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僕の彼女はイギリス人  作者: ぐーちょきぱん
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惹かれる想い

 行儀が悪い。今の自分の姿を見たらそう思う人がいるだろう。もしここに母親がいたら、おそらく僕を怒鳴り散らしていると思う。しかし今の僕の周りには人の気配はないし、もちろん口うるさい母親もいない。僕はダウニングカレッジの芝生に置かれたベンチに悠々と寝そべり、そんなことを思いながら頭上の空を見上げていた。相変わらずケンブリッジの天気は快晴だ。雲はあるものの青い空がその大部分を占めている。イギリスに来て以来雨というのを一度も経験していないので、イギリスは雨が多いという噂なんて都市伝説ではないかと思うほどだ。僕は時折吹く心地よい風を全身で受け止めながら、1週間があっという間に過ぎたことをふと思った。これほどまでに早く感じた1週間はあっただろうかと自分で思い返してみる。唯一頭に思い浮かんだのは、小学生の時に年末にグアムに行った時だ。マリンスポーツに水族館、カウントダウン花火。海外に初めて行ったこともあって、すべての体験が新鮮だったと思う。しかしその時はまだ物心付いていない時期だったのでそこまで実感がない。楽しい時間というのはその瞬間があっという間に過ぎると言うが、ここまで肌身に感じると逆に恐ろしくなる。それと同時に残された時間もそこまでないと考えるようになり、どこか寂しさを感じている自分もいた。

 平日の授業はとても順調に進んだ。これはお世辞でも何でもないが、ジェスはとても教えるのが上手い。授業の休憩中に教えてもらったことだが、彼女は英語教師の資格を持っているらしく、何度か他の国でも教えたことがあるらしい。どうりで教えるのが上手いのかと授業中に思ったことがあるが、それ以上に彼女にはすごいところがあった。それは、僕たち生徒側に“自信”を持たせるというところだった。ジェスは1人1人の会話に耳を傾け、生徒の話すスピードに合わせて話してくれる。イギリス訛りの無い英語と聞き取りやすいスピードで話してくれたので、決して英語が得意でない自分でも彼女と話していると英語を話せるという“自信”を持たせてくれて、それが授業に対する意欲の向上にも繋がった。また彼女にはジョークのセンスとユーモアも持っているので、そのおかげもあって授業はとても楽しく、あっという間に過ぎっていった。

 待ちに待った土曜日はロンドンへ一日中観光をした。ユウとケースケは案の定、朝早くから彼女の元へと消えていった。ジュンはジムで運動をしてその後はケンブリッジを観光したいと言っていたので、僕は結局1人でロンドンを観光した。ケンブリッジの駅でロンドンの地下鉄を一日中使えるデイリーパスを買い、『世界の歩き方』を片手に約12時間ほどロンドンの観光名所を巡った。僕は1人で行動することにさほど抵抗を感じない身なので、ロンドン1人旅はとても充実した。その場所で会う人々と話し、その場所の雰囲気を全身で感じ、その場所にある歴史に身を投じる。1人で行動していると日常では何も感じなかったことがその時にふと感じることがあり、僕はその感覚が好きだった。だからこそ1人が好きというのはどこか寂しい理由でもあるが、時にそれは自分の生活を豊かにしてくれる。誰にも縛られることなく自分の時間を自由に作るというのは、人間が生きる上で必要な要素なのかもしれない。そんなことを思いながら、自分には彼女がいない独り身であることをどこかで正当化していた。

 日曜日。ケンブリッジの日常は休日ということだけあって、普段にも増して穏やかだった。街にあるお店も昼過ぎになるまで開店せず、その代わりに広場にあるマーケットに朝から人が集まり、多くの人が情報交換や買い物を楽しんでいる様子だった。大学も授業がないせいか閑散としており、聞こえてくる音は鳥のさえずりと、自分の体を吹き抜ける心地よい風の音だけだった。僕は土曜日の疲れを若干感じたまま、目を閉じながらこの日曜日をゆっくりと過ごすためのプランを頭の中で考えていた。街を歩こうか、それとも公園に行こうか。多くの選択肢を一つずつ頭の中で吟味する。それだけでも楽しくて、このまま一眠りしても悪くないと思えてくる。

「リョースケ、こんなところで何してるの?」

 唐突な声が僕を白昼夢から呼び起こした。意識が飛んでいたのか足音さえ聞こえなかった。僕は慌てて目を開ける。目の前には青い空が見えるはずだが、しかしそこには青い瞳があった。

「あら、もしかして寝てた?起こしちゃったのね。ごめんなさい」

 僕を覗き込んでいたのは青い瞳を持った女性、ジェスだった。彼女はそう言うとベンチから少し遠のき、“やってしまった”といった顔でこちらを見た。僕は体を起こし、ジェスの困り顔に対して優しい口調で答えた。

