第三十話 最後の計画
ネサラはルーテとネフェニーを追って、クリスタルタワー中枢に転移していた。
奥には祭壇のようなものがある。おそらく、光玉を祀っていた場所なのだろう。
ルーテはそこに光玉を慎重に置く。
「………これで………ようやく。長年の願いが叶う………」
感慨深く呟く彼女に、ネサラが吐き捨てるように言う。
「おまえのくだらない願望か………」
「あの………ネサラ?さっきから何か誤解をしていない?私達の目的は、世界征服だとか世界の破滅だとか、そういうことじゃなくて………」
ネサラの様子にびくつき、恐る恐るといった風にネフェニーが声をかけてくる。
「誤解?誤解なんざしてねぇよ。何もわかってないのはネフェニー、おまえの方だ。そうだろ?ルーテ。彼女は“最後の計画”に気付いていないんだからな」
ネサラがルーテを見て凄む。
「………そうね。ノエルや先代長の言うように、彼女はその器じゃなかった……。貴方が気づいて、一番私の近くにいるこの娘が気付かないんだから」
淡々と返すルーテの横で、何の事かわからない、とネフェニーが瞬きをする。
「………おまえの本当の目的は………」
☆ ☆ ☆
「………彼女の本当の目的は、光玉の破壊………。つまり、ノエルさんと同じ事をしようとしているってことですよね………?」
到が器用にも雷魔法を発動させながら口にする。
「そうだろうな。ラファエル様にクロウを封印させた後、光玉は粉々になり十二のカケラとなって各地に飛来した………。それを知り、もう一度全てのカケラを集めて光玉にして魔力を使いきれば、今度こそ破壊出来るだろうと考えたのだろう」
幸広も結界を張っていたが、精神力温存のため、フィリアが交代し、弱まってきた結界を張り直す。
「そういえば、言っていましたものね………。ノエルさんがクロウを封印したからこの計画を思い付いた、と」
みゆりは、先程から炎魔法で戦っているルーファウスの精神力を回復させるため、リュックからチョコレートを取り出し、妖精の姿の彼に食べさせていた。
「確かに、私達に本気で攻撃を仕掛けてくるって感じでもなかったな……」
ラファエルがミカエルとフィリアの傍で休んでいると、
「だが、彼女は私を恨んでいたはずだ。何故光玉の破壊などと……」
ノエルが『まさかそんな』と納得出来ずにいた。
「その辺の事はわかんねーけど………。この、数だけで大して強くもない奴らの相手も、オレたちを倒そうとかじゃなくて、カケラの魔力を使いきるための“作業”なんだろうぜ」
博も忍法を使いながら会話に加わる。
「それと、私達を足止めさせるためだな。一足先に、ネサラの言っていたロボットの生命体を創り出すつもりなんだろう。言わば時間稼ぎだ」
わかっていたからといって、強行突破出来ないのが口惜しい。
まだ人造生命体は獣が十体、人間が五体……半分程度になったとはいえ、結界を解くには早いだろう。
「ちょっと待て。そのロボットを創りだした後はどうするつもりだ?結局はそれを使って私達を全滅させようというのではないのか?」
ノエルがまたも言い募る。確かに、彼女が光玉の破壊を画策する意味がわからない。到もその可能性は考えたが……
「………ロボットと僕達を戦わせようとしているのは本当でしょうね。でなければ、こんなところまで僕達を呼んだりしないでしょう」
「ああ。ロボットに私達を倒させようと言うよりは、私達にロボットを倒させようとしている、と言った方が正しいか」
到と幸広は同じ見解を述べた。
☆ ☆ ☆
「おまえの本当の目的は、光玉を破壊することだろ」
ネサラがさも重大な事実を突き止めたように言う。しかし、ネフェニーには全くもって拍子抜けだった。
その通りだ。そして、だからなんだと言うのか。“最後の計画”だのなんだのと、大仰な言葉で言うほどのことではない。
「…………あの、ネサラ。その事なら私も知ってて協力してきたのよ。だから、私が何か騙されてるとか、そういうことでは………」
ピリピリした空気を発するネサラに必死に言い繕う。しかし。
「…………それがどういう事か、本当にわからないのか?」
「………え?」
彼は哀れむような目で私の顔を覗きこむ。
「…………ラファエルが光玉の魔力を使いきった後、どうなったかは知っているだろ。光玉は砕け、そして……ラファエル自身も死んだ」
「……………え……………」
「今、この女が同じ事をしたらどうなるか………解りきったことだろう。十中八九、死ぬ」
「……………え……………」
ネフェニーは、壊れたレコードのように、同じ言葉しか発せられなかった。
それは……一体どういうことなのか。私はただ、光玉を破壊することが私達の使命だと、そう聞いて。あれがあるから私達の人生は狂ったのだ、そう、聞かされて。
「おまえにそのつもりはなかった。それは俺にもわかる。だが、おまえがやっていたことは、この女の壮大な自殺計画の手助けだった………ってワケだ」




