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散文の後/南風  作者: 新辺守久/小珠久武
第〇三幕 塩買う者
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第〇一八話

 今の時刻は判らない。太陽の加減から夕方ぐらいだと思う。陽が沈むと門が閉じられるかもしれない。事実、私を最後尾にして後ろには誰も並んでいない。そんな状況でも、折角ここまで来たのだから、ノーセロの街の中心部に向かう門の前で行列に並び順番待ちをしている。


 こうして並んでいると前世の記憶が蘇ってくる。オタクの祭典、夏と冬に開催される例のイベント。何度も参加した事があったけれど、こうやって行列に並ぶと最後尾の看板を持ちたくなるのは悲しい習性かもしれない。しかも自分の順番が来た途端、サークル主が「配布物が無くなりましたーっ、完売でーす!」なんて事もよくあった。あの絶望感。


 現在、私の前方に並んでいる、物がパンパンに詰まった感じの大きなリュックを背負った顔のテカテカしたおっさん達を見ると、益々そんな雰囲気を感じてしまう。今回も自分の手前で時間切れになり門が閉じられるんじゃないかと、内心ヤキモキしながら並んでいたりする。


 目の前に居るおっさん二人の話し声が大きく会話が耳に入ってくる。如何やら二人は別々から来た行商人らしく互いに情報交換している様だった。


 開拓村で盗賊の残党が壊滅した話、ノーセロの街に他の領主様が来ている話、まだしばらくは騎士団による警戒態勢が続くらしい、等々。最近のここら界隈の噂や出来事、そんな内容だった。


 思ったよりも早く行列は消化されていき、目の前に居た行商人達も何かを提示して門の中へと入っていった。そして最後尾、私の順番になった。人当たりの良さそうな制服姿の青年が応対する様で、優しく話し掛けてくる。


「今日は、君で最後っぽいね。中に入るには一律五ダラーの入城料が必要だけど……っと、その顔は知らなかった様だね。この街に来たのは初めてかい?」

「はい、すみません。最近、親を亡くして。収入を得る為にギルド登録をしたいと思いまして。私ぐらいの年齢でも登録できるんですよね?」


 嘘は言っていない。私の言葉を聞いて制服の青年はまゆの両端を八の字の様に下げて困った様な仕草で顎の下に指を当て思案顔になった。


「うーん、ギルドには十歳から登録が出来るけれど、色々種類があるからねぇ。その手に持った弓からすると冒険者ギルドなんだよね? ただ、ギルドに登録するのも有料だからねぇ」

「村だと物々交換で大丈夫だったんですが、ここだとやっぱり厳しいですか?」

「一応、街では貨幣取引が主流だからね。身元保証が有れば、こちらでお金の立替も出来るんだけれど……今の君の様子だと無理、だよねぇ」

「……そうですね。身元保証も何も私一人なので。……如何にかならないですかね?」

「街の外縁部に在る屋台村の市で場所を借りて物品の売買をして、お金を得る方法もあるけれど。確か場所代も売り上げ次第だった筈だし。……そうだ、今、何か売れる物とか有るかい?」


 その言葉を聞いて<ストレージ>のホーンラビットやホロホロ鳥を売れるんじゃないかと思い至った。実際に黒の樹海に出て狩りをして獲物を得てもいいし特に出品物に問題は無さそうな気がした。最悪、川原から適当に石を拾ってきて売るのも有りかな。……って、思いっきり無能の人だわ。


「川原の石……じゃなく、黒の樹海で獣の狩りをしてくれば何とかなりそうです」

「あ、ごめん、ごめん。言葉が足りなかったね。今、持っている物で売れそうな物は有るのかい? 物によっては、今、私が買い取る事もやぶさかではないよ、と言いたかったんだ」

「えっ、そうゆー事だったんですか!? で、でしたら……これを」


 そう言って、矢の入った背負いリュックを抱え直し、中に手を突っ込む素振りを見せながら<ストレージ>からホロホロ鳥を取り出した。


「今朝、樹海で獲ったヤツで血抜きまでしていますよ」


 と言う事にする。<ストレージ>内は時間が止まっているので、血抜き以降の劣化はしていない筈。そして制服の青年は鳥を見て凄く驚いた顔をしていた。


「ほ、ホロホロ鳥、だね。もしかして君、凄く腕がいい? この鳥って声は聞こえるけれど、姿を余り見せないから狩るのが大変な筈なんだけど。そのクセ美味しいんだよなぁ」

「そう、なんですか!? たまたま木の枝に止まってるのを見つけて獲ったんですが、運がよかったんですよ、きっと」


 そんな鳥だったとは、自分でも驚いてしまった。獲れたのは運がよかったからにする。下手に<気配探知>と魔法使用で簡単に獲れるなんて言ったら大変な事になりそうだ。……どおりで父さんやアルタ兄さんが褒めてくれた訳だ。


「この鳥でこの大きさなら……そうだな、ちょっと待てて」


 そう言って詰め所の方に走って行き、少しして手に袋を持って戻ってきた。中から何かを取り出す。そして私に手を出してと言ってきたので、素直に差し出したら少し大きめの、五百円硬貨ぐらいの硝子ガラス製のおはじきを七個、十円硬貨ぐらいの何かの模様の付いた瀬戸物を五個、手の平の上に置いた。なんだろうと思って制服の青年に目を向けると、彼はにこやかに言った。


「珍しい鳥だからね、色も付けて七十五ダラーで買い取るよ。如何かな?」


 如何かな? も何も、手に置かれた硝子製のお弾きに小さな円形の瀬戸物……陶磁器へ視線を落とし思わずじっと見てしまった。そして、玩具おもちゃのお金かよ! って心の中で盛大にツッコンでしまった。


 門番の制服を青年は、相場が幾らするか判らないけれど、玩具の様な現金でホロホロ鳥を買い取ってくれた。お陰で入城料をまかなう事が出来る。


 ただ、その後、「今からだと冒険者ギルドの受付窓口は就業時間で終わるから明日の朝に改めて行く方がいいよ」なんて教えてくれた。更にこの街道を少し戻った所に素泊まり出来る宿も教えてくれた。至れり尽くせりの好青年である。


 彼の助言に従い、教えて貰った宿へ行き、素泊まりの部屋、二十ダラーで借りて一晩過ごす事になった。お金の価値観がイマイチ把握出来ないけれど、多分安いのだろう。ちなみにお弾きを二枚出したら普通に応対された。本当に流通している硬貨だった模様。異世界凄いな。取り合えず、宿も確保出来たので、朝一で再び門に行き、冒険者ギルドに向かおうと気持ちを新たにした。

読んで頂き有り難うございます。

我が妄想。更新は気分的に、マイペースに、です。

構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので面白く読めるかは判りません。

120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。

読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。

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