第〇一七話
白っぽい砂利が敷き詰められた街道は、開拓村から流れている川に沿って、太陽の感じからすると南の方へ続いている。黒の樹海とは違いある程度見晴らしもよく、所々にぽつぽつと木々が生い茂る林や森っぽい固まりが存在し、街道の遥か先には隣村らしき集落が見える。
左手に小川、右手に林や森が見える草原、その少し向こうに鬱蒼と生い茂る黒の樹海を望み、前方に遠くに見える集落へ向かってテクテクと歩いて進む。視界がいいので平坦だと思っていたけれど街道は地味にアップダウンしていた。
樹海と違って視界が開けている所為なのか、遠くに目印となる集落が見えている所為なのか、結構な時間を掛けて歩いた筈なのに全然近づいた気がせず距離を感じてしまう。それでも初めての遠出なので苦痛とは思わない。
やがて左手を流れていた小川が大きい川に合流した。この川の支流だったらしい。本流の川へ合流する手前で木製の橋が掛かり街道は東西に伸びていた。ノーセロの街を目指しているので当然右側の方、西の方へ進路を取る。そして漸くずーっと目に見えていた隣村だと思われる集落の外れに辿り着いた。
集落は開拓村の一,五倍ぐらいの規模で見える範囲では木の柵に囲われている様だった。外観から街道沿いに発達して幾つかの支道が横に伸びている感じがした。入り口に二人の見張りっぽい若い兄さん達が椅子に座って雑談していた様だけれど、私の姿に気が付いて立ち上がり近づいてきた。
「やぁ、こんにちわ、お嬢ちゃん。何処から来たのかな?」
「あ、はい、こんにちわ。向こうから街道沿いに進んできたんですが何か有ったんですか?」
「東の方って言うと……フノヌツイ村かな? 情報がまだ届いていなかったのかな?」
身バレをしたくないので開拓村から来たのを濁す様に後ろの方を指差して向こうから来ましたって話したら良い様に勘違いしてくれた。ふと前世の「消防署の方から来ました」と言って消火器の押し売りする詐欺の話を思い出してしまった。勘違いしてくれた兄さん達の話は続く。
「実はね、少し前に北の開拓村が盗賊に襲われてね、全員が捕まったらしいんだけれど、まだ危険かもしれないんだ。一人で大丈夫だった?」
「先日、騎士団の人達が盗賊達を連行していったんだけど、誰が盗賊達を返り討ちにしたのか判らないらしくてね」
「盗賊達は赤い目をした悪魔とか、魔法使いだとか言っていたらしいけれど、騎士団の人達は悪魔や稀少な魔法使いが辺鄙な田舎に居る訳ないだろうって笑っていたけどね」
「大方、分け前で揉めて同士討ちしたんだろうって。見せしめで股間焼かれたのも居たらしいし……おー、想像するだけでやだやだ」
「まったく男として勘弁願いたいわ」
「そ、そうなんですか?」
そんな世間話をして最後に二人から村の中で悪さをしなければ勝手に通って良いよって通行許可を貰った。十歳ぐらいの少女だと警戒心も湧かないのかもしれない。内心期待していた「ようこそ、ここは何処其処村です」なんて言葉は掛けて貰えなかったのが心残りだった。この村の名前は旅人じゃない限り、ここら界隈では知ってて当たり前の情報なのだろう。ちなみに村の名前はトドメキ村で随分前に家族の誰かから聞いた記憶がある。
村内は日中にも関わらず静かで、仕事で村の外に出ているのか、家の中に引き篭もっているのか、彼等以外の村人には会う事も無く村の反対側、西に出る事が出来た。そこには別の若者が二人、椅子に座って見張りをしていて、私が「ご苦労様です」と言って通り抜けると「気を付けて行けよ」と声を掛けられた。続けて「誰だっけ?」「さぁ? ミハエルんとこのじゃね?」なんて会話が聞こえた。村を出るよりも入る方が警戒されるんだと思った。
再び街道を西に向けて歩き始める。相変わらず左手に幅の広がった川が流れ、右手には林と森が点在し離れた所に黒の樹海が見えている。徒歩二,三時間の間隔で幾つかの集落を通り抜け、途中、昨日焼いた串焼きをストレージから取り出して小腹を満たしつつ、たまに水分補給して、陽が沈みかけの辺りで、これまで抜けてきた村よりも建物が密集し、何倍も拡大した規模の集落、街を一望できる場所へと到着した。多分、あれがノーセロの街だ。一日掛けて漸く無事に辿り着けた。
ここまで来ると街道が合流してくるのか、目的地がノーセロの街なのか旅人や行商人等、一緒の方向に進む人達も目に付いてくる。逆に街の方から空の荷車を引くお姉さんや小母ちゃんともすれ違ったりもした。近隣の村の人なのか野菜等を売りに来ていたのかもしれない。
ふと前世の仕事場でお世話になった、当時、年齢的にダブルスコアのお師匠に当たる人が昭和の中期頃、キャリーカートやリュックに野菜を詰めて千葉や埼玉から電車に乗って東京に売りに来ていた小母ちゃん達が居て、それが元祖キャリアウーマンなんだって嘯いていたのを思い出した。その話を聞いた所為で、それ以降、経験を積んで上を目指す女性達は強かで男顔負けの逞しい女性達に脳内変換されるようになった。
……話が逸れた、街までラストスパートを掛ける。街道に沿って街の中心部へ向かうと、外縁部付近は建物と畑、雑木林を間に交え閑散としているけれど、内へ向かうに従い他の街道と合流、或いは小道が幾つも枝分かれしていき、その都度建物も密集しいく。民家や色々な商店、食事処、宿場等が並び場所によっては簡易テントで出来た市っぽい屋台村の様な場所まで存在していた。
その混沌とした建物群の影に突如として石組みの壁と門が現れる。そこから街の中心部になる様だ。門番である守衛さんが立っていて、手分けしながら出入りする人達を一人一人チェックしている。中心部に役所関係の施設が有りそうだ。当然、なんちゃらギルドが有ると思い、無くても場所を聞くつもりで、行列の最後尾へと並んだ。
読んで頂き有り難うございます。
我が妄想。更新は気分的に、マイペースに、です。
構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので面白く読めるかは判りません。
120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。
読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。