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第十八話 「真実など存在しない」

「無理………ですか?」

彼女の表情とは裏腹の拒否発言に、到は困惑を隠せない。

「真実など存在しない。そんなものは、見る者によって変わる。ノエルの見ている真実は、確かに私が全ての元凶なのでしょうね。そして誰もそれを否定できやしない」

ルーテがまたもはぐらかすように答える。到は逆手を取って、彼女の発言に切り込むことにした。

「………つまり、あなたの見ている真実は、ノエルさんとは違うものだと言うことですよね?」

彼女は面白いと言わんばかりに笑んだ。

「賢い人間は好ましいわ。少なくとも私にとっては。でも私はあまりお喋りは得意じゃないの。だから最後に一つだけ」

そうして彼女が続けた言葉は。


「私はね。ノエルがヴァイスを封印させたと知って、この計画を思い付いたの。そうでなければ、こんなこと考えもしなかったわ」

到と幸広は、その言葉に衝撃を受けた。まさか。まさか、そんな。


「それじゃあ……悪いけれど、カケラはもらっていくわ。ネフェニー!」

「はい!」

時天使・ネフェニーは片手を挙げ、体中から魔力を集めると、その手をこちらに向けて突きだした。

しかしその寸前、ラファエルは咄嗟に草原に隠れていたカケラを拾う。

おかげで彼だけは魔法の影響を受けなかった。しかし。

「くっ、体が言うことを聞かない……!!」

「わたくしもですわ!どうなってますの?!」

彼以外は、動きが遅くなっている。到は銃を、みゆりは剣に手をかけようとしているようだが、壊れたブリキ人形のように動きがぎこちない。

「………減速魔法か!!」

幸広が当たりをつける。

「いいえ、本来は停止の魔法なのだけど……」

ネフェニーが困惑気味に答えると、ラファエルが

「魔石や聖石の力と、本来の魔法耐性で効果が軽減されたようだな」

「あなたは無効化したみたいね。さすがにカケラ二つを持った人間を相手にするのは分が悪いかしら」

ルーテが言葉にそぐわぬ無表情で言う。

「カケラを七つも持ってる女がよく言う……!」

ミカエルが恨めしげに睨むも、彼もみゆり達ほどではないが、動きが鈍い。

「どうする?だめ押しにもう一度掛けてみる?」

ネフェニーがおろおろしながらルーテに問う。

「………その前に、ラファエル。私にカケラを渡す決心はついたのかしら?」

「……………くっ………」

ラファエルは奥悩していた。動けるのが自分だけのこの状況で、彼女達とやりあえるとは思えない。しかしみすみすカケラを渡せば、状況は更に不利になるだろう。

するとルーテは友美の姿のラファエルをまじまじと見て、

「私としても、女の子に手出しはしたくないし……。人質を取らせてもらおうかしら」

「!?」

「人質だと!?」

驚いて声もでないラファエルの代わりに、ミカエルが声を荒らげる。

「ネフェニー。千年前の世界に彼らを送ってあげてちょうだい」

ルーテは更に信じられない言葉を吐いた。

「でも、全員は無理かも………」

ネフェニーは難色を示す。いくら長レベルの魔力の持ち主でも、同時に数人も、しかも千年も前に飛ばすのはかなり厳しいのだろう。

「全員でなくていいわ。人質なんだから。ラファエルはカケラがあるから防御されるだろうけど、聖戦士やミカエルなら何人かは送れるでしょう」

「わかったわ」

ネフェニーは頷いて、再び右手を天に翳す。

「マジでやる気かよ……!!」

「ちょっと待っ………」

ミカエルとみゆりが叫ぶ最中、ネフェニーが作り出した歪む空間に呑まれ、一行は時空転移した。

ーーーカケラを持つはずのラファエルも共に。

「……………うまくいったわ。ありがとう、ネフェニー」

「いえ………。でも、良かったんですか?カケラを手に入れなくて」

「その気になればいつでも奪えるもの。…………それに」

「?」

「なんでもないわ。行きましょう。次は………天界ね。」

ルーテは目だけで笑ってネフェニーを促す。

いよいよだ。いよいよ計画の最終目標まで迫ってきている。

(あとはノエルがどう動くか………。それがカギになってくるわね。あの、傲慢な、およそ神には相応しくない男………)

(ひと)には神には不向きだと言って切り捨てたくせに。どっちがだと思わないでもないが、今にして思えばそれで良かったのだろう。結局私の目的も自己満足に過ぎないわけだし、不本意だが似た者同士なのだ。

「じゃあ、転移するわね」

ネフェニーの声で、彼女達は瞬時に天界へと移動した。


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