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始動


目覚めたら元の世界に戻っていた!ということもなく、数日が過ぎていった。



この世界に来てからちょうど10日が経っていた。



結局、あれから冒険に行くこともなく、毎日草原をバテるまで走り、包丁二刀流の稽古も欠かさず行った。3日目からは体力も全盛期の頃ぐらいに戻ってきたので木刀素振り1000本も追加した。



カモとも何度か戦闘し、今では木刀でたやすく倒せるぐらいまでレベルアップしている。包丁二刀流では余裕で瞬殺できるレベルまで達しており、もはやこの一帯では俺に勝てる者はいなくなった。



といっても俺以外にはカモしかいないが。



そして今日は、冷蔵庫の飲料水が全部無くなったので、森林の中にある湖まで汲みにいこうとしていた。



もちろんまだ水道は使えるが、予備の水を持っておこうと思ったのだ。なによりあの湖の水は結構美味しい。




「さてと、行きますか!」



エナメルのバックに、空のペットボトルを何本か入れて家を後にする。



森に行くのは久しぶりだな。あれから10日か。結構早かったな。



「よし、トレーニングついでにあの森までダッシュしよう!」



俺は颯爽と駆け出していく。それなりにスピードを出していたので10分ぐらいで着いた。



「ふぅー、結構走ったな。しかしあんだけ走ってもちょっとしか疲れないって素晴らしいな!ほんと素晴らしい!体力ばんざーい!」



っとさっさと水を汲んで帰って修行しますか。



森の中を進む。湖までの道のりは、かろうじて覚えていた。



まじで静かだよなぁこの森。α波どんだけでてるんだよまったく。老後はこんな森で小鳥たちと一緒にくらしたいな。



結構歩いたところで少し違和感を感じた。



静かすぎるのだ。



前に来たときは鳥のさえずりが聞こえていたが、今回は何も聞こえない。そればかりか生き物がいる気配さえない。



なんだ?どうなってやがる。

虫でさえいないぞ…

とりあえず水を汲みにいかなければ。



俺は念のため両手に包丁を装備し、辺りを警戒しながら進んでいった。しかし警戒虚しく、何も起こらず湖に着いた。



「警戒して損だったなまったく。何も起きねえじゃんまったく。まったく。」



ぶつぶつ文句を良いながらペットボトルに水を入れていく。水が入りきったらカバンに戻す、という作業を繰り返している。



「てか、この水全部いれたらエナメル重くなるじゃんだりい」



最後の空のペットボトルに手を伸ばす。



「よし、これで最後か。まったくこの森が静かすぎるのがダメなんだよまったく。まったくもって不愉快だぜまったく。まったく、いくらファンタジーな世界だからって魔法の一つや二つ使いたいってんだよまったく。まじお疲れs『ギャオォオオォオオオオオオオオオォオオ!!!!!!』



………は?」



俺のすぐ後ろからけたたましい雄叫びが聞こえてきた。



振り向いて後方を確認するが木々が邪魔で見えない。しかし何かが近づいて来るのはわかった。



やべぇ、吠え方からしてやべぇのがでてくるのは間違いない。今防具も何もつけてない状態だし、ただの黒色ロンTにジーパンとかまじやべぇ。



やべぇ、まじやじろべぇ。これ逃げたしかよくね?どうやって逃げよう。湖?湖の中に潜ったらいいんじゃねこれ?



そんなことを考えていた時、木々をなぎ倒してその獣はでてきた。



「…うわぁ。死んだかもこれ」



そこに現れたのは、赤黒い毛に覆われた、クマとトラを足して2で割ったような化け物の姿。丸太のような太い腕の先には鋭く長い爪がはえており、おまけに腕にギザギザの鈎爪みたいなのもある。何よりも全てを噛み砕いてしまいそうなキバが特にヤバそうである。



「グルルルルルル……ジュル」



やめて、ヨダレを垂らしながらそんなうなり声ださないでお願い。



「グギャアアアアアアアアア!!!!!!」



体長3mは軽々と越えてるであろうこの化け物は、大きな口を開けてヨダレを撒き散らしながら襲いかかってきた。



「うぉお!まじかくそッ!!」



とっさに大量に水が入ったエナメルバッグを振り回したら、トラックマにクリンヒットした。



「ギャウゥゥッ…!!」



トラックマは転がっていき、少しうずくまった。どうやら目の付近に当たったようで、結構痛がっているのがわかった。



今のうちに止めを刺さなければこっちがやられる!!



すぐ両手に包丁を装備し、トラックマに向かっていった。



よし、喉を切り裂ける!これでどんな生物でも終わりだ!



「!!…ギャアアア!!」



しかし包丁はトラックマに届く事はなかった。トラックマは瞬時にジャンプし、俺の頭を飛び越えていった。



―――嘘だろ!なんだこの跳躍力!バカでかい上に素早いとかチートだろ!てかそんな脚力で今がら空きの背中に飛び込んでこられたら…!!



