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リーディングファンタジア  作者: けろよん


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賢者の助言

 こんなに落ち込んだ気持ちでゲームを終える日が来るとは思わなかった。

 異世界から自室へと戻ってきて、あたしは晩御飯に呼ばれるまでコントローラーを握ってうつむいていた。

 どうしてこうなってしまったんだろう。

 ずっと考えていて、あたしは晩御飯のテーブルの席にお兄ちゃんがいないことに気づくのが遅れてしまった。

 気になってお母さんに訊いた。


「お兄ちゃんは?」

「今日は友達の家に泊まってくるって言ってたわよ」

「友達の家って……」


 あたしにはすぐにピンと来たよ。友達の家に泊まるなんて嘘だって。

 お兄ちゃんはしばらくの間ファンタジアワールドで過ごすつもりなんだ。その為の口裏合わせを友達とやったんだ。

 友達のいないあたしには出来ないことだけど。裏技なんてずるいよ、お兄ちゃん。

 あたしの興奮と憤慨を別の意味で捉えたのだろう。お母さんが注意してきた。


「あなたは駄目よ。女の子なんだし、そそっかしいんだから。お友達の家に迷惑を掛けちゃうでしょ」

「分かってるよ、それぐらい」


 それにあたしには友達なんていないし……

 高嶺ちゃんとは友達になれたと思うけど、委員長でお嬢様である彼女の家でごやっかいになるのも堅苦しそうだ。

 それこそ友達の家にご迷惑をお掛けすることになるだろう。

 それにあたしには今すぐファンタジアワールドに行っても出来ることがない。コウと喧嘩しちゃったから。

 あたしにはどうしたらいいのか分からなくて。その夜はもんもんとした頭を抱えたまま過ごし、就寝して夜が明けた。



 次の日になってもだるかったよ。

 お母さんから『ゲームのやり過ぎよ。没収します』とは言われたくないので元気さだけは装って学校に行く。

 学校の自分の席に着くなり、あたしはどっと顔を机に投げ出した。もう平静を装わなくていいんだ。ここにはあたしのプライベートに干渉する人間はいない。ぼっち万歳。

 昨日はいろいろ考えてばかりいてろくに寝られなかったよ。

 こんなあたしをクラスメイト達が遠巻きに見ていたけど、誰も構う人はいない。構ってくれるのは友達のいる人だけだろう。

 その友達がやってきて声を掛けてきた。


「朝からどうしましたの? 瑠美奈さん。今日はいつもにも増して変ですわよ」

「高嶺ちゃーん」


 あたしは構われたくないと思っていたけど、やっぱり助けを求めていたんだと思う。

 高嶺ちゃんはあたしと秘密を共有する仲間であたしの唯一の友達で、一緒に向こうの世界を旅したあたし達のパーティーの優秀なヒーラー職だ。

 あたしはあっちの世界では回復魔法が得意で助けてくれた彼女に洗いざらいをぶちまけた。

 と言ってもコウと喧嘩をしたってことだけだけど。

 その時のあたしには気づいていなかったけど、クラスの人達がコウって誰? って目で注目してきていた。高嶺ちゃんはあたしの視界に入らないように手を犬の形にして答えていた。

 なんだ犬か。クラスの人達はなぜかあたしが犬を飼っていることは知っていたようで、(世間の情報網って怖い)、それで納得して自分達の話題に戻っていった。


「コウさんと喧嘩をしてしまいましたのね」

「うん、喧嘩といっていいかは分からないけど」


 賢い高嶺ちゃんはどう解決策を示してくれるのだろう。あたしは期待するが、彼女が示したのは別の人の事だった。


「あなたは昨日の斎籐君と高島君がどうしていたか知っていますか?」

「斎籐君と高島君?」


 いきなり他人の話を振って、あの世間話で笑い合っている二人がどうしたというのだろうか。あたしの視線で伝わったようだ。高嶺ちゃんは呆れたようにため息を吐いた。


「あなたって本当に人に興味がありませんのね」

「友達がいないんだから仕方ないじゃない」


 あたしは人付き合いが苦手だから他人の事なんて分からないし、解決策も思い浮かばないんだ。自分の事だけでもいっぱいいっぱいだし。

 高嶺ちゃんはあたしの不満には取り合わず話を続けた。あたしにとっても今は友達がいないことなんてどうでもいいから話を聞いた。


「あの二人、昨日は喧嘩をして口を利いていませんでしたのよ」

「そうだったんだ」


 ちっとも知らなかった。高嶺ちゃんは委員長としてクラス全体の事を把握しているようだった。


「お互いに頭を冷やして次の日からはまた普通に喋り合う。友達ってそういうものではないでしょうか。だからあなたもいつまでも挫けずにまた普通に声を掛ければよろしいのですわ」

「あたしに出来るかな。コウとまた普通に話をするなんて」

「あなたって頭は良くないのに無駄に物事を深く考えますのね。前にやってもらった問題集では難しい問題はあらかた全部飛ばしていたのに」

「う、ばれてる……」

「今のその思考を少しは勉強に振り向けることをお勧めしますわ」

「うん。ありがとう、高嶺ちゃん。あたし、難しく考えすぎてたんだね」

「どういたしまして。悩みを相談していただけて良かったですわ。これからも覚えていてください。あなたが困った時には助けとなる者がいることを」


 助言を残して高嶺ちゃんが自分の席に戻っていく。

 彼女はあたし達のパーティーの僧侶だけど、あたしには賢者のように思えたよ。賢者になるのってああいう人なんだろうね。

 あたしは魔法使いとして頑張るよ。これからもコウを導いていく。

 チャイムが鳴って授業が始まる。向こうの世界に行く前にまずは勉強を頑張らないとね。高嶺ちゃんの期待に応えないと。

 あたしは勉学に勤しんでいった。



 今日の授業を済ませてあたしは家に帰宅する。帰ってきたあたしを玄関横の犬小屋でコウがいつものように迎えてくれた。


「わんわん!」

「ただいま、コウ。今から向こうの世界の君に会いにいくね」


 高嶺ちゃんとそっくりなお姫様が向こうの世界にいたように、もしかしたらこの犬のコウのそっくりさんも向こうの世界にいるのかも。それはもしかしたらあの勇者のコウかもしれない。


「なんてね」


 何てことを思いながら、あたしは自室に入ってテレビの前に座り、ゲームを起動した。

 ゲームの姿をしたヘルプちゃんがいつものようにゲームを始めるかファンタジアワールドに行くかを訊ねてくる。

 あたしは迷わずにファンタジアワールドに行くを選択する。


「いつもありがとう、ヘルプちゃん。それと神様。あたしもっと頑張るから。さあ、精霊ルミナの冒険を始めるよ」


 そして、決意を新たにあたしは異世界へと転移した。

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