「大丈夫。ただ疲れていただけだよ。昨日一日中ロンドンにいたからね」

「本当に大丈夫?それなら起こすべきじゃなかったわね。ただ何をしているのか気になったのよ。本当にごめんなさい」

 彼女は申し訳なさそうな顔を僕に向けた。その顔は初めて見るもので、いつものジェスとは違っていた。僕はただ目を閉じながら今日の予定を考えていただけで、決して寝ていたわけではない。しかしジェスは僕の眠りを妨げたと思っているらしく、それが顔に出ていた。僕はそんな誤解をジェスにさせてしまったことが逆に申し訳なくなり、すぐに話題を変えようと思った。

「謝らなくてもいいよ。本当に大丈夫。ところでジェスこそ何してるの?」

「私?図書館に向かっていたところよ。借りていた本を返そうと思って。たまたまここを通りかかったらあなたがいたから、声をかけたくなって」

 僕が初めてジェスを見た日。それはダウニングカレッジの図書館から出てくる時だった。きっとその時に借りた本を返しに来たのだろう。僕はそれを彼女に言おうか言うまいか迷っていたが、自分の中だけの秘密にしようと思い、開きそうになった口を閉じた。するとジェスは不思議そうな様子でこちらを見つめた。

「どうしたの?本当に大丈夫?顔色が良くないけど」

「大丈夫。ただ今日の予定を考えていたんだ。残念ながら何の予定もなくて。ジェスはどこかおすすめの場所とかって知ってる?ここのケンブリッジあたりで行ったほうがいい場所とか」

 すると彼女は両手を腰にあて数秒ほど考えた後、口を開いた。

「そうね。ここの近くにある美術館には行った?一応ケンブリッジでも有名な場所なんだけど」

「行ったよ。フィッツウィリアム美術館でしょ?なかなか楽しかったよ」

「それはよかったわ。そうね・・・・それなら、パンティングはもうした?」

「パンティング?そんな言葉初めて聞いたけど。それは美味しいの?」

 聞き慣れない言葉に僕はジョークを交えた口調で答える。

「あははは。そうね、美味しそうに聞こえるけど、残念ながらそれは食べ物じゃないわ。ボートのようなものよ。ここの近くにケム川という川があって、そこでボートを使って川を渡ることをパンティングって言うの。ケンブリッジに来たら一度は体験した方がいいわね」

 そういえば少し北の方角へジュンたちと散歩した時に、川を渡ったことを思い出した。そこにたくさんの小舟があったが、もしかしてそれのことを言っているのだろうか。だとしたら、こんな穏やかな日なほどパンティングに最適な日はないだろう。僕は今日の予定にパンティングを候補に入れようと自分自身に相槌を打った。

「それはやってみたいね。ちなみにそれは僕だけでもできるのかな?実はボートに乗ったことなくて」

「心配しないで、大丈夫よ。そうね・・・・よかったら、これから私と一緒に行く?」

「・・・・え?」

 ジェスの唐突すぎる誘いに僕は言葉を無くした。

「私もこの本だけ返したら今日は暇なのよ。パンティングなんてこのケンブリッジに来て以来1回しかやったことないし。それも2年ほど前にね。今日はとても良い天気だし、よかったらだけど、私と行かない?」

「本当に言ってる?」

 僕は彼女がまたお得意のジョークを言っているような気がしてならなかった。

 彼女は学生でもあり今は教師も担っている。いわば二足の草鞋を履いている彼女は勉強や準備で忙しいはずだ。そんな彼女が僕とパンティングをしたいと言っている。何かの冗談だと思うのは仕方のないことだった。

「本気よ。ついでにケンブリッジを案内してあげる。心配しないで、お金はとらないから。無料よ。無料」

 ジェスは少し笑みを浮かべ、“悪い話ではないでしょ?”といった表情で僕を見つめた。その瞳の奥はジョークを言っているようには見えない。彼女は本気らしい。たまたまこのベンチに寝そべり、たまたまそこでジェスと遭遇し、そしてパンティングを誘われた。まさかすぎる展開で僕の頭の中は混乱状態だが、それでも自然と口から感謝の言葉が出た。

「ジェス、ありがとう。他に誰か誘う?」

「そうね・・・別に2人でもいいんじゃない。私は構わないけど。誰か誘いたい?」

 一瞬ジュンのことを考えた。おそらく彼は今日もケンブリッジにいるだろう。連絡先も知っているし誘えば来ると思ったが、彼女の“2人でも” という言葉が脳裏をよぎった。ジェスと2人で行動する。もしかしたらこれを機に彼女のことをもっと知ることができるかもしれない。そんなことを思った矢先、僕は無意識に答えた。

