第十二話 草原へ
ミカエルの魔法で、東国にある草原に転移した直後。みゆりがずっと思っていた疑問を口にした。
「あの~、私達がわざわざ行かなくても、ミカエル様が入手してきてくだされば良かったのでは……?」
「そう出来たら良かったんだけどなー。オレもピンポイントな場所まではわからんかったし、兄貴のカケラとみゆりの聖剣がないと、探すのも一苦労じゃん?まぁ、ここから見える範囲にはあるはずだけど」
何でもない風にミカエルは言ったが、
「え!?どこにあるか分からないって、この草っぱらの中を探すんですの!?歩いて!?」
「見える範囲って簡単に言いますけど、地平線見えますよ!?」
「まるで宝探しだな……」
みゆり、到、幸広が、マジですかと顔をひきつらせた。
「だからカケラの反応見るんだろー。どうだ?様子は?」
「ええと……ここから更に東南ですわ」
「反応が弱いからかなり遠そうだな」
うっすらと伸びる光を目線で追って、みゆりとラファエルが答える。その二人を見ながら、到はなぜミカエルがカケラを持っていないのかと不思議に思った。
「天界にもカケラがあるって言ってましたよね?ミカエル様は持ってこなかったんですか?」
「あーあれなー。天界には一応天使達が住んでるから……持ち出すと影響でそうでさー」
ミカエルはううん、と唸る。
「少なくともカケラがないと天使の姿は保てないだろうな。地上と同じ妖精の姿になるだろう」
ラファエルも弟に同意した。
「えっ、でもカケラを天界に置いたままミカエル様が留守にして大丈夫なんですか?ルーテさんがその隙に奪いに来るとかは……」
光の示す東南の方角へ草っ原を歩きながら、ミカエルは不安そうなみゆりに呑気に返す。
「まぁないとは言えないが、天界は天使が大勢いるから、ルーテもそうそう無謀なことはしないだろ。それにどっちかっていうと、オレたちがカケラを入手した直後、それを狙って奪いに来るって方がありそうだし」
「それもあって僕達を連れてきた、と?」
「まぁ念のためだな。ルーテの考えてることはよくわからんからな。カケラを集めてる割にやり方が生ぬるい。目的も、世界の破滅とか世界征服とは違う気がするし」
やはり気になっていたのは自分だけじゃなかった。
「僕もそう思ってました。リズさんの生まれ変わりである博士の言葉も気になりますし」
「!…………何て言ってたんだ?彼は」
「この事態を引き起こしたのはノエルだ、と」
ラファエルが眉を寄せ答える。
「兄貴の事は?」
「………傷付けるつもりはなかったと言われた」
ミカエルはそれを聞いてほっとした顔をした。
「なぁ兄貴。だったらもういいんじゃないか?みんなにあの時のことを言っても。いつまでも内に抱えてちゃ先に進めない。それに、もうお互い生まれる前のことだろ」
ラファエルは少し考えこんでいたが、
「……………そうだな。話すよ。みんなに………あの時のことを」
決意の眼差しで到・幸広・みゆりの顔を順番に見渡した。
☆ ☆ ☆
一方、ラファエル達が草原に向かう前夜。
国王に交渉に行ったルーファウスとセラフィが、海底に向かう予定のパーティーのいる千慧宅に合流していた。
「なんとか許可は取り付けてきたよ」
ルーファウスがソファの背もたれ上部に座り、ふうと一息ついた。
「ただね、地下にあるって話だったけど、実際はここから南の海辺の洞窟にあるんだって」
セラフィが困ったように知らせる。
「えっ、じゃあそこまで行かなきゃいけないの?」
久美が驚き、遠いなぁと口にした。
「おかしいと思ったのよね。王城の地下に潜水艦があったって、海まで運ばないと使えないのにって。やっぱりガセだったのね」
「考古学者の博士にも、わからないことはあったってことですね」
久美とは逆に、千慧とスィフトは全く動じない。
博も、今回の事はただ単に父親の情報不足だろうとわかっていた。
(あの人、前世では二十歳で死んじゃってるからなー。しかもほとんど家と天界しか出入りしてなかったし、地上の情報収集が甘かったんだろうな)
もう少し俺に相談してくれりゃあな、とも思うが“彼女”の事でいっぱいいっぱいなんだろう。
「ったくさー。生まれ変わっても恋多き乙女ってものも困ったもんだよなー。老若男女虜にしちゃって、周りは振り回されていいメイワクだよ」
最後の方は口をついて出てしまう。
「……………何の話?」
直人が博の脈絡のない言葉にきょとんとする。
その顔が男のくせに妙に可愛い。
「お前の話だよ」
「??!!」
いじわるでちょっとからかってやったら、更に目を丸くして可愛らしい反応をする。こんな顔をされたら女の子達は目をハートにせざるを得ないだろう。なかなか罪作りな男である。
「俺の彼女に手出すなよ!?」
「だからなんの話!?」
わぁわぁ言っている二人を余所に、千慧と久美が話を進める。
「で、どうやってそこまで行けばいいのよ?」
「あ、それならいい考えがあるよ!魔物ももういないし、久保くんの車でいこーよ!」
「??!!」
知らない所で勝手に自分の話題が出ていることに、直人はまたもびっくりする。
「あ、それいいな。人数的にも、ちょうど人間が四人だから全員乗れるし。てことで、よろしくなー直兄!!」
「…………………は!?」
展開についていけない直人を無視し、翌朝直人の運転で洞窟へ向かうことが決定したのだった。




