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第二十七話 最終目的は

(フィリア)の目覚めを待たなくて、良かったのかしら?」

ルーテが淡々と問う。

「……………!!」

ノエルは私達がフィリアの存在を知っていると、知らなかったのだろう。瞳孔を開き動揺している様が見て取れた。

「まぁ気持ちは解るけれど、ね。あの娘、貴方に全く懐いていなかったもの。大事に大事に育ててきても、あの娘が慕っているのは実の父。それをまざまざと見せつけられるのが耐えられないのよね。例え自業自得だとしても」

ルーテが珍しく攻撃的な口調でなじる。単に感情的になっているのか、それともわざと怒らせようとしているのか。ネフェニーにはわからなかった。

「黙れ!!」

ノエルの迫力ある一睨みにも微塵も動じず、ルーテは続ける。

「図星、かしら。それで?娘から逃げてきてこんなところまで来て、何の用かしら。私達を倒して、名誉挽回とでも行きたいの?」

「おまえ達は私を恨んでいるのだろう。神や長の座から下ろした私を。一体何が望みなんだ!私の命か?そんなことをして何になる!おまえ達がしているのは、ただの逆恨みではないか!」

(お、怒ってる………)

普段感情を表に出さないルーテの怒りを、ネフェニーは隣でひしひしと感じた。それはそうだろう。彼は全く的外れな事を言っているし、そもそも会話が噛み合っていない。

「だとしたら、なんだと言うの?貴方一人で私達を倒そうとでも言うのかしら?………って、私達の方が訊いているのだけど?そんなことを言うためにわざわざこんなところまで来たというのなら、お暇するわ。時間の無駄だもの」

「待て!娘の封印さえ解ければ、もう充分だ!私を殺したいのなら、殺せばいい!だが娘は関係ない!彼女には手を出すな!」

ノエルの言葉に、ルーテは怒りを通り越して呆れてきた。

「誰も、貴方を殺したいなんて言ってないでしょ。それなのに自分の命を狙っているのか、なんてしつこく聞かれて、むしろ今、初めて殺意が芽生えたわ」

ネフェニーも激しく同意だった。確かに彼には思うところはあるが、別に殺したいほど憎んでいるわけではない。

「だから、こちらも一体何が望みなんだと聞いているだろう!」

「………貴方バカなの?」

とうとうルーテの頭の血管がぶちきれた。こんなやつに神の座を下ろされたなんて、屈辱である。

「!?な………」

「私、頭の悪い人間は嫌いなのよ。特に男はね。こちらとしては貴方に用はないの。だからもう帰ってくれる?私があなたに望むとしたら、それだけよ」

ルーテが冷たく言い放った直後、ネフェニーは時空が歪むのを感じた。

「ネサラ……」

瞬時に彼だと思った。こんなことが出来るのは彼しかいない。

そして、思った通り。ラファエル達と共に、彼はそこにいた。


☆ ☆ ☆


ネサラは最初、タワー内部に時空間転移しようと思っていた。しかし、できなかった。歪んだ時空間に因って阻まれて。

(…………ネフェニー、か)

仮にも時天使長である自分を阻むほどの魔力を有する者といえば、彼女しか思い当たらない。

やはりルーテ側に付いていることは間違いないのだろう。それがどれだけ自分を傷付けることになるか、知りもせずに。

仕方なく近寄れるギリギリのところで時空間転移したが、果たしてそこに彼女達はいた。


「クリスタルタワー………懐かしいな」

ラファエルが過去に想いを馳せていると、到が三人の人影を認めた。

「待ってください!あそこにいるのは……」

遠目からでも、紫の髪をしたルーテと翼の生えたネフェニーはすぐにわかった。しかし、もう一人の金髪の人物は……

「あれは………、ノエル様!?」

フィリアが驚きに目を見張る。

「えっ、あの人がですか?」

「なんでこんなところに………、まさか、一人で刺し違えてでもと思って!?」

到とみゆりが焦り彼らに近付く。そういえば彼はフィリアのそばにはいなかった。しかしまさかこんなところにいたとは。

「いや、あれは………戦っているわけではなく、何やら揉めているようだな。口論しているというか……」

「俺が見るに痴話喧嘩だな」

焦る二人とは裏腹に、幸広と博は呑気にそんなことを言った。


ノエルの方もこちらに気付き「フィリア!」と叫ぶ。

「やっと来たのね。それじゃあ早速、残りのカケラを戴くとしましょうか」

ルーテの台詞からは“これ以上ノエルの相手はごめんだ”と言いたいのが窺い知れて、ネフェニーは苦笑する。この頓珍漢な男の相手は確かに面倒ではあるだろう。おそらくあの到とかいう人間の方が話が通じる。現にルーテも気に入っていた。


「ルーテさん!貴女はカケラを集めて光玉にして、意のままに動く人形を作ろうとしている。けれど、僕達を害そうとは思っていない。ということは、貴女の最終目的は、まさか………!」

その到が私達の方へ駆け寄り、ルーテを問いただす。答え合わせをしようとして。しかしルーテはまたもそれを拒否した。

「その先は、言わない方が身の為よ」


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