「みんなロンドンに行ってるから、誘える人がいないよ」

「そう。なら2人で行きましょう。楽しみだわ。2時くらいにあの図書館集合でいい?」

 そう言うとジェスはダウニングカレッジの図書館を指差し、僕に同意を求めた。

「うん、それで大丈夫。何か持って行くものある?」

「特にないわ。そのままで大丈夫よ。そのクールな姿でね。それじゃあまた後で」

 ジェスはそう言うと僕に手を振って、そのまま芝生を横切って図書館の中へと消えていった。僕は彼女が消えるまでその目で彼女を見送った。喜びで爆発しそうな体をなんとか抑えクールに振る舞った自分の顔も、彼女が見えなくなった途端にその歯止めを失った。僕の顔からこれまでにない笑みが溢れる。客観的に見ると最高に不気味だろう。しかしここには誰ひとりとしていないのだから、人目を気にする必要はなかった。それをいいことに僕は大きなガッツポーズをして再びベンチに寝そべった。空は晴れたままで景色は何も変わっているはずがないのに、なぜか自分の目にはさっきより空が蒼く、そして透き通っている気がした。これからジェスと2人でパンティングをする。そう考えただけで自分の心臓の鼓動が早くなっていく。その鼓動は徐々に大きくなり、体が張り裂けるのではないかと思うほどだ。僕は落ち着くために一旦深呼吸をした後、自分の腕時計を確認した。時間は午前11時45分。約束の時間まではまだ長い。しかし自分の心が浮き足立っているのか、なぜか体を動かしたくてうずうずしている。僕は本能に身を任せ勢いよくベンチから起き上がると、少し散歩をしようと歩き始めた。とくに行く当てなどない。ただ今はこの感情の流れに身を任せておこうと思った。きっと僕を見たことない世界へ連れて行ってくれるだろう。そんなことを思いながら。


 −ジェスに対する想いがどんな感情なのかはわからない。彼女に初めて会った時に感じたあの感覚は初めてのもので、それが僕の頭の中で巡りに巡って混乱させる。ただ彼女と話していると楽しくて、いつまでも話していたいと思うし、彼女を見ているとどこか幸せそうで、いつまでも見ていたいと思う。彼女からパンティングを誘われた時、嬉しいという感情を通り越した何かを感じた。もっとジェスのことを知れば、彼女に対しての感情がわかる気がした。この胸の中にあるモヤモヤを取り除く絶好のチャンスだと思った。“何も変わらない”現実が”何か変わる”気がして、そんな期待を胸に抱きながら、午後2時を迎えた−


 午前中よりも日差しが強く、半袖のTシャツだけで十分快適に過ごせるほど気温も上がっていた。僕は時間である午後2時になる10分前から図書館の前にいる。どこかそわそわしか感覚で落ち着かない。それが興奮と緊張の感覚であることを僕は知っていた。というのも、1時間ほど前からその状態だったからだ。恥ずかしながらお昼ご飯も喉に入らないほどで、シャワーを浴びて身なりを整えた後、とりあえず自分のパソコンで宿題をしながら時間を過ごした。ただ宿題もどこか上の空で、本当にやっていたかというと否定はできない。今度こそ宿題に集中するためにここの図書館を利用しようと、目の前にある図書館を見つめた。改めて見るとダウニングカレッジの図書館というのは一つの建造物として完成された造りだった。入り口には4本の支柱がその佇まいを支え、真っ白な外観が来る生徒を迎え入れる。図書館というよりかは、どこか美術館のような一つの歴史的建造物の印象が強かった。

「図書館には見えないでしょ?」

 後ろを振り返ると、いつの間にかそこにはジェスがいた。初めて会った時と同じ黒のドレスと赤のドクターマーチンを履いて、いつものバッグを右肩にかけていた。僕は彼女の存在を目で確かめた後、再び図書館の方へと目をやった。

「そうだね。どちらかというと美術館みたいだよ。ジェスはここの図書館にはよく来るの?」

「よく来るわ。ここの図書館が好きなの」

 彼女は僕の横に並ぶと、図書館を見つめながら目を輝かせてそう言った。僕はジェスを横目で眺める。

「そうなんだ。でも、なんで?」

「そうね、言葉で説明することは難しいわ。でもここに来てたくさんの本に出会うと、なんだか私をどこか知らない世界に連れて行ってくれる気がして。それが好きなの」

 そう言う彼女の瞳はより一層輝いて見えた。図書館と聞くとどこか薄暗くてもの静かな印象を持つが、彼女にとって図書館という存在は未知の世界へと誘う宇宙のような場所らしい。

「その感覚、なんかわかる気がするよ。言葉で説明することは難しいけどね。僕もよくいろんな場所へ行って、そこでいろんなことを感じることが好きなんだ。ちょうど昨日ロンドンでそんな体験をしたよ」

