第十九話 海竜戦
博達一行は、海底神殿を進んでいた。
ルーファウスの持つカケラが光りだす。その先に視線をやると、奥の祭壇にカケラが見える。いや、光っているのはそれだけじゃない。
「…………あの、祭壇の後ろに光る大きな目って………」
「…………博の言うとおり、いたな」
セラフィと直人が眉をひそめて言った。
そう、そこにはゲームで見るのと同じ、竜がいた。長い胴体、背中には鱗。頭には角が生え、目は爛々としている。
「見逃してくんないかなー」
「無理でしょ。私の式神がボロボロになって帰って来たの見たでしょ?」
久美が楽観的に言ったが、千慧が言うようにそれは無理な相談だろう。
「あの目付きからして今にも襲いかかってきそうですしね~」
スィフトも同意する。
「じゃあまずは遠隔攻撃だな」
飛竜と違い、羽がない竜ならなんてことはない。博が指で忍法を唱える構えを作る。
「雷迅の術!」
ルーファウスもラムウを召喚し「裁きの雷」を発動させる。
グルルゥ!!
多少は怯んだかに見えた海竜だが、たった二発の攻撃では絶命には至らない。それどころか、大口を開け口中に何やら赤い球を発生させてきた。エネルギー球を飛ばす気か!!
「来るぞ!!」
「わかってる!!」
セラフィが水圧を作り防御を、更にスィフトが崩れた瓦礫を魔法で集めて壁を作る。二段階防御だ。
ゴアァッ!!
その瞬間、海竜がエネルギー球を放つ。
「くっ!!」
すごい圧力だ。攻撃によるダメージこそ受けなかったが、多少身体を後ろに飛ばされる。
「こんなんじゃ、カケラを取る前に水膜の効果が切れちゃうよ!」
「そうだな……。私がカケラを取っている間は、戦闘に参加することは難しい……。しかし、攻撃が博だけだと……」
セラフィとルーファウスが苦悶の表情を見せた。
「何言ってるのー。雷の攻撃なら私も出来るし、心配いらないって!」
「そうよそうよ、久美さんがなんとかしてくれるわ。とりあえずルーファウスさんはカケラを取る事に集中して」
テキトーな事を言う千慧に怒るでもなく、
「まっかせてー♪」
と自信満々にいう久美。
マジックで左手に何か書き付けると、背負っていた弓をつがえ、放つ。
雷を帯びながらヒュンッと飛んでいく矢。その矢は龍の顎の下にある、逆鱗に突き刺さる。
ギャァァァーオーー!!
海竜が目を剥いてのたうち回る。胴体が神殿の床を打ち付け、地響きがする。水膜で浮いているので助かったが、本来ならこうして海竜が暴れ狂うだけでダメージを受けるだろう。
「今だよ!早くカケラを取って!」
「ああ!」
久美が叫ぶや否や、ルーファウスが走りだし祭壇に手を伸ばす。
だめ押しに博がまたも雷迅の術を唱え、海竜の動きを封じる。
そこでようやく彼はカケラを手に取った。
「よし、退却だ!」
「三十六計逃げるに如かずってね~」
「ほなさいなら~」
久美と博がふざけながらも、追撃の手を緩めない。久美は雷の矢を乱れうちし、博も雷迅の術を唱える。直人や千慧は当初の予定通り真っ先に逃げる。
「逃げるとかいいつつ追撃なんて、相変わらず鬼畜ねぇ久美さんは」
「攻撃は最大の防御なりーって知らない?」
「逃げるだけの千慧姉よりマシだから~」
久美と博がブウブウ言いながら反論する。
グルルゥ………ガアァーッ!!
海竜が大ダメージを食らいながらも、渾身の一撃を放とうと、再び大口を開けてエネルギー球を発生させる。
「やばっ」
久美が焦るも、すぐ後ろを走っていたルーファウスが、全員が隠れるようドーム状の結界を張って事なきを得る。
カケラを入手し手持ちが二つになったせいか、結界が強力になった気がする。海竜自体もカケラの影響から離されたせいか、弱くなったような。
「よし、これなら逃げ切れる!」
海竜が追ってくる気配はない。おそらく最期の力を振り絞ったのだろう。
神殿の外まで走って、ルーファウスの転移魔法で潜水艦内部へ。なんとか水膜も持ったようだ。
「それじゃあ久保くん、運転はよろしくねー」
「結局二人のラブラブは見れなかったなぁー」
ぼそっと言う久美は残念そうだ。
「?何の話ー?」
セラフィが聞こえなかったようで、キョトンとしている。
「こっちの話ー」
久美はニコッと笑って誤魔化したのだった。