横目で見ると、そこには足に力をためて今度は俺にダイレクトで飛びかかろうとしているトラックマの姿があった。



俺が振り返った時にはもう飛びかかってきていた。生と死のせめ際にたっているせいか、周りの時間が遅く感じる。鋭い爪で切り裂きにくる姿がスローで見えた。




「うおおおおおお!死んでたまるかぁああああ!」



爪の軌道に2本の包丁を合わせにいき、攻撃をいなす事に成功し、身体を右に捻る事でかろうじて避けることができた。再び振り返って見てみると、トラックマは勢いをつけすぎたのか結構遠くにいる。



なんとか今の攻撃は防げたが、速すぎて攻撃に転じる暇がない!防ぐのが精一杯だ!それに何回も防げるわけねえだろちくしょう!



「グルルルル……」



こっちを睨みならがまた唸っている。こんな化け物がいたら余裕でこんなところ逃げていくわな!森に何もいない訳がわかったぜ!



………ん?何もいない?



ちょっとまて、何もいないってことはこいつのエサもないってことだよな!全部食べ尽くしたとか!?なら、こいつ相当腹すかしてるんじゃねえか?



「……まじでヤバい」



血の気が引いていくのがわかった。



「くそっ、やるしかねえのかよ!」



また飛んで来ても大丈夫なように体制を整える。しかしトラックマは向かってこようとはせずに、その場で仁王立ちして天に向かって口をあけている。



なんや?どないしたんや?

お腹いたいんか?お?

俺の覇気にやられたんか?お?



などと戯言を頭の中でボケていると、周りの木々が騒がしく揺れだした。



ん?…トラックマに向かって風が吹いている?




「ギャォォォオ……」



ビュオオオオオオオオ!!!



立っているのが難しくなるぐらい強い風が吹いてきた。そしてトラックマの口付近に風が集まり、球体を作り出した。



おおお!魔法やん!風の魔法やないか!ファンタジーきたやないかああああああ!




「って、そんなこと考えてる場合じゃねえ!死ぬッ!」



「ガアアァァアアアア!!」



咆哮と共に風が圧縮された球体が、目にも止まらぬ速さで俺の足元に放たれた。球体が地面に着地したと同時に辺りに爆風を撒き散らし、俺を湖の真ん中辺りまで吹き飛ばして水面に叩きつけた。



「うぼぉおえああああぁあぁあああああああああああぁ…ぶへあッ」



弾丸の如く俺が入射角30°でダイブしたせいか、辺り一面に水しぶきが舞い虹ができた。薄れ行く意識の中でみた虹はとても綺麗でしたまる。





ぶくぶくぶく…。




あぁ、まだ死んでないか。

つか何mぐらい沈んでいるんだこれ?

はやく上がらなければ息が…




「ぷはぁ、はぁはぁ、げふっ、はぁはぁ…」



水面から顔を出し、新鮮な空気を肺にいっぱい入れる。息を吸う暇もなく湖の中まで吹っ飛ばされたので限界近くきていた。




「はぁはぁ、奴は?」




……!!




トラックマを見たときは本当に恐怖した。再び風を集め、先ほどよりも大きな風の球体を作り出している。



「グアアァァアアアア!!」



咆哮とともに凄まじい速さで向かってくる風の球体。



―――まじかよッ!今水の中だぞ!身動き取れねえよくそが!



球体は俺が浮いている目の前の水面に激突したと同時に暴風を撒き散らし、俺を水面からすくい上げたのはいいものの、そのまま向こう岸まで吹き飛ばした。



「ぼふうッ…」



木々に背中から激突し、悶絶する。



「…ぐ……い………て…ぇ…」



本当に痛いときは声が出ないんだな…。てか俺をどんだけ吹っ飛ばしたら気がすむんだよ!でもお陰で奴との距離は十分にあるし、今なら逃げれる!幸い包丁も落としてないし、いける!さすが相棒!



よし、汲んだ水なんか置いといて逃げよう!まじで殺される!魔法使えない分ハンデありすぎるだろ!じゃあな!



トラックマに背を向けて森林の中入って逃げようと走り出したその時……



何か黒い物体が勢いよく目の前の林に突っ込んで行った。



「………………あーん?」



なんとそこには、向こう岸からジャンプして木々をなぎ倒しながら転がっている奴の姿があった。



「ぐ…、とんだけ俺をの事好きなんだよ。こんな奴に好かれても嬉しくねえな」



「グルァアアアァアア!!」



トラックマは今度こそは仕留めようと突撃してきた。



もう打ち返す力もないや。…ここまでか。ここで終わりとか嫌だなほんと。気持ちよくビュビュって死にたかったけど、これは確実に痛い死に方だよな。



「ふっ」



最後は格好よく笑顔で死ぬか…。



「ガルゥアアアア!!」



『伏せろ!!』



突然、頭の中に女の人の声が響いてきた。



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