「それはいいことね。なら今度はここのケンブリッジでそれを感じる時よ。パンティングは楽しみ?」

 ジェスの口調にもどこかワクワクさが感じ取れる。僕は彼女の問いに素直に答えた。

「とても楽しみだよ。楽しみすぎてお昼ご飯も食べられなかったくらいだし、宿題も集中できなかったよ」

「あら、それは面白いジョークね」

 ジェスははにかんだ表情でそう言った。それは“冗談でしょ?”と僕に訴えていた。しかし、冗談ではない。まるで食事も喉を通らなかったし、宿題もまったくできなかったのは紛れもない事実だ。ただジェスがそれをジョークだと思ってくれるのは幸いなことだった。もしそれを真に受けていたら、彼女は僕のことを面白可笑しい奴として見るだろう。

「ジョークだったらいいんだけどね。残念ながら本当だよ」

「それなら私が宿題を手伝ってあげる。2人でやればあっという間よ」

「確かにそうだね。ありがとう」

「どういたしまして」

 ジェスはそのまま話を続けた。

「ケム川はここからは少し遠いわ。結構歩くことになるから、もし疲れたら言ってね」

 そう言うとジェスは“行きましょう”という合図を出し歩き始めた。僕はそれに答えることなく彼女の背中を追うように歩き始める。ケム川までは少し距離があるとジェスは言ったが、そんなことは僕には関係なかった。少し空腹感を感じるものの、どこからともなく力が漲ってきて、今の僕はどこまでも歩いていける自信があった。さっきまで感じていた緊張の感覚は見る影もなく、今は興奮というワクワクした気持ちが胸を躍らせていた。こんな気持ちを感じるのはいつぶりだろう。考えてはみたものの、思い当たる節はない。きっと初めてなのかもしれない。そんなことを思いながら僕はただ感情に身を任せ、前を歩くジェスの姿に引かれるようにカレッジを後にした。


 昼過ぎにもなるとケンブリッジはいつもの賑わいを取り戻していた。観光客というよりかは現地の人々、ケンブリッジの生徒で街は活気付いており、車や自転車の往来も激しい。僕はジェスに先導されるように彼女の背中を追いかけた。ジェスはどちらかというと細身で華奢な体型なのだが、人々の波をかいくぐり少し前に見える彼女の背中はどこか大きくて安心感があった。ある程度街を歩き続け人々の往来が少なくなると、ジェスはこちらを振り向き僕と歩調を合わて口を開いた。

「さすが日曜日ね。人が多くて驚いたわ。でもここまで来ればもう大丈夫。あとはゆっくり行きましょう」

「そうだね。慌てる必要もないし」

「その通り。ケム川までもう少しよ」

 ジェスはそう言うと、ケンブリッジの案内を始めた。通りがかったカレッジの説明から始まり、そのカレッジでは何が学べるのかといった具体的な説明やケンブリッジ大学の出身者、またおすすめのお店やカフェまで紹介してくれた。毎日のようにケンブリッジの街を歩いていたはずなのに、初めて歩く街の景色はどこか違って見えた気がして、それがますます僕の好奇心を刺激する。偶然通りかかった道で『ニュートンが重力に気づいたリンゴの木』を見かけると、ジェスはそこに集まっている人たちを横目に“ただの木だ”と一蹴して笑っていた。僕は一方的に彼女の説明を聞くだけだったが、彼女が楽しそうに説明する姿を見飽きることは決してなかった。彼女と同じ場所を歩き、同じ時間を共有していることが何より楽しかった。景色が違って見えるのもジェスがここにいるからなのかもしれない。だとしたらこんな時間がもっと続けばいい。そんなことを頭の中で思った矢先、目的のケム川までたどり着いた。川と聞くと大きいイメージを持つがケム川の幅はそこまで広くはなく、深さも2mもないほどの印象を持つ。僕たちはケム川に架かる短い橋の上からパンティングを楽しむ他の人たちを眺めた。

「到着よ。疲れた?」

 ジェスはケム川の川面を見つめた後、僕の顔へと目線を向けた。

「全然。ジェスこそ疲れてない?」

「私もまったく疲れてないわ。むしろ楽しかった」

 ジェスの目線が再び川面へと移った。彼女はパンティングを楽しむ人たちがこちらに手を振ってきたを見て、笑顔で振り返している。僕もぎこちない素振りで彼らに手を振り返した。風で乱れた前髪を整え、目を閉じてみる。時折吹く風を全身で受け止めるとその風が川特有の匂いを届け、僕の嗅覚を刺激した。普段は川や海の匂いというのを好きにはなれないが、今回ばかりはその匂いを好きになれた。穏やかな川の流れがケンブリッジの日常に溶け込む様はまさに平和を象徴しており、ここに何時間もいられる気がした。

