第〇一五話
死神のお手伝いってなんだろう? と疑問符を浮かべていたら死神のエンヤさんが内容に付いて補足してくれた。
「我々の取り溢した魂。災害や疫病、戦などの死者数が多過ぎて回収に時間が掛かった時、現着が遅れたその間に別の者へ憑依した魂や悪霊怨霊化した魂の回収の手伝い、ですかね」
「ですかね。って、回収のお手伝いって、それって死神の業務で私に出来る仕事じゃ無いですよね!」
今回の盗賊に因る開拓村の襲撃でも大量の死者が出る予定だったので増援のお願いされたって話していたし、一遍に大量の死者が出ると対応に苦慮するのかもしれない。けれど私に魂の取り扱いなんて出来る訳がない。
「厳密には物に宿った魂やゾンビなんかの肉体から魂をガツーンと引き剥がす簡単なお仕事ですよ」
「……簡単そうに言ってるけれど、全然簡単そうじゃない」
「我々死神は剥き出しの魂に干渉は出来るけれど、物に宿った魂や肉体に逃げ込まれた魂には直接関与出来ないんです。なので宿主から追い出して貰うまでがお手伝いです」
「……ならば銃器等の武器弾薬を要求する。あと、日本刀。十字架、聖水、ニンニク。塩に砂糖、胡椒などの調味料も追加でお願いします」
「調子に乗って何適当な事を言ってんですか。それに全然関係ない調味料とか要求しちゃってもダメですよ。そも、銃器類なんてこっちの世界にそんな物は存在しないので、無理な話ですわ」
腰の左右に両腕を当て呆れた顔をしているエンヤさん。私の切なるチートな要求は駄目だった模様。使えんな。なら、自分が得意としている方法でヤるしかない様だ。と言う事は物理攻撃より魔法攻撃だよね。
「手段は、魔法攻撃でも大丈夫なんですかね?」
「物理でも魔法でも宿主から追い出せれ問題は無いです」
「ふーん。ところで死神が手を出せないって現状の姿は幻みたいなもんで物質的に影響を及ぼせないって認識でいいのかな?」
「そうですね。我々は精神霊体なので現実物質では触れる事すら無理だと思いますけど、試してみます?」
触れられるものなら触れてみろ。みたいな挑戦的な笑みを浮かべて薄い胸を張っている。そんな顔を見たら乗らない訳には行かないだろう!
私自身、エンヤさんのその自信満々な姿からスカッと空振りするだろうなって予想して何気なく右手を伸ばした。ところが、それとは裏腹に仄かに弾力のある感触が指先に届いた。
「……あれ?」
「……っ!?」
なんか普通に触れる事が出来て、思わず上から確かめる様に胸の部分を擦ってしまう。身体が薄い所為なのか服の上からなのか、それ程柔らかさを感じられず、むしろ硬い感じがした。……揉めない。その瞬間、エンヤさんは驚愕した顔をしながら両手で胸の部分を押さえ後退りする。
「な、な、なんで胸に触れらるんですか!!」
「ご、ごめん。まさか触れるとは……」
「あ、ありえない! これは、事故っ! 事故なんです、今すぐに忘れてください!!」
エンヤさんは顔を真っ赤にして、ありえないとか事故とか連呼しているけれど、何故、触れるのかと私に言われても普通に触れられちゃったのだから仕方が無い。私自身、現状は女性体なので問題無いような気もする。ただ彼女は私の前世を事を知っているのでそうも言ってられないのだろう。
忘れろと言われても今しがたの出来事だ。自分の右手に視線を落とす。胸の表面を擦った感触を思い出す。正直、自分の身体の方が柔らかい気がした。
「カノンさん。私は忘れろ下さいと言ってるのです。それになんか失礼な事を考えていませんか?」
ちっ、勘のいい死神の姉ちゃんだな。自分で挑発しておいて触れたら逆ギレしてジト目でこっち見てるよ。と、まぁ、精神的レクリエーションはここまでにして話の続きをしますか。強引な話題転換とも言う。
「エンヤさんに触れられるって事は、エンヤさんも直接攻撃が出来るんじゃないですかね?」
「……そんなの無理ですよ、ほらぁ」
うおっ、マジかっ!? エンヤさんの身体がテーブルにめり込んでいる!! テーブルを物ともせず歩いてる。これ壁抜けも普通に出来るんじゃ……って、抜けてるよ。顔だけ出してこっち見てる。なんかトリック映像を見てるみたいで気持ち悪い。
「どうやら私に触れられたカノンさんは特別な様ですね」
「い、痛い、痛いっ!」
壁抜けから私の前に戻ってきて、さっきの仕返しとばかりに私の頬を抓る。何とか振り切り涙目になりながら頬に手をあてエンヤさんを睨んだけれど、彼女は凄くいい顔をしていた。
「実際にお手伝いして欲しいってのは本当ですが、まだ先の話になると思いますよ」
「……生産系チートは遠いのね」
「とりあえずお金稼いで食料を得るのを優先すればいいじゃない」
「……そういえば三日ぐらい食べていない、お腹空いた」
長椅子からもそもそと身体を起こし行動を始める。ご飯の準備と言ってもホーンラビットとホロホロ鳥の解体をして、それ捌いて焼いて食べるだけなのだが。
秘密基地のログハウスを出て、湖の畔まで降りてストレージからホーンラビットを取り出す。狩りの成果を認められて父さんから貰ったナイフを使って血抜きをして解体を始める。ナイフを使いながら父さんの形見として大事にしよう思った。
解体して何時も思うけど内臓の臭いがキツイ。前世のスーパー等で売ってる肉なんてホント肉だけだったから臭いしないのに。恵まれていたんだね。
「カノンさんは解体出来たんですか?」
「以前カレン姉さんに教えて貰いました。ホーンラビットとホロホロ鳥だけど。……エンヤさんも食べます?」
「私は食べられないし、遠慮しておきます」
「……ですよねぇ。一応聞いてみました」
経験不足の所為か剥いだ毛皮はボロボロになってしまった。取り出した内臓と一緒に少し離れた場所に土魔法で穴を掘って無駄にしてごめんなさいしながら埋めた。
形見のナイフで木の枝を串状に整えて捌いた肉を突き刺す。火魔法を種火にして焚き火を始める。回りに串肉を配置して焼けるのを待つ。
前世から自分で作る御飯は不味かったので、腐ってなければいいやぐらいの感覚で、焼けた頃合をみて肉に齧り付く。三日ぶりに口に入れた食べ物、肉は素材の味そのままで美味かったけれど、せめて塩が欲しいと思った。
明日、エンヤさんの話に乗って街に向かってみよう。ギルド登録出来ればいいなぁ。
読んで頂き有り難うございます。
我が妄想。更新は気分的に、マイペースです。
構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので面白く読めるかは判りません。
120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。
読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。