を挟んでくる。誰だよ、お前? ……なんか嫌な感じの視線だ。


 ……って、あっ、この目!! もしかして、昔の私と同じなのか。……そうか、前世の自分はこんな感じで少女達を見ていたのか。結構不快な上、当事者になってみると視線の動きがいやらしく、よく判るもんだ。


 私は殆どを二次元限定にして、三次元に関しては言葉すら掛けず離れた所から観察していた分、ここまで酷かったとは思いたく無いけれど、大変遺憾ながら同類の臭いがする。過去の自分は猛省せねばなるまい。そして、今の私は十年ぐらい女性体で過ごしているので、そのくびきから時効扱いも含め、解き放たれているので問題は無い、と思いたい。


 遠い目をして自分の黒歴史を追想していると、それをいぶかしげな視線と見た様で、応対してくれた好青年がそいつの名前を出さずに、「ただ同僚だ」とだけ紹介してくれた。続けて「こいつの事は気にしなくていい」と言っていた。それに対し同僚の男はブチブチと文句を垂れていたけれど、視線は私から離していなかった。将来的な事をかんがみて、何処とは言わないけれど、焼いていいかな?


 不穏な精神状態におちいりそうになったので、さっさとこの場から立ち去る事にした。軽薄そうな門番の男は無視して、好青年に昨日のお礼を改めて言い、冒険者ギルドの場所を教えて貰って、入城料五ダラーを差し出して門を抜け、城壁内へ進む。


 城壁の中は道幅広く整然と区画整理されており門の外、壁外へきがいとは違って屋台村もなく、洒落しゃれた感じの食事処を始め、今は扉を閉めている飲み屋っぽい建物、食料品や日用雑貨、アクセサリーや小物、靴の専門店、ファンタジーな異世界に相応ふさわしい武器や防具を取り扱う店、等々の様々な商店が軒を並べている。


 朝方の所為もあるのか、人々の往来激しく、店頭、軒先に商品を並べる店員等があわただしく動き回っている。その日その日で出店位置が入れ替わる無秩序っぽい壁外とはまたひと味違った感じの活気に溢れ、昔のアーケード商店街っぽい、まさに街の中心部と言った様相をていしていた。開拓村では見られなかった大量の人達。前世以来、こちらに来て初めて見た大量の人達である。


 流れる人の波に乗り中心部に向かって歩く。ゆるやかな傾斜を持つ道は遠くまで続き、その先に広場らしき物も見えてきた。門番の青年が教えてくれた場所、冒険者ギルドがそこに有るらしい。


 同じ方向へ進む老若男女の姿。着の身着のままな感じの子供。作業着っぽい服装をしている者。細い体型をした者。ガッチリとした体型の者。大きな杖を抱えローブで身を包む者。様々な武器を片手に、或いは背負い防具で身を固めている者。一人で歩く者。仲間とるんで歩く者。様々だ。聞いた場所を間違っていなければ、みんな冒険者ギルドの方へ向かっているのだと思う。


 いよいよ、異世界の冒険者ギルドデビューである。はやる気持ちの為か、自然と歩むスピードも早くなってしまう。まるで前世のイベント会場へ向かう時の高揚した気持ちみたいだ。その所為か、知らずにオタクスキルの早歩きを発動してしまっていた模様。


 思わずハッとして立ち止まり苦笑い。落ち着いていこう。

2020/12/20 以下の文章を修正しました。


修正前

「私の居る地域、開拓村からノーセロの街は、東京ぐらいの緯度に位置するのか冬場でもあまり雪は降らないけれど、それでも寒さは厳しい。」

修正後

「私の居る地域、開拓村からノーセロの街は、日本の東北ぐらいの緯度に位置する様で、結構、冬場は雪が降り積もる。それに厳しい寒さが加わる。」


読んで頂き有り難うございます。

我が妄想。更新は気分的に、マイペースに、です。

構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので面白く読めるかは判りません。

120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。

読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。

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