「さぁ、行きましょう。あっちに乗り場があるわ」

 ジェスは僕にそう催促すると、橋の角にある階段を降り乗り場へと向かった。僕は彼女にパンティングの料金を渡し、ボートに近づく。ジェスはスタッフに料金を支払うと、何やら会話をしていた。僕は小柄なボートを眺めながら、もしも川に落ちてしまったらどうしようかというくだらない妄想を働かせた。するとジェスが軽い足取りでこちらに向かってきた。

「お待たせ。リョースケ、準備はいい?」

「もちろん」

 僕がそう答えると彼女は笑みを浮かべた。僕はボートの真ん中に座り彼女を待った。しかしジェスはボートに置いてあった自分の身長の1.5倍はあるオールを片手に持ち、“行くわよ”と僕に促した。

「ちょっと待って。ジェスが運転するの?」

 僕はてっきり船場にいた屈強な男性スタッフが運転してくれると思っていたので、彼女がオールを手にした瞬間、状況を理解できなかった。このボートを彼女が運転するつもりなのだろうか。パンティングを1回しか経験していないと言っていたので、彼女はボートを漕ぐことに関しては素人のはずだ。僕はもし川に落ちてしまったらというさっきの妄想がどこか現実になるような気がして、一瞬身震いした。自分自身泳げない体質なので、落ちた時のシミュレーションを考えるので頭がいっぱいになる。するとそれを察したのか、ジェスは半笑いで僕に言った。

「大丈夫。落ちたら私が助けてあげる。こう見えても泳ぐのは得意なのよ」

「本当に?」

 僕は不安を隠しきれないままでいた。

「リョースケ。あなたは先生の言うことを信じた方がいいわ。私はあなたより強いんだから」

 そう言うとジェスは自分の筋肉を自慢するように腕を上げた。そして彼女はオールを軽々と持ち上げてボートを船場から引き離した。僕は多少の揺れを感じたものの、ボートが船体を維持して川をゆっくりと流れるのを感じると一時の不安から解放された。ボートが僕たちのいた橋の下をくぐり始める。あたりが一瞬真っ暗になったが、すぐに明かりが一面に広がり始めた。ただボートが橋の下をくぐっただけのことだが、しかし僕からすればその明かりがどこか新しい世界へと誘う光のような気がしてワクワクせずにはいられなかった。

「どう?キャプテン・ジェスの運転は安心でしょ?」

 ジェスはオールを両手で漕ぎながら訊いてきた。

「そうだね。『タイタニック』に乗ったような気分だよ」

「あはははは。それは最高ね」

 ジェスの笑顔に僕は笑顔を返した。僕は体を再び前へと向けて目の前に広がる景色を全身で楽しんだ。川との距離がここまで近く感じるのは初めてだった。手を水面に近づけると小さな水しぶきを上げ、その水温が手の感覚を通して体に伝わってくる。川を泳ぐ鴨の群れを避け、前からこちらに向かってくる他のボートに挨拶を返し、ボートはゆっくりとしかし着実に前へと進んだ。ケム川は多くのカレッジに隣接しており中にはそのカレッジ内を通っていることもあるので、パンティングはカレッジ見学だけでも十分楽しめるようになっている。先ほどまでカレッジを外から眺めていた自分にとって、その内観が見られるというのはどこかカレッジの歴史に触れているよう感覚で、僕は夢中になった。1人でパンティングの景色を楽しんでいると、運転に慣れたジェスがオールを漕ぎながら口を開いた。

「リョースケ、ひとつ質問してもいい?」

「もちろんいいよ」

 僕は体をジェスへと向けて答えた。

「なんでイギリスに来ようと思ったの?」

 とても単純な質問に僕は感じていたことをそのまま口にして彼女に伝えた。

「シンプルな理由だよ。ただイギリスが好きだったからね。ゴルフにフットボール、PaulSmithにBerbury。小さい時からイギリスが僕の身の回りにあったんだ。だから海外に行くならイギリスにしようと思って。それだけだよ。本当にシンプルでしょ?」

「確かにシンプルな理由ね。でも時にはシンプルさって重要な気がするわ。考えすぎると何もできないことがあるから。あなたは間違ってないと思うわ」

 どこかで聞いた言葉だった。しかし考える隙も与えず、彼女は続けた。

「リョースケってどこかイギリス人っぽいところがあるわよね。むしろイギリス人よりもジェントルマンよ。あなたみたいな男性を他に見たことがないわ」

「ジェスは日本人に会うのが初めてなの?」

 僕は軽いジョークで彼女に答えた。

「あはは。そういう意味じゃないわ。あなたみたいなジェントルマンでジョークが上手い男性に会うのが初めてって意味よ」

「ジェントルマンでも何でもないよ。ただの日本人さ」

 僕は自分自身を鼻で笑うように答えた。

 言葉通り、僕はただの日本人だ。それでも彼女の僕へと向けられた眼差しに嘘は感じられなかった。僕はその青い瞳に吸い込まれそうになるのを感じ、逃げるように話題を変えた。

