第〇一一話
更新は気分的に、マイペースに、です。
我が妄想。……続きです。
目の前に武装した盗賊が数人立っている。戦力的に余裕があるからなのか、盗賊達は今後の展開を予想して女性陣の全身を舐め回す様な目付きをしながらニヤ付いて会話を続ける。
「さすがにこんな樹海近くの村なんて騎士達の目も届くまい」
「気付いて派遣してきたところで俺達は既にトンヅラした後だしな」
「ホント、情報通りだったな、こんな無防備な村もそうそうにないぜ」
全く同感だ。村の周りを獣対策で柵で囲っているぐらいで対人なんて想定していない。こんな簡単に侵入を許してしまう。マンパワーを畑の開墾、開拓に向けた弊害と言ってもいい。けれど、それで平穏に暮らせたのも事実だ。むしろ平和を脅かすお前達が異物だ。
そして、私自身に憤りを覚え嫌気が差す。盗賊達がこんな近くに来るまで気が付かないなんて、行商人の話を聞いて、それを鵜呑みにして村に居る時は安全だと思い込み気を抜き過ぎた。気配探知が生えたと思っていたけれど、使わなきゃ宝の持ち腐れじゃないか。
「俺とアルタで足止めする。村のあちこちで火の手が上がり始めてるからお前達は樹海内へ逃げろ。多分、そっちの方がまだ安全だ」
父さんとアルタ兄さんが素手のまま女性陣の前に立ち塞がるように身体を入れてくる。無謀過ぎる。
「僕と父さんで時間を稼ぐ四人は早く逃げろっ!」
「……そんな、アルタやだよ」
「ひぇへっへっ、俺達が逃がすと思ってるのかよ」
「ふっ、若造がいっぱしの騎士気取りかよ、ほぅら、よっと」
「ぐっ?!……か、はぁっ?!」
盗賊は持っていた剣を何気ない動作でアルタ兄さんの喉元に突き刺した。一瞬だった。盗賊の人を殺すのに躊躇しない太刀筋。続くように今度は明確な殺意を持った剣が父さんを二度三度と襲った。
父さんが歯を食い縛るような必死の形相でこちらに振り向き女性陣に対し逃げろと無言で促してくる。盗賊達との戦力差を実感しているのだろう。
力量としては父さんの方が上に見えるけれど、それは武器を持って一対一で対峙した時の話だ。盗賊数人に囲まれた状態で武器も持って居ない状況だと、あっと言う間に形勢は彼等へと傾いていく。
「ア、アルタぁ!アランっ!!」
「ぃっ、いや、いやぁあああっ!アルタっ!!アルタぁ!!」
「に、兄さんが!」
「……っ!!」
目の前で殺された息子の名前を、今も不利な戦いに身を置く父さんの名前を呼ぶ母さん。両手で顔を塞いで悲鳴を上げて泣き叫びながらアルタ兄さんの名前を呼ぶリアン義姉さん。突然の出来事にフリーズするカノン姉さん。
私は前触れも無く命を刈り取られたアルタ兄さんと、盗賊を相手にする父さん、三人の取り乱す姿を見ながらこの世界で初めて他人の死をも厭わない悪意を目の当たりにして動けずにいた。
「カーヤ、あとは頼んだ!お前等も早く行けえっ!!うおおおぉぉぉっ!!!」
「あ、アランっ?!カレン、リアンもっ!カノン早く!!」
盗賊達と対峙していた父さんは己を鼓舞するように雄叫びを上げ、私達を逃がす時間稼ぎの為に、玉砕覚悟で彼等へ向かっていった。それに答える様に、いち早く母さんが反応して二人に声を掛け、私の手を引き家の裏の樹海へ続く道へ駆け出した。
振り向くと何人かは私達を追い掛け始めていた。その向こう側で盗賊に囲まれた父さんが膝を付き崩れ落ちていく姿が見えた。いとも簡単に人の命が零れ落ちて往く。
そうしている内にも盗賊との距離がどんどん詰まってくる。私一人なら風魔法を背に受け逃げ切れる自身はある。けれど今は女性四人でただ走って逃げているだけだ。男性と女性の身体的に考えても追い付かれるのは時間の問題だろう。
