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第三十七話 それぞれの未来①

ーーそれから数ヵ月。

みゆりと真由美、綾子、友美、フィリアは、皆同じセーラー服を着て西国の国立野薔薇女子学院に通っていた。今日は登校日で、その帰りだ。

「はぁぁー、今日も勉強疲れたー」

「ホントですわ。しばらく学業を離れていた身では、ついていくのがやっとです」

真由美とみゆりが愚痴を言う横で

「みゆりは幸広に見てもらえば良いのではないのか。いい口実になるだろう」

友美が暗にもっと積極的に行け、とけしかける。事実、第二の戦いの前に少し勉学を見てもらって以降、個人的な交流はほぼなかった。このままでは全然心の距離は近づけない。正直みゆりも焦っていた。

「望月さんはとても聡明な方ですものね。私も勉学を教えていただきたいです。私が生きていた時代とは、色々と覚える内容が違いますので……」

フィリアの無邪気且つ、更に焦燥感を促す言葉に、みゆりはオロオロした。ライバル出現はご遠慮願いたいが、恋人でもあるまいし、自分だけ教わるのもおかしな話だ。

「そ、そうですわね。一緒に教えていただきましょうか!」

本当は少しモヤモヤするが、頭を振って彼女も誘う。しかし、フィリアは予想外の返答をした。

「ええ。じゃあせっかくなので、到さんもお誘いしませんか?」

「は!?」

「私、実は到さんに憧れていて……。みゆりさんが望月さんに教わるなら、私も便乗させてもらえないかと……。ダメ、でしょうか?」

フィリアが頬を赤らめながら、上目遣いでお願いする。

「いえ、全然良いのですけれど!でも、その……意外でしたわ。フィリアさんが天野さんを……だなんて」

真由美も綾子も顔を見合せる。あの胡散臭い男に憧れだって?

「そうだな。到はああ見えてかなり面倒見が良い。私も兄のように慕っている。彼ならフィリアを任せても良いだろう。兄を取られてしまうようで、少し寂しくはあるが」

「まぁ……。ごめんなさい、友美さん。私、友美さんのお気持ちを考えず……。友美さんは、前世でもこの世界でもずっと、到さんに助けられて来たのですよね。それなのに私、一人で浮かれてしまって……」

しょぼんとするフィリアに、綾子が頭をガリガリと掻く。

「いや、そんな深く考えなくても……普通にみんなで勉強会すればいんじゃね?」

「そうだよ。私も実は数学がやばくってさー。天野君に教えてもらいたいんだよねー。あっでも二人にはそういう気持ちないから!全然!大丈夫だから!」

「綾子もないわー。でもテスト対策はしたい」

二人は手を振って『アウトオブ眼中』アピールをする。

「それは見てればわかる……」

友美が呆れたように言う。

「ええと、じゃあとりあえず、私からお二人に連絡取っておきますわね!」

「うん、よろしく~」


かくして半ば強引に、幸広と到を教師にする勉強会の予定が決まったのだった。


☆ ☆ ☆


その頃。到は幸弘の自宅を訪ねていた。

「久しぶりだな。どうだった、妹さんは。元気にしていたか?」

幸広がコーヒーを入れて、到の座る席の前に置いた。到はありがたくいただく。マグカップではなく、きちんとしたコーヒーカップだ。おそらく普段自分が使っているものではなく、来客用のカップだろう。相変わらずの育ちの良さ。うっかりしていたが、そういえば彼は代々医者の家系で、自分のような庶民とは違うのだった。

「ええ、元気でしたよ。しばらく家を空けていたので、心配していたんですけどね。今までそれほど関わり無かったんですけど、やっぱり妹は可愛いですね」

到は第二の戦いのあと、妹と暮らしていた東国に帰っていた。その彼がこちらに戻って来たということは。

「そうか。今日こちらに来たのは何か用だったのか?」

「ええ。ルーファウスさんが紅い月を再開するらしくて。それにさしあたって、ルシフェルがしばらく手伝うことになったと言うので、様子を見に」

「………ルーファウスか。あれほど前世の記憶にこだわり、フィリアを目覚めさせようとやっきになっていたというのに、ままならないものだな」

幸広は彼の事をとても心配していた。元々あまり接点はなかったが、それでも同情を禁じ得ない。

必死に目覚めさせた前世での育ての娘は、前世の父親である友美を慕っている。フィリアに面識のないルーファウスはともかくノエルに至っては更に悲惨だ。

「そうですねぇ。僕もそれは気になってたんですよ。まぁノエルさんは自業自得な面も否めないですが、ルーファウスさんは不憫ですよね。でも彼にはルシフェルがいますから。それにセラフィさんもお店を手伝うみたいですし、周りで支えてくれる人がいるなら少し安心ですね」

幸広も席についてコーヒーを飲みながら頷いた。


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