「ジェスはどうして文学を勉強しているの?」

「いい質問ね」

 すると彼女は動かしていた手を一旦止めて、真剣な表情で答えた。

「そうね。変な風に聞こえるけど、私は文字が好きなのよ。文字って私たちの歴史を物語る一つの手段でもあるじゃない?ずっと昔からあって、今もその形を変えて生きている。もちろん死んでいく文字もあるわけで、いわば生き物のようなものよ。だからそれを学んで研究していけば、私を知らない世界に連れて行ってくれる気がするの。さっき図書館で言ったっけ?ごめんなさい。変に思うでしょ?」

「全然変じゃないよ。ジェスは本を読むことも好きなんだよね?」

「ええ、そうよ。本とかを読んでいるとその著者によって文体が違うでしょ?その人の個性というのを感じることができるの。その人の世界と言ったほうがいいかしら。とにかくその人の世界の一部に私もなれた気がして、そこからその作品であったり、その著者のバックグラウンドを感じられるのが楽しいし好きなのよ。日本だったらハルキ・ムラカミかしら。彼はすごい作家だと思うわ。文字通り、私は“本の虫”よ」

 ジェスは時折笑いながら語っていたが、彼女の口調には一切の迷いはなく、彼女の瞳には真剣さがあった。彼女がなぜここケンブリッジ大学で文学を学んでいるのかが垣間見られ、どれほどの情熱と期待を持って勉強しているのかがわかった気がした。日本ではこういう志を持った生徒は“意識が高い”と揶揄されるだろう。しかし海外の大学ではこれが普通であって、ケンブリッジ大学ではなおさら当たり前の光景なのかもしれない。だからこそ著名な人物が卒業し、世界の大学ランキングでも上位にいるのだろう。僕は彼女のその語り口調と真剣な眼差しになぜか自分を重ね、大学で生半可に勉強している自分を恥ずかしく思った。それと同時に彼女をどこか遠い存在のように感じ始め、途端に彼女と距離を感じた。まるで手に届きそうだった光が一瞬のうちに遠くへと行ってしまったかのような感覚だ。

「ごめんなさい、リョースケ。今のは忘れて。ほら、パンティングを楽しみましょう」

 ジェスは僕が無言になったことを心配したのか、オールを握りしめ船を動かし始めた。

「なんで謝るの?僕は大丈夫だよ」

 それ以上言葉が口から出なかった。様々な感情が僕を押しつぶし、胸を苦しくさせた。その感情の正体も何かわからず、自分の中にさらにイライラが募った。

「本当に大丈夫?さっきからずっと静かだから、心配なのよ」

 僕は何か言おうと必死に言葉を絞り出す。

「ジェスの言葉に感動したんだよ。それにすごいとも思う。そんな風に勉強している人に僕は初めて会ったよ。僕も勉強を頑張らないとって思ってね。すごい刺激をもらったよ」

「ありがとう。そう言ってくれて嬉しいわ。私に手伝えることがあったら何でも言ってね」

 ジェスはそう言うと安堵の表情でこちらを見つめた。彼女に笑顔が戻っていた。先ほどの真剣な眼差しを向けていた彼女とは違った、いつも僕が見ているジェスがそこにはいた。やはり彼女には笑顔が似合う。笑顔が一番のメイクアップとは言うが、それは彼女のために作られた言葉ではないかと思うほどだ。その笑顔を見ていると、自分の中に募っていたモヤモヤもどこかえ消えていく。さっきまでいろいろ感じていた自分がどこか馬鹿らしく思えて、それと同時に胸の中が晴れた気がした。僕は感謝の気持ちを伝えようと思い、彼女へと顔を向けた。