当然の如く、樹海まであと一歩のところで盗賊が手を伸ばせば捕まえられる距離まで追いつかれた。
まずは一人を、と足の遅そうな私を捕まえ様と盗賊の手が延びてくる。それを阻止しようと母さんが私の腕にぐいっと力を入れ自分の方へ引っ張る。その最中、少し遅れてきた盗賊が剣を振り上げていた。その剣の軌跡は反動で私と位置が入れ替わった母さんの背中を斬り付けた。
「へっ、逃がすかよぉ」
「おいおい、商品に傷付けるなよ!」
「まだ若いのが三人いるじゃねぇか。年増一人ぐらい多少だろ」
「お前は何時もそうやって女子供を甚振るよな」
背中を斬り付けられ地面に倒れこんだ母さんを切っ掛けに私の足が止まる。続いて先行していたカレン姉さん、リアン義姉さんが盗賊達の言葉が聞こえたのか、後ろに居た私と母さんの状況に気が付いて走るのを止めた。倒れている母さんの背中には斜めの傷が入り激しく血が出ている。それを見て二人は呆然と立ち竦んでいる。
頭の中が真っ白になる。アルタ兄さんを始め、父さんが私達の身代わりになって盗賊から逃がし、今度は母さんが死に掛けている。私の考えは何処までも甘かった。伏線を与えられ、警戒して魔法を鍛え、弓を習い、黒の樹海の獣を狩って天狗になり、いざ急に、怒涛の如く身に降り掛かってくると何も出来ないでいる。自分が嫌になる。精神年齢が六十歳にもなって何をやっている?
「やっぱ人が傷付いたところを見せるとさ、恐怖心で大人しくなるのよねぇ」
「ホント、お前はいい趣味してるよ」
「いい子ちゃんぶったって、お前だって女共は犯して嬲って奴隷に落とすんだろ。俺と変らないじゃん」
「そうなんだがな、ははは」
直ぐ傍で会話している筈の盗賊の会話が遠くで聞こえる。思考停止していた脳が活性を始める。今更遅い。
「……お前等、五月蝿い消えろ」
既に手遅れだ。己に対する怒れる思考を以って、八つ当たり気味に盗賊達へ魔法を発動させた。二メートルの高さに及ぶガスバーナーの様な蒼白い色をした高温の炎柱が彼等を巻き込んで立ち上がる。
「な、なん……」
「ギャ……」
「ひっ、ぃいい……」
盗賊達は悲鳴を上げる間もなく炎柱に巻かれ絶命する。消し炭になってその場へ崩れ落ちた死体からは、髪の毛や肉を焦がした様な吐き気をもよおす不快な臭いが辺りに漂っていた。
鼻に付く臭いを我慢して倒れている母さんに近づく。血に塗れた衣服を肌から離す様に手で浮かせ内側から風魔法で切り裂いて、盗賊に斬られた背中を露わにする。水魔法を展開して背中の傷口を洗い流すと、苦痛に因る呻き声が聞こえてくる。まだ生きている。急いでストレージ内から以前作っておいた特急ポーションを取り出して傷口に振り撒くと、見る見る内に傷口は綺麗に塞がり流れ出た血の跡を残すだけになった。
無詠唱の魔法行使と特急ポーションに依る治療の様子を見て、カレン姉さんとリアン義姉さんは驚きの為か、それとも信じられないモノを見た為なのか、黒焦げになった盗賊の死体と、治療が施された母さんと、それを行った私へ交互に視線を彷徨わせている。二人の揺れ動く瞳からは私に対する、畏怖の感情が見て取れた。
読んで頂き有り難うございます。
構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので面白く読めるかは判りません。
120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。
読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。