一章 解き放たれた三編みグルグル眼鏡 7
翌日、登校して教室へ入るとサッカー部の坂部とバンド部の坂東にトイレへ連行された。今日はこの2人だけだったのでギチギチしなくて済んだ。暑苦しいことには変わりないけれど。
「それで!? どうだった!? どうだった!?」
坂東が鼻息荒く俺に詰めよってきた。目がギラギラしていて怖い。そしてその情熱を音楽に使って欲しい。
「訊いたけど、やだって」
「えええええ!? マジ~!? 本当は訊いてないとかじゃないだろーな!?」
「ちゃんと訊いたって。俺と舞は付き合ってるわけじゃないから嘘つく理由ないぞ」
「うっ……そ、そうか」
「そういうわけだから自分で話しかけてくれ。坂部もオッケーか?」
「ああ。そもそもオレはほぼコイツの付き添いだったからな。委員長としての野次馬根性もあったが」
坂部、イケメンでサッカー部で委員長だったのか。モテ要素たくさんあるけど野次馬て。
「そうか~。それじゃ花園は諦めるかな~。もっと捕まえやすそうな子にシフトするか~」
「なんという……チャラ男……」
「と、思うだろ? でもこいつ、彼女いたことないぞ」
「えっ!? なんか意外だな……百戦錬磨感出てるのに……」
「おれっちなんでモテないんだよぉ~! モテるためにサッカーを捨ててバンド部に入ったし、染めたくないのに金髪にしたのに! モテない!!」
「坂部はモテそうだよな? やっぱり彼女いる?」
坂東の魂の叫びはスルーしてイケメンに確認してみる。そう、確認だ。彼女はいること前提の質問だ。
「……」
「坂部? おーい? ま、さか……」
「なぁ、高坂」
「お、おう」
「オレって、なんでモテないんだ?」
「ええええええ!? いや、え、ええええええ!? うせやろ!?」
「マジだって高坂。おれっちとこいつは小学校からの幼馴染みだけど、ラブレターすらもらったことないんだぜ!」
「なんで!?」
衝撃の事実だ。坂部がモテなければモテる男というのは何が必要なのか。さっぱりわからない。
「わからん。いったい、何がいけないのか……」
「アレかな、もう彼女いるだろって思われていて、対象にすら入らないとか?」
「それはありうるな!! おれっちもその仮説に1票!」
「何故だ……」
坂部はがっくりと項垂れてた。悲壮感が漂っている。ん? というか。
「だったら坂部から能動的に動けば良いのでは? 俺はあんまり色恋沙汰には詳しくないけれど、坂部から告白すれば大半オッケーもらえるのでは?」
「……」
「坂部? おーい? ま、まさか、天丼!?」
「なぁ、高坂」
「お、おう」
「オレが好きになる女はなんで、みんな訳ありなんだ……?」
深く訊いてはいけない気配がした。おしゃべりな坂東ですらうつ向いて黙っている。これは掘り下げてはいけないやつだ。
「ま、まぁ、坂部なら絶対、素敵な女の子と付き合えるって! うん!」
「だ、だな! おれっちもそう思う! そーいや、高坂はどうなん?」
「俺もラブレターもらったことないし、何か用事でもない限り、女子から話しかけられることもないぞ」
「……。ほ、ほら、高坂には花園が……」
「舞は親友だから性別を超越してるよ。男、女、舞、みたいな感じ。たぶん舞も同じように考えてるだろうし」
「そういうもんか?」
「そういうもんだよ」
「ふ~ん。そっか。それなら、今後の勉強のためにアイツ、呼ぶか」
「アイツ?」
「ああ。この学校随一の情報通。次の昼休みにココへ呼ぶから、高坂も昼飯持ってココ集合な!!」
「ココって……、えっ、トイレで昼食べんの!?」
「ああ。昼飯摂りながら情報収集できるという一石二鳥! ほれ、いつまでも落ち込んでないで教室戻るぞ!」
「あ、ああ」
坂東は坂部の背中をバンバンと叩いて促す。その背中は哀愁に包まれていた。
しかし、なんか妙なことになったな。舞の姿が変わったことで俺にも影響が出てきている。バタフライ効果とかいうやつだろうか。