「気持ちが良いよ。パンティングって最高だね。ジェス、誘ってくれてありがとう。とっても楽しいよ」

 するとジェスは普段よりも顔を赤らめて僕との目線を下にはずし、どこか恥ずかしそうな表情を見せた。

「私もよ。とても楽しい。今までで一番楽しい時間よ。こっちこそありがとうって言いたいわ」

 ボートは速度こそ遅いものの、ゆっくりと前へ進み始めた。止まっては動き始める、そんなボートの動きはまるで僕の心情を表現しているようで、どこかおかしく思える。僕は彼女の運転に身を任せ、再び前を見た。もう川へ落ちるという不安は微塵も感じない。僕は背中に感じる彼女の存在を信頼していた。お互い無言の時間が流れる。それでもジェスへと振り向くと、彼女は僕に笑顔を返してくれた。そんな何でもないこともどこか嬉しくて、僕の胸の中にある感情を満たしてくれる。お互いの無言が作り出した空間はなぜか居心地が良くて、僕はしばらくこの時間を楽しもうと思った。ジェスも同じことを思っているのだろうか。彼女もしばらく口を閉じ、両手で力強くオールを漕ぎ続けていた。時折そのオールの先端が川底を叩くコツンという音が僕たちの空間にこだまする。それにつられるように鴨の群れが鳴き始め、川面から地上へと飛び立っていった。僕はその鴨の群れに目を運び、羽ばたく翼の音に耳を傾け、平穏さに包まれたケンブリッジの休日に感謝した。一日中ロンドンという大都市へ観光に行けるほど幸せなことはない。しかし、自分の泊まっているこんな身近な場所にでもひとつの幸せを感じられることもまた事実だった。僕はその幸せを噛みしめるように、またそれが彼女のおかげであることに感謝しながら、ボートが前へ進むのを見守った。ある程度の沈黙の後、僕たちは再び会話を始めた。ジェスになぜ日本人に英語を教えることになったか聞くと、驚くことに彼女は日本に興味があると言っていた。しかもジブリが大好きらしい。『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』が好きと言っていたが、オススメは『ハウルの動く城』で、好きなキャラクターはカルシファーだと言っていた。そうジブリ愛を語る彼女の瞳にはまた違った輝きが満ちており、より彼女に親近感が湧いた。またきゃりーぱみゅぱみゅがどうやらオススメの歌手らしく、彼女が唯一発音できる日本語でもあった。ジェスは彼女の存在こそ日本の“カワイイ”文化を代表するものだと豪語し、どこか日本の文化を違った面で理解していることが面白くて僕は笑みがこぼれた。それでも日本という異国の文化をありのままに受け入れて、そしてそれを好きになってくれている彼女の姿勢に僕は尊敬の思いを抱くと同時に、もっと彼女に日本のことを知ってほしいと思った。僕たちは残されたパンティングの時間を日本の話で過ごした。


 パンティングを終え、僕たちはボートに乗った船着場へと帰ってきた。気がつけば約2時間ほど時間が経っていた。まもなく夕方になるケンブリッジは以前として太陽が顔を出し、まだ活気に満ちている。僕は時計を見て、過ぎ去った時間があっという間だったことに内心驚いた。この感覚はジェスと初めて自己紹介した時と同じだった。体感的にはほんの一瞬のようで、むしろ時間が足りないと感じる。もっと時間があれば。そんなことを思わずにはいられなかった。しかしそう感じていたのはジェスも同じらしい。

「とても楽しかったわ。もっと時間があったらね・・・」

 ジェスの話し声は歯切れが悪く、どこか残念そうに聞こえる。

「僕も楽しかったよ。よかったらまた今度やらない?今度は僕が運転するから」

「そうね。また行きましょう。『タイタニック』に乗る覚悟はできているわ」

「はははは。それは良かった。でももしジェスが川に落ちても、助けることはできないよ。僕は泳げないからね」

「大丈夫。私はマーメイドよ。強いんだから」

 ジョークが言えるほどに、彼女の話し声は徐々に元気さを取り戻していた。やはり彼女の元気な表情はとても魅力的だった。その表情を見ていると自分の負の感情が自然と浄化され、全てを忘れさせてくれる。目の前にいる彼女はまさに太陽のような存在だった。僕は彼女の一つ一つの仕草に夢中になっていた。

「さぁ、帰りましょう」

 そう言うとジェスは再び僕を先導するように歩き始めた。帰りは行きと少し違った道を歩き、その道中でおすすめのカフェを数件紹介してくれた。日本でも有名なパンケーキのお店やホットチョコレート(ココア)が美味しいカフェ。お店の前を歩くたびにそこから美味しそうな匂いがして、僕は自分のお腹が悲鳴をあげているのを感じた。お昼ご飯を食べていない。正確には食べられなかった自分にとってその匂いは拷問のようで、思わず口元からよだれが出そうになる。それを必死にこらえるので精一杯だった僕は自然と足取りが早くなった。ジェスは時々そんな僕の行動に不審さを抱きながらも、気にするそぶりを見せずに歩き続けた。帰りの会話もパンティングで盛り上がった日本の話が中心だった。ジェスは日本には興味があるものの、一度も行ったことがないと言っていた。彼女はなぜか下北沢に一番行きたいらしく、なぜかと聞くと下北沢にある古着屋や古本屋に行きたいからというなんとも通な理由だった。僕は彼女が日本に来る機会があったら東京を案内することを約束すると、ジェスは目を輝かせながら嬉しそうな表情をつくった。彼女は「旅行のプランを今すぐ作るわ」と言うとその足取りが軽快になり、歩いていた僕よりも先へと進みこちらを振り返った。そんな何でもない仕草も僕にとっては新鮮で、自分の感情を刺激する。ケンブリッジの街には人が大勢いるはずなのに、自分の目にはジェスだけが映っていた。彼女だけが光り輝く存在として僕の目の前に存在しており、それがこの街の景色を違ったものにしていた。僕は彼女を追いかけるように走り始める。今まで感じたことのないこの感情にもうすぐ答えを見つけられそうな気がして、僕は自分の胸が高鳴っているのを感じた。その胸の高鳴りに身を委ねたまま、まもなくして僕たちはダウニングカレッジへと戻った。


