序章
空港の出発ゲートを前に、別れの時がやってきた。僕は彼女の手を強く握りしめた。彼女もそれに応えるかのように強く握り返す。その目には涙が溢れ、化粧のアイブローを落とし、黒い涙が頬に流れる。彼女は泣きながらも、震える声で呟いた。
「行きたくない」
僕は彼女の手を握るのを止め、その代わりに彼女を強く抱きしめた。
「僕も行ってほしくない。でも行かなきゃ。君の将来のためにも」
「今度はいつ会えるの?」
「わからない。でも、また会えるよ。必ず」
「誓ってね。私を見捨てないって」
「誓うよ。君を愛してるんだから」
「私もあなたを愛してるわ。心の底から愛してる」
僕の目からも涙が溢れた。行ってほしくない。彼女をこのまま触れていたい。それでも僕は自分の感情を押し殺し、彼女を行くように促した。お互いの唇が優しく触れるのを最後に、彼女は荷物を持ち歩き始める。彼女は出発ゲートから見えなくなるまで僕に手を振り続けた。僕は笑顔で彼女に応えたが、彼女の姿が見えなくなると、両手で顔を覆い、人目をはばからず泣いた。辛い、悲しい、寂しい。どの感情をとっても今の自分の気持ちを表現することはできなかった。自分の心にはただぽっかりと穴が開いたような感覚だけが残っていた。国際恋愛は難しく、そして苦しい。それでも、これが僕たちの選んだ道であり、正しい選択だと自分に言い聞かせた。どんなに離れていても、この感情を止めることはできない。なぜなら、僕は彼女を、あのイギリス人女性を、心の底から愛しているのだから。