第〇一三話
2021,06,25
一部<ファイアボール>を<ファイアバレット>に訂正。
鑑定を使用して村人や盗賊のプロフィールにある最後の一文を読む。村人全員が最後に<開拓村の広場で盗賊の手で皆殺しにされる>表記が見られた。逆に盗賊達は<開拓村を襲う>までの表記しかなかった。私の周りに死の歪みが発生するなら今後の展開次第で表記が変わる筈だ。それに期待する。
我が身を心配して逃そうと叫んでくれた村の人達に感謝を。そんな人達を傷付け殺めた盗賊達には正義の鉄槌を。
「ありがとう、さよなら」
私は魔法を行使する。周囲に無数の鬼火が揺らめきながら現れた。一つ一つが渦巻き高温となって青白い光を放ちながら高圧縮されていく。改良版<ファイアボール>改め <ファイアバレット>。
「げっ、なんだありゃ!魔法か?!」
「何でこんな辺鄙な開拓村に魔法使いが居んだよ!」
「はははっ、お子様らしい豆粒みたいな<ファイアボール>じゃないか!」
「だ、だが詠唱すらしてねぇぞ、本当に<ファイアボール>なのか?」
盗賊達が魔法だ、ファイアボールだ、と騒ぎ立てている姿を余所に、その場に一纏めにされた村の人達は初めて魔法を見たのか言葉を失くしていた。
村人を剣で斬り付け非道な振る舞いをしていた盗賊に、私は右手の人差し指で狙いを定める。樹海の獣に対しては幾度も使った力を人に向けて使用した。青白い小さな炎はもの凄いスピードで直線的な軌跡を描いて盗賊の肩に突き刺さり、声すら上げる間もなく、弾かれた様にもんどり打って倒れた。
周りに居た盗賊達は肩を撃ち抜かれ吹っ飛んで倒れた仲間の姿を見て固まった。この隙を逃さず、間髪入れずに致命傷にならない場所に中てる事を意識して、残りの盗賊達に対して次々と人差し指で狙いを定め<ファイアバレット>をぶつけていく。戦闘らしい戦闘も無く、一瞬で広場に居た盗賊は行動不能に陥った。
盗賊達はみな痛々しげな呻き声を上げて倒れている。それ以外の音は無く辺りは静寂に包まれる。私は怪我をしてる村人が居ないか確認しようと声を掛けて近づこうとしたが、魔法という未知の力を行使した私に畏怖を覚えたのか何人か避ける様に後退りした。地味に凹んでしまう。
さっき声を掛けてくれた小父さんや小母さんも同様だった。思えば、家族である姉さん達ですらあの有様だったのだ。私は村の人達から拒絶を感じ話すのを諦めた。
盗賊の言葉で魔法使いは存在していると推測出来るが、村人の反応を見ると一般的じゃないのかもしれない。開拓村自体が田舎過ぎて情報伝達がよくない所為もあるかもしれないけれど。
目に見えて判る盗賊の暴力。
目に見えて理解不能の魔法の力。
どちらが恐怖に足る対象になるかか。当然後者だろう。
改めて鑑定を使用してみんなのプロフィールの最後の一文を確認する。村人全員が<カノンに助けられた>と表記されていた。盗賊達は<開拓村を襲うが返り討ちに遭った>の表記が追加されていた。死の定めが歪んで助かり、盗賊達の運命も変わった。
ただ、さっきは時間も無く気が付かなかったけれど盗賊達の何人かに心をザワ付かせる気になる一文を見つけた。<ブリタニア帝国の潜入工作員として煽動破壊活動云々>と表記されている箇所。……元々盗賊じゃないのか?
……考えていても仕方が無いか。それにまだ屋内で盛ってる盗賊達が残っている。この場の居た堪れない雰囲気、視線から逃げる様に残った盗賊の掃討を開始する事にした。
順番待ちなのか入り口で辺りを見張るように立っている男二人を先程を同じ様に<ファイアバレット>を使用して行動不能に陥れ、何食わぬ顔で屋内へ踏み込む。
男女の咽る様な体臭が充満する部屋の中で恍惚とした顔で卑下た笑みを浮かべる男達は女性達を玩具にしている。中には幼い娘もいて汚され壊れた人形の様になっていた。
私はその現場を見て嫌悪感を抱く。前世で同じ男の性だったけれど、五十歳童貞で女性に幻想を抱いて溺死してたけれど、今世の身体が女性体だからと言う訳でもない。こういうのを見せられると虫唾が走る。反吐も出る。
私が部屋の入り口に立っているのに気が付いた盗賊の一人がズボンを脱いだ状態で下半身露出したまま寄って来る。如何やら私を次の獲物と見定めたらしい。嫌悪感が先走り無意識のうちに<ファイアバレット>を発現させて男の醜い股間を焼いた。
股間を焼かれ声にならない悲鳴を上げて床を転げ悶絶している男の惨状に気が付いた他の男達は恐慌状態に陥り混乱の様相を呈した。混乱の原因たる私を排除しようと動いた者。私に対し口汚く罵声を浴びせる者。我先にこの場からにが出そうとした者。下半身を露出したまま自分はやっていないと言い訳をする者。漏れなくこの場にいる全員の股間を焼いた。淡々と焼いた。
加害者の盗賊全員を再起不能にしてその場に放置したまま玩具にされていた女性に近寄る。余程嫌な思いをしたのだろう。目の焦点が合わないまま虚ろな表情の女性、小さな声で溝に傷の入ったレコードの様に「助けて下さい、助けて下さい」と言葉を繰り返している女性。目も当てられない。中に居た女性達と幼い娘には水魔法を使ってを身体の汚れを洗い流し、クローゼットから羽織れるものを見つけだして掛けておいた。
再起不能の盗賊達。壊れかけの女性達。人形の様な幼い娘。私は何も出来なかった悔しさに歯を食い縛り、無力感に駆られ現場となった民家から逃げだした。
カレン姉さんにリアン義姉さん。村の人間に恐れられ、父さんや母さん、アルタ兄さんを始め、さっきの女性と幼い娘。誰も助けられず、何が正義の鉄槌を。だ。思い上がりも甚だしい。
……このまま何処かへ消えてしまいたい。
更新は気分的に、マイペースに、です。
我が妄想。読んで頂き有り難うございます。
構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので面白く読めるかは判りません。
120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。
読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。