 カレッジを抜け、フラットがある路地裏までジェスは僕を見送ってくれた。

「ジェス、ありがとう。君のおかげで今日は最高の1日だったよ。ロンドンに行った時以上に楽しかった。本当にありがとう」

 僕の口から自然と言葉が出た。自分で考えたことを一旦脳内で英語に変換することなくその言葉が出たことに内心自分でも驚いていたが、僕は冷静だった。その言葉は自分の様々な感情を心の中でろ過させた、ジョークでも取り繕ったものでもない、純粋な感情を表現したものだった。ジェスはその僕の眼差しを見て何かを感じたのか、まっすぐに僕の目を見て答えた。

「私もよ、リョースケ。ケンブリッジに来て以来一番楽しかった。ありがとう」

 すると彼女は一旦肩にかけていたバッグを地面に置き、さらに言葉を続けた。

「本当にありがとう」

 その瞬間、ジェスは僕にハグをした。それは欧米ではいわゆるスキンシップの一つでもあり、僕もよく映画やドラマで見たことがある。とくに大きな意味というのはなく、それは家族でも友人でも、異性との間でもするものだというのは僕もわかっていた。それでもハグをされたのは久しぶりだった。というよりも、初めてに等しい。小さい時に両親からよくされただけであって、他人とハグをするというのは日本の文化にはない。今までの僕であったらきっと動揺を隠すことができないだろう。しかし僕は依然として冷静だった。彼女の手が僕の背中に回ったのを感じると、自然と僕の手も彼女の背中へと回った。僕はジェスのハグを全身で受け止める。彼女の匂いや肌触り、体温が自分の体を通して伝わり、彼女の思いというのが僕の胸の中へと届いた気がした。それはやまびこのように、何重の音色となり僕の体の中へと響き渡った。言語は違えど彼女の思っていることを理解できた気がした。その瞬間の思いを言葉で表現することは不可能だろう。それでもただそれが嬉しくて、それと同時に言葉を超えたコミュニケーションがこの世に存在することをその時初めて信じた。ハグをし終えるとジェスは僕から少し離れて、バッグを肩にかけ言った。

「それじゃあ、また明日。バイバイ」

 彼女はそのまま振り返り、路地を歩き始めた。彼女の香水の匂いがまだ僕の周りには残っていた。どこの銘柄かはわからない。ただそれは甘くて、それでいて僕を包み込むような、どこか安心感を与えてくれる匂いだった。

「また明日」

 僕は遠くに離れたジェスに手を振りながらそう言った。すると彼女はこちらを振り返り、笑顔で応えた。そんな彼女の笑顔は幸せそうで、それが僕を幸せにしてくれる。幸せの連鎖という言葉があるとするなら、まさにそれが今の僕たちの周りには起きていた。ジェスはそのまま角を曲がるとその姿が見えなくなった。僕はそのまま立ち止まり、その路地の角を見つめながらしばらく呆然と立ち尽くした。


 − 今日一日で何かが変わったかどうかはわからない。自分の中で何か答えを見つけたわけでもない。しかし、一つだけわかったことがある。僕は彼女に惹かれている。彼女の一つ一つの行動や仕草に夢中で、もっと彼女のことを知りたいと思っている自分がいる。こんな感情は初めてだった。僕が彼女を初めて見た時に感じたあの感覚がもうすぐわかる気がして、でも知ってしまったら後に引き返すことができない気もしている。そんな交錯した思いが僕の頭をよぎっては消えていく。それでも賽は投げられてしまった。それがどんな答えになるとしても、僕は全てを受け止めようと思った。動き出した歯車を止めることができないように、この惹かれる想いを止めることはできないのだから −


 僕は路地の角を見つめた。そこにジェスはいない。それでも彼女の面影をどこかで感じた。明日もまた会える。授業があるから当たり前だと思っていても、なぜかそれが嬉しくて、楽しみで、心が弾んだ。僕は振り返りフラットへと帰ろうとその場を去った。ジェスの甘い香水の匂いがまだそこには残っていた。

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