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散文の後/南風  作者: 新辺守久/小珠久武
第〇三幕 塩買う者
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第〇一四話

 消えたいと思っても出来る訳も無く。手段を模索する伝手つてが有る訳でもなく、気が付いたら何時もの場所へ知らない内にやって来ていた。


 ここは湖のほとりにある私の造った秘密基地。建物は整備したけれど調度品の類なんて全く無い中身のすっからかんな木組みのログハウス。まさに今の自分を的確に表している場所だと思う。


 以前、彼の死神とお茶をした部屋の片隅に置いてあった木で素組すぐみしただけの長椅子。この数日間、私は水飲みとトイレに立った以外はずーっとこうして横になって寝ている。固い板場なので身体中の彼方此方あちこちが痛い。三日間、食事を取らずに水だけで過ごしていると流石にお腹も空いてくる。


 何時もは日帰りで整備していたけれど、初めてこの秘密基地に泊まった。そのわりに寂しくは無かった。


「で、貴女あなたは何時までここで不貞寝ふてねしているのですか?」


 全身が黒で統一された色合いで丸い形の帽子、丸い眼鏡、髪はお下げにして後ろでまとめ、身体のラインに合った喪服のドレスをまとった女性。今晩も死神のエンヤさんが来ていた。


 ここに逃げ込んで直ぐに、エンヤさんが私の様子を見に来てくれた。もとい、毎晩やって来ては朝方近くなると帰っていった。憤懣遣ふんまんや方無かたない文句を散々言って。曰く―――――、


「折角、再研修明けでようやく通常業務にけたと思ったら貴女あなたが絡んでいた案件だったんですね」

「しかも死者の予定数が大幅に増えるかもって言われて来てみれば、逆に減ってるって。応援で駆り出されたのに私の仕事が全然無いじゃないですか!!」

「挙句の果て、あの厭味いやみったらしい上司に貴女あなたの面倒を押し付けられて、様子を見に来てみれば昼の日中ひなかから優雅に昼寝を繰り返してるって何様のつもりですか!!」


 等々の小言をくし立てていた。エンヤさんが夜の間ずーっと独演会を開いているから寝られず、仕方が無いから昼に寝てるんじゃないか。と文句を言いたくなるが止めておく。


 そんな彼女は、二日目から自分の謹慎中に提出を求められた無意味なレポートの鬱憤うっぷんらしに言葉を吐き散らかし、再研修中の担当官の愚痴を延々と垂れ流した。そのお陰なのか私の塞ぎ込んでいた気持ちが少し持ち直した。エンヤさんは狙ってやったのだろうか?


 それだけじゃなく、エンヤさんから村のその後、盗賊撃退後の話も聞かされた。


 村中で何人もの人間が亡くなり、その家族親族は悲しみに暮れ、亡くなった村人の合同葬儀と火葬が行い、みんな少しずつ前へ歩く努力をしている。


 村を襲った盗賊達は戦闘不能におちいったあの時、動けた村人達が縛っていったらしい。全員お縄になって騎士団へ引き渡され、彼等は戦奴隷に落ちになるそうだ。引き取った騎士団の連中が股間を焼かれた男達を見て戦々恐々していたらしい。


 如何やら母さんが怪我をした村人全員に自分の処方した薬剤を分け与えたようだ。それを見ていた騎士団にわれ、渋々と最低限の薬剤を分け与えたとの事。盗賊を街まで引き立てる時に自分で歩かせる為なのだそうだ。


 股間を焼かれた者達にこっそり強力な精力剤を処方する極悪な事をしてたそうだけれど。焼けただれた場所を興奮させるとどうなるか。私は前世が男だったので想像しただけで身が縮む思いをした。父さんとアルタ兄さんを殺され、自分が殺されそうになって許せなかったんだろう。静かだが激しい怒りを感じる。


 民家で嬲られていた女性達や幼い娘は保護されたけれど、心に深い傷を負い暗闇におびえ、男性を見ると泣き叫び、気を失う場合もあったそうだけれど、一時よりはちょっとマシになってきてるそうだ。


 村は三日前の盗賊襲撃時の混乱から幾分か持ち直し、少しづつ平静を取り戻してきているらしい。唯一つ、盗賊達を撃退したカノンの行方が判らなくなった事を除いて。


 噂としてはカノンが赤い目の悪魔になって消えたとか、盗賊の生き残りに拉致されたとか、怪人赤マントに攫われたとか。それ、なんて昭和の都市伝説? みたい具合だった。母さんや姉さん達が色々と村の人達に聞かれていたらしいけれど、何も語らなかったそうだ。


 そんな事と露とも知らず、何も考えられず、逃げる様に湖のほとりにある秘密基地にきて三日程過ごしたけれど、……今更どんな顔して戻れというのだ。


「好きに生きればいいじゃない」


 エンヤさんの有り難いお言葉だ。かと言って自分に出来るのって魔法を使って狩りをするぐらい?あと母さんから教えて貰った、限定的な薬剤作りぐらいか。


「でも、先立つモノも無いんだよなぁ」


 チラ、チラっとエンヤさんの方へ視線を送ったけれど、彼女はスマホに目を落とし指で画面をいじっていた。そしておもむろにその指が止まる。何かを見つけた様でこちらに視線を向けきた。


「んー、ここから西の方にあるノーセロの街に出てなんちゃらギルドに登録すればいいじゃない? 手に職が無くても大丈夫、初心者歓迎。年齢も十歳から可能だって。手っ取り早くお金を稼ぐのにいいらしいよ?」


 なんて言葉を返してきた。


「あれ? ちょっと待って、今そのスマホでこの世界の情報を引っ張ってきた? つか、検索なんて出来るの?」


 なんて聞いたら死神専用通信機器だからこそ、って薄い胸を張ってふんぞり返って言っていた。ついでに言えば地球の情報も検索して引っ張ってこれるらしい。って事はだよ?


 私が転生してほぼ十年ぐらい経った。そのぐらい時間が経てば向こうの記憶なんて余程印象的じゃないとうろ覚えに近い状態になってるし、元々生産関係の知識が壊滅的に無いのも承知している。


 けれども、だ。彼女に、エンヤさんにお願いして情報を引っ張って貰えれば色々と造れるんじゃね? 向こうの知識をフル活用し武器とか便利アイテム。食材は調味料を始め、味噌とか醤油とかマヨネーズとか、いや、その前に材料があるかどうか。……なんにしても夢が広がる。


 恥をしのんでお願いしてみたら、案外すんなりと了承してくれた。彼女の仕事一つを手伝ってくれたら一つ教えてあげる。って条件付だったけれど。「なんでもする」とすら言っていないのに「なんでもさせられそう」な悪寒がした。

読んで頂き有り難うございます。

我が妄想。更新は気分的に、マイペースに、です。

構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので面白く読めるかは判りません。

120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。

読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。


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