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第十一話 出立前夜

「オレもさー、もう一つの地上のカケラの在処を調べてたわけ。一応ね。そしたら東南地方の草原にあるってことはわかった。だから、海底に行かないやつらは、オレとそっちに向かってもらいたいんだけど」

ミカエルの発言に千慧が憤慨する。

「えー!何よどっちかに行く前提って!私はヒマだから話を聞いてるだけで、行くなんて一言も………」

「えっ、どっちかだったら絶対海底!潜水艦乗りたいし!!あと、セラが行くなら心配だし!」

久美が千慧と対照に目を輝かせてきゃっきゃと騒ぐ。正直、一番が〈潜水艦に乗りたい〉で、二番が〈セラフィが心配〉というのはどうかと思うが。

「千慧ちゃんもヒマならいこーよー!一生に一度だよ、こんな機会!」

「仕方ないわねー。スィフトと博君も付いてくるなら行ってもいいけど」

「えっ、私!?」

「えーじゃあ直兄もいこーぜー」

「はっ!?」

「あとカケラ取る係はルーファウスさんでしょー。彼とセラって今回の事で進展するのかなー?」

巻き込まれて困惑するスィフトと直人。そして久美は何やらニヤニヤし始めた。何故か二人はラブラブだと思っているらしい。

「てゆーかぶっちゃけ二人だけで良くなーい?敵だって海底まで追ってこないだろうし」

千慧が最もらしいことを言ったが

「二人でなんて、あの二人が行くわけねーだろ」

「そうそう!私達が盛り上げてあげないと♪♪」

「久美さんのはただの野次馬根性でしょー」

スィフトが呆れたようにジト目で見る。

「………何でもいいけど、草原に行くのはオレと兄貴と、到・幸広・みゆりでいいってことだな」

「わかりましたわ」

到と幸広も頷く。

「じゃあそっちはルーファウスが戻り次第彼の指示に従ってくれ。こっちは準備を整えて明日の朝転移する」



☆ ☆ ☆



出発は明日の朝ということで、友美はみゆりの家、到は幸広の家に泊めてもらうことになった。

シャワーを借りた後幸広のいるリビングに顔を出すと、彼は鞄に非常食などを詰めているところだった。

到はずっと、彼が今回の件に対して言及しないことを不審に思っていた。ラファエルの前では話しにくいとかなんとか以前も言っていたが、聞き出すなら今しかない。

「潜水艦の事ですけど。王城の地下にあるなんて全然知りませんでした。君は知っていたんですか?」

「ああ……。あれも千年前に、当時の科学技術とカケラの力を使って造られた物らしい。史書にも書かれていた」

「そうですか………。カケラの力を使っているなら、千年前の物でもおそらく使えるでしょうね」

到は直球で聞くのは苦手だ。だからこうしてあまり重要でない事柄から聞き出そうと思ったのだが、

「………前から言おうと思っていたが、私が今回のことを知っているのではと思っているのなら思い違いだ」

どうやら魂胆が見え見えだったらしい。

「………まだ何も言ってませんが」

「おまえはわかりやすいからな。好奇心旺盛な割りに、かと思えば妙に遠慮がちだったりする」

到は内心憤慨した。自分の思考パターンを読まれているのはなんだか悔しい。しかしまぁ友人だからそんなものかもしれない。

「君は、今回のことについて全然知らないって言うんですか?」

「よく考えてみろ。史書に書かれているのはあくまでも著者であるスルーフが知っていることだけだ。以前も言ったが、スルーフとマリクは地上と天界のただの連絡係。天界に常駐していたわけでもなし、なんでもかんでも知ってるわけがないだろう」

「そう言われれば……。じゃあリズさんの事も知らないんですか?三神とは面識があるみたいですけど」

「書いてあったが少しだけだ。彼女については少し聞いただろう。神々の一人に選ばれていたが、親の反対で神にはならなかったと。それを十二の時に知り、自分にも何か出来ないかと、親の目を盗んで天界に顔を出すようになったらしい」

それを聞いて到はやはりな、と思った。三神に彼女と面識がある以上、天界に来ていたと考えるのが普通だ。

しかしその次の彼の言葉は予想外だった。

「初めはノエルを慕っていたようだが、結局はラファエル様と恋仲になったらしい」

「えっ!?ちょ、ちょっと待ってください!ただでさえノエルさんと双子神は政策の進め方で険悪だったんですよね!?その上三角関係ですか!?」

なんてことだ。それが事実なら泥沼過ぎる。

「そんな酷いものじゃない。彼女とノエルは一回り近く年が違った。おそらく初恋のお兄さんってとこだろう。年頃の少女には、年上の男が良く見えるらしい。特にノエルは政策にしてもなんにしても、強引なところがあったようだしな。それがリーダーシップがあるとか、そんな風に見えたんだろう」

「………それで、だんだん大人になっていく内に〈あれ、この人なんか違うな。リーダーシップっていうよりなんか……横暴?〉みたいなアレですか」

「と、あくまでも私の前世がそう記している」

幸広は淡々と言った。まるで物語の寸評をしているかのように客観的な見方だ。実際彼には前世の記憶もないし、記録を読んでいる感想のようなものなのだろう。しかし。

彼はこの手の話題に関して、ドライ過ぎるのではないだろうか。おそらくみゆりに好かれているのも気付いてないだろうし、気付いたとして「初恋のお兄さん」の立ち位置だと信じて疑わなさそうだ。

(みゆりさんはまだ15才ですからその線がないとは言えませんけど……彼女が本気だとしても、成人するまで進展はムリそうですね)

そう思うと、ほんの少しみゆりが不憫に思えてくる。

(かといって、年上好きって訳でもなさそうですしねえ、望月君……)

聞きたかったこととはてんで違うことを考え始めた到に、幸広が

「知っている私が言うのもなんだが、こういう事は本人から聞く方がいいと思う。特に到はラファエル様からの信頼も厚い。話してくれるのを待った方がいい」

確かに、自分が打ち明ける前に他所から聞いたと知れば、誰だっていい気はしないだろう。

「そうですね。プライベートな事にまで首を突っ込むのは僕の趣味じゃありませんし。僕が知りたかったのは、ルーテさんの目的ですから」

「それは私にもわからない。しかし、私達が今すべきことは、とにかく明日に備えて休む事だ。そういうわけだから、もう寝るぞ」

幸広に促され、到は客間に向かい床につくのだった。


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