冒険
勢いよく家を飛び出したけど、さてどこにいこう。ずっと向こうに見える森林と湖が一番よさそうだな。山は明日にしよう。
「それにしても良い天気だよなぁ。心が清々しいぜいやほんと」
緑豊かな草原を歩いていく。森林まではまだまだかかるがゆっくり行こう。
カモの近くを通るたびに奴らは警戒してこっちをガン見してくる。
まじ逃げないんだなこいつら。ま、非常食が逃げてったら困るが…。でも毎回毎回あんな戦闘しなきゃいけないとなるとちょっと鬱になってくるな…。
「はぁ、なんでこんな事になったんだろう」
色んな事を妄想しながら歩いていると森林の入り口までたどり着いた。森林まではゆるやかな坂になっていて、俺ん家から湖は見えたのだが、今は木々が邪魔で見えない。
「湖はこの森の奥にあるのか…。水を汲みにいくのが一番面倒くさいな」
今は奇跡で電気や水が使えているが、いつ使えなくなるかもしれない。水の場所だけ把握しとくか。
何の警戒もなしにスタスタと森の中へ入っていく。
「結構木でかいんだなぁ。なに食ってんだこいつら」
なんて馬鹿な事を呟きながら奥へ奥へと進んでいく。森の中は少し薄暗い。
やべぇ、ここまじスケベな事をするのにもってこいのスポットじゃん。
そんな変態的妄想も膨らませながら歩いていると、チュンチュンとどこかで鳥の鳴き声が聞こえた。
鳥のさえずりも木々の揺れる音も心地よい…。これ絶対α波100万ぐらいいってんじゃねえか?どうせならこの森の中に転送してくれよまったく。昼寝し放題じゃねえかよまったく。ぷんすかぷんすか。
しかし、獣はいなさそうだな。トラみたいな奴かでっかいヘビみたいな奴あたりはいるとおもったけど、何もいる気配がない!静かすぎて寝てしまいそうだぜ!
さらに妄想にひたっていると、微かに水が流れる音が耳に届いた。
「お!水の流れる音が聞こえてきた!もうすぐじゃん!」
しばらく歩いていると開けたところにでた。目の前にはグラウンド並みの湖があり、木々に囲まれている。
「へぇ、結構きれいじゃん。全然飲めそうじゃん。じゃんじゃん」
手ですくって一口飲んでみる。
ぷはぁ、うめぇ。魚とかもいそうだな。
「そうだ。確か釣竿があったはず!今度ここに釣りにいこう!」
よし、水の場所が把握できたし、ここは安全っぽい事がわかったし帰るとするか。
立ち上がり湖を後にしようとした瞬間、俺がいた湖の反対側の向こうの木々の間を何かが動いたのが見えた。
「よし、はやく帰ろう」
その後は何も起こらなかったが、森林を抜けた時は汗だくで息を切らしていた。
いやだって、後ろになんかいるかもとか思ったら怖くなっちゃうじゃん?どんどん想像するじゃん?走るじゃん?追いかけてくるのを想像するじゃん?全力で走るじゃん?大学生が全力で走ったらどうなるじゃん?口からさっき食べたお肉がでてくるんだよまったく…。
来た道を歩いて戻り、家にたどり着く頃にはバテバテになっていた。
「はぁ、はぁ、余計な体力使っちまったな。しかし体力無さすぎぱねぇ。ちょっとこれから毎日走ることにしよう」
戦闘中に体力が切れたらまじ死ぬしな。こればかりは本気で始めるとするか。
水分を補給し、少し横になった。
なぜ俺はこの世界に来たのだろう…。明日起きたら元の世界に戻ってたりしてな。ってそんな人生甘くないか。それにしてもアイツ怒っているだろうなぁ。
今付き合っている彼女を思い浮かべる。
毎日会うし、携帯も圏外だから今頃ぷんすかしてんだろうなぁ。はは…。怒った顔も可愛いんだよなまったく。ついからかってしまうし、とくにあのぷにぷにのほっぺたなんかほんとマシュマロみたいで。つかマシュマロってなんであんなに甘いんだろうね。焼いたらしぼむところがこれまた素敵だよねいやほんt………すぴぃ
それから辺りが暗くなった頃。
「うーん、むにゃむにゃ、焼き飯飛んでけえ!」
………は!
気付けば寝てしまっていたようだ。辺りはすっかり暗くなり、少し肌寒さを感じる。
だいぶ寝てしまったな。それに、変な格好で寝たから首が痛い。はぁ、疲れた…。明日絶対筋肉痛だよねこれ。筋トレがんばろう…。
その後は普通に風呂に入り、インスタントを食べてノートに簡単な日記をつけて寝た。
こうして、異世界での初めての生活1日目が終わったのであった。