第〇一〇話
更新は気分的に、マイペースに、です。
我が妄想。……続きです。
実りの秋。村の者達が総出で開拓した畑の収穫を行った。今年も何とか余裕が出そうな収穫量だった。そろそろ男爵様に納める税の話も出てきているそうだ。
我が家の食事事情としては硬いパンと幾つかの切った野菜、捏ねた芋の塊、豆のスープが主流で、質素を旨として生活している。のでは無く、開拓村の家庭全般がこんな感じである。なので合間を見て、食べ盛りな村の若い男達は肉を求め樹海へ入って狩をしているのである。
ご多分に漏れずウチの父さんとアルタ兄さんも樹海内へ冬を越す為に体内へ栄養を蓄えた獲物を求め狩りに出るのだが、今年からは私も一緒に同行していた。その時は二人が獲物に気が付く前に、私が弓で風魔法を付与した矢を射って速攻で標的を仕留める見敵必殺を実行してしまった。
それを何度か繰り返したら、二人から「カノンは狩人の適正が有ったのか、女の子なのが勿体無い」「僕達が付き添わなくても上手に狩りが出来るんだなぁ」と感心していた。私としては人前で狩りをするのが初めてだったので、ついつい力が入ってしまった模様。
狩った獲物は余らない限りは家で消費しているけれど、食卓に肉類が並ぶと母さんやカレン姉さんは機嫌がよかったし、兄さんの奥さん、リアン義姉さんも「実家の食事事情よりもいい」なんて言って喜んでいた。
以前の、ホーンラビットの一件から、私が森でキノコや薬草採集の途中で獲ってきた。事にして、たまに少しづつストレージ内から放出していたのだけれど、出す量を増やすいい言い訳が出来たと細く笑んでいた。
そんな訳で我が家では今夜もホーンラビットやホロホロ鳥が晩御飯の食卓に並び収穫の秋、食欲の秋を髣髴させる豪華な感じになっていた。調味料は塩のみの薄い味付けで質素だけれど量だけは食べられるので不満は無い。
ここで知識チートとか有ればよかったんだけれど、前世の私は消費型オタクで物が手元にあれば満足するタイプだった。なので、それが何で出来ているか等にあまり興味を持っていなかった。
食事にも言える事で、日本では何も考えずにスーパーやコンビニで簡単に調味料が手に入るし、当然何が使われているか材料チェックなんてする筈も無い。スーパーのお惣菜やコンビニ弁当、最悪外食、ファミレスや牛丼で手軽に済ませられるので、殆ど自炊なんてしなかった。一応、米は炊けたけたど、電子ジャーだったからねぇ。
こっちの世界に私の欲する食料が在るかは、開拓村から他の街などに出た事すらないので不明。たまに故郷、日本の食事を思い出す事もあるけれど現状ではあまり期待はしていない。まさか異世界転生すると微塵も考えてなかった。今から思えばそっち方面の知識を仕入れておけばと悔やまれる事この上ない。
そうそう、秘密基地には土魔法の練習の一環として畑っぽいものを造った。農作物を植えていないけれど来年辺りから作物を育てようかと考えている。後でこっそり開拓村から種を持ってきて撒いてみようと思ってる。
秋の収穫も一通り終わり、来年に向けて畑の手入れをしながら、冬に向けて備え始めている。広葉樹の葉が燃えるように赤く色付き落葉が始まる頃、開拓村を吹き抜ける風も徐々に冷たくなってきた感じがする季節。
その日の晩も何時もの様に家族で食卓を囲み団欒して、食後の一服を終えるとアルタ兄さんとリアン義姉さんが自分の新居へ帰った。居間に両親と姉さんを残し、私は最近宛がわれたアルタ兄さんの部屋、自分の寝室へ向かおうとしていた。
兄夫婦が出て行って間もなく、激しく家の扉が叩かれ、私を含め居間にいたみんなが家の玄関入り口に注目する。父さんが身構えながら扉を開けると、そこには自分の新居に戻った筈のアルタ兄さんとリアン義姉さんが慌てた様子で立っていた。そして叫ぶようにアルタ兄さんが口を開く。
「と、父さん、火事だっ!村の、村の向こう側、コーベットさんの家の辺りが燃えている!!」
その言葉を聞くと居間に居た全員が扉の外へ出る。辺境に在る開拓村に街灯なんて上等なものは存在しない。夜になり冷えた空気はとても澄んでいて空には満天の星空が広がっていた。樹海の暗闇が地上と星明りで満たされた空の境目を切り取るように真っ黒に染めている。
暗闇に購う様に一点の光が見える。開拓村の外れに在る民家が燃え盛っていた。立ち上がる煙の厚さとそれに映し出される赤い炎が火事の激しさを物語っていた。
開拓村の中央部、村長さんの家の周りでも異変に気が付いたのか、家の戸口を開いたのか、明かりが幾つも漏れ、そこから火事に遭ってる民家の方へ幾つかの松明を掲げた者達が移動を始めていた。
「……竈の火の不始末か。こうしちゃおれん。アルタ、俺達も手伝いにくぞ、準備しろ!母さんは、怪我の回復薬と火傷の薬を頼む!」
「急ごう、父さん!リアンちょっと行ってくる」
「工房に、工房に幾つかストックがある筈だから、取りにいってくる。ちょっと待ってて」
「カレン、カノン。お前達は留守番だ。家で大人しく待っていろ」
「う、うん、判った」
父さんが次々と家族に指示を出していたけれど、私はずっと火事に遭った民家の方を見ていた。燃える炎に浮かぶ幾つもの黒い人影。そこへ向かう闇に浮かぶ松明の灯り。不自然に、不吉にゆらりゆらりと揺れている。
時折、激しく振り回している様に見える松明の灯り。幾つかの松明が暗い闇へ投げられたのか回転して飛んでいくのも見える。誰かが持っていたであろうか?松明が突然地面へ落ちたのも見える。何か村の人間が戦っているような……。そこまで思考を働かせると頭の中で何かが繋がった気がした。
去年から暫く懸念していた事案。行商人から齎された騎士団による本拠地盗賊の強襲と四散。そして治安維持活動。盗賊が壊滅した、とは話していなかった。と言う事は、残党か再集結した盗賊の、襲撃?!
「如何したカノン?何かあるのか?」
「……父さん、拙いかも。もしかしたら盗賊が襲って……」
「へっへっへっ。こんなトコにも居たぜぇ」
「いいな、男は皆殺しだ。食料は全部奪って女子供は嬲ってから奴隷行きにすっぞ」
「へぇ、上玉がひぃ、ふぅ、三人。素材の良さそうガキも入れて四人か」
返事をしない私に父さんが何事かと問い掛けてくる。私が思い付いた事を話している途中で、その会話を切る様に畑の暗闇から見慣れない数人の武装した男達が如何にもな台詞を吐きながら現れた。
読んで頂き有り難うございます。
構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので面白く読めるかは判りません。
120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。
読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。