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第二十一話 千年前の世界へ

「卵が先か、鶏が先か。そんな言葉を彷彿とさせますね」

到が思案げに言う。

千年前の世界に飛ばされて、着いた先は深い森の中だった。

ラファエルとミカエルが言うには、ここが初めに光玉が落ちたいわくの場所らしい。

「………ルーテの言っていた件か?」

幸広が先を促す。

「ええ。彼女の言うように『クロウを封印したからこの計画を思い付いた』というのなら……、クロウを倒していれば今回のようなことは起きていなかったということ。確かにそれでは、どちらが原因とも言えない……」

「……………私はそうは思わないな」

「!?」

ずっと、史書から得た客観的な意見を述べていた幸広が、初めて自分の意見を言った。

「…………それはどういう意味だ?」

ラファエルまで眉をひそめる。どうも未だに彼を信用しきれていないようだ。単純に質問と言うよりは、睨んでいるようにも見える。

「…………そもそも。何故、ネサラは今回の『第二の戦い』を予見した?ルーテの話を信ずるとして、ノエルがクロウを倒すつもりなら、そんな未来など見えていないハズだ」

「確かに……矛盾しているな」

ミカエルも神妙に頷く。

「ということは……ルーテさんの言っていることが嘘で、クロウを倒すかどうかに関わらず、ルーテさん達が今回のことを計画していたか……」

みゆりが考えながら口にする。

「或いは、ルーテさんの件が無くとも、最初からクロウを封印することが規定路線だった……ということに」

そして到がもう一つの可能性を指摘した。

「私は後者だと思っているがな」

幸広は思い当たる節があるのか、苦々しげに呟いた。

「でも……それだと、逆に何故クロウを封印する必要があったのか……。その辺が謎ですよね」

何故ノエルはクロウを倒すことを避けたのか。クロウを封印することによって変わった未来とはなんなのか。

「………やはり、ノエルが何か企んでいたことは間違いないのか」

ラファエルが怒りを抑えられず、ギリ、と口の端を噛む。

「あまり、推測で物事を言いたくはない。いつまでも立ち往生しているわけにはいかないし、もうここを発たないか」

幸広の提案に、ミカエルが目を見開く。

「行く当てがあるのか?」

「今回の事を知っていそうな人間に会いに行く」

幸広はしれっと答える。そして

「では、歩きもなんだし、転移魔法を頼む」

旧知の仲であるミカエルに対し、横柄に要求を突きつけるのであった。



☆ ☆ ☆



その頃。博は、潜水艦の繋がれていた洞窟にノエル達と戻って来ていた。そして艦内から出た途端、突如として異空間から現れた時空天使を見て、現状を察する。

「よぉルーファウス。報告に来てやったぜ」

「………ネサラ」

ルーファウスは彼にあまり人前に出てきてほしくないのだろう。困惑を隠せず後ろにいる博達に目をやった。

「驚いてる暇はないぜ。あいつら全員、ネェフェニーの力で千年前に飛ばされた」

「!?何故………!?ラファエル………友美はカケラを二つ持っていたハズだ。そう易々と飛ばされるなど」

先程まで気にしていたこちらの事も、一瞬にして吹き飛んだようで、大声でネサラに詰問する。

「自分の意思に決まっているだろう。わざと魔力を抑え、反抗せずに飛ばされた。《みんな一緒に》な」

それはそうだろう。仲間を見捨てられないラファエルの性格もそうだが、自分一人が現世に残ったところで、どうにもならない。それぐらいはバカでもわかる。おそらくルーテもそうなるようにけしかけたに違いない。

「ルーテもネェフェニーと元の世界に戻った。俺もそうする。お前もそろそろ動かないとまずいんじゃないのか」

やはりネェフェニーのことが心配なのか、この男は。淡々と話しているが、人の心の機微に敏感な博にはすぐにわかる。そして同時に、ルーファウスの事も心配しているようだ。随分人に慣れた時空天使だ。確かスルーフの影響だったな。

「……ああ。悪いが、一緒に連れていってくれるか」

動揺しながらもルーファウスが首肯し、ネサラのもとに近寄る。

博はそれを遮るようにネサラに声をかける。

「あーじゃあ悪いけどさ、ネサラさん。俺も付いてくわ」

「!?」

自分の事など眼中になく、いきなりのことで驚く彼にそっと耳打ちした。

「初めまして、でいいんかな。前世で一回会ってるけど」

「貴様……ロキか!!前世の記憶があるのか?!」

「そう……、それがどういうことか、わかるよな?」

「…………!!」

絶句するネサラを無視し、他のパーティーに別れを告げる。

「面白そうだから、行ってくるわ。みんなは潜水艦の事、国王にお礼言っといて」

「えっ、ちょっと博く………」

「ほら、早くしろよ!」

「あ、ああ………」

肘でネサラを小突き、急がせる。

そうして三人はネサラの力で千年前に時空間転移した。







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