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幸せ  作者: 夢野幸
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幸せとは、願いとは、

初めまして。

夢野幸です。


今回は処女作、第一章。

「幸せ」をテーマに書かせて頂きました。

「幸せ」とは何か?「願い」とは?

貴方にとってこの作品がどう映るか。

どう感じ取るか。


楽しみです。




「ねぇ、真緒」



「一つだけ願いを叶えてくれる神様が居たとして」



「あんたなら何をお願いする?」




同級生、幼馴染、そんな肩書きを持つ沙也加は、いつも唐突に、愉快げに“もしも”の話をするけれど、この日は何故か真剣な表情でそう聞いてきた。その時、私は「あー」とか「んー」とか唸りつつ、沢山の候補を彼女に話した後。


「あー!でも、いっぱい有りすぎて決められないよ」


と、眉を下げて笑いながら言った。そうしたら彼女は窓の外の校庭を見下げて静かに言葉を零したんだ。




「そう、それってね、幸せな事なんだよ。」




どうしてか、私はその言葉が強く印象に残った。


沙也加のそんな顔を、出会ってから一度も見た事が無かったからかもしれない。別段、表情が変わった訳でも、なんでもないのに。目を伏せた彼女が唇から落とした言葉は、どこか辛そうに見えた。


その翌日、私は沙也加が死んだ事を学校の朝のホームルームで知った。マンションの屋上から飛び降りたらしい。きっちり脱いだ靴に遺書まで入れて。彼女は死んだ。遺書の内容をはっきりは教えて貰えなかったけれど、これだけは教えて貰った。


── 私は親に虐待されていました。──


先生の口からそんな言葉が飛び出た時、私は心の中で叫んだ。


──── 嘘だ!!!! ────


信じられなかった。悪い冗談じゃないかと思った。だって、沙也加のお母さんはいつも優しくて、そりゃ少し厳しすぎないかって思う事は有っても、普通のお母さんだと思っていた。片親という事で周囲からの偏見も有ったけど、私は彼女の母親が大好きだった。

それに、沙也加から何も聞いてない。お互いの好きな人の事も、ちょっぴり官能的なガールズトークも、私が飼っていたハムスターが死んでしまった時も、なんでも話していたのに。そんな事は、あの幼馴染からは聞いた事が無かった。


衝撃的すぎて、学校に居る時も、家に帰った後も、ぼーっとした儘だった。実感が湧かなくて、まるで、画面越しに世界を見ている気分だった。

自分の部屋で椅子に座った儘、動けなくなった。


その時、LINEの通知音が鳴った。放心状態の儘に、誰から来たのかだけ確認しようとスマホのロック画面に数字を打ち込む。“0129”沙也加と一緒にLIVEに行ったアーティストの誕生日。

LINEを開けば、目に飛び込んで来るのは沙也加と書かれたトークルーム。一番上に来るようにと、沙也加と一緒にお互いのトークルームをLINEのピン機能で固定したのだ。

徐にそこを、開けば、昨日寝る前に打った自分メッセージ。

“今日は一緒に帰れなくてごめん!課題終わらせたから明日から一緒に帰れるよ!”

23:47と書かれた数字の隣には、既読の文字は無い。


ふと、彼女の言葉を思い出す。


──


そう、それってね、幸せな事なんだよ


──


どうして気が付いてあげられなかったんだろう。どうしたの?と聞いてあげなかったんだろう?どうして昨日一緒に帰ってあげなかったんだろう!!

一気に後悔の波が押し寄せて来て、現実が戻ってきて、感情が自分の胸を突き破って、瞳から雫として溢れ出た。凄く胸が痛くなって、体中が熱くなって、悲しみに溺れた。泣き叫ぶ自分の声が遠くに消えた頃、私は漸くあの言葉の意味が判った気がした。


人はどうしようもなく苦しい時、辛い時、しんどい時。絶望した時。それを解決する事を強く望み、祈り、そして願う。

私の願いが纏まらなかったのは、あの時、願う程の絶望が無かったから。


彼女が、沙也加が自殺したのは、願いを叶える為だったんだろう。虐待から逃げたい。その一心で。


どれ程怖かったのだろう。どれ程悩んだのだろう。私には計り知れない。




「ごめん…ごめん沙也加、ごめんなさい。」




部屋に谺響する私の懺悔。


嗚呼、何もかも嘘であったら良いのに。




──────


ここまで読了して頂き、ありがとうございます。


今回の作品は読み終わった後、皆様、それぞれ感じ取る事、思いは違うと思います。


私なりに「幸せ」は何だと思いますか?


と訴えかけたつもりですが…

ちゃんと伝わりましたでしょうか?


コメントにて、皆様のご感想、私の幸せはこれだ!という意見など、お待ちしております。

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