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安穏  作者: 真心
1/1

私が居ない日


すごく長い時間 寝ていたような感覚で目覚めた。

春瑠はる...」

今日は、春瑠が朝ご飯の当番だっけ?

散らかったままのカウンターにマグカップに入ったコーヒーがひとつだけあった。

「これだけ?私のは?...パンも目玉焼きもないじゃん。」

(あれ?喧嘩中だっけ?)

返事のない春瑠を横目に冷蔵庫に向かった。

(なにこれ?)

カウンターだけでなく、キッチンもシンクの中も汚れた食器がそのまま放置してあった。


「春瑠?」

少し苛立ちながら私は声をかけたが、春瑠はコーヒーを飲むこともなく、窓の外をみていた。


置きっぱなしのグラスには乾いたお茶の跡が残ったままで、私はそれを取ろうと手を伸ばした。

「え...」

ふわっと指が宙をかく。

「なに?」もう一度触ろうとするも、指はスルッとグラスをすり抜けた。

呆然としている私と、呆然としている彼がいた。


ふと、春瑠を見る。窓の外を見てる彼は、なにを考えてるのかもわからないような、今までみたことのないような顔をしている。春瑠には、私が見えていないことに気がついた。





ソファに座る春瑠の真ん前に座り私は顔を近づけてみた。

「ほんとに見えてないんだ...」

とくに痛いところもないが、死んでるのか?と考えながら、昨日の出来事を思いだそうとしてみる。

「だめだ、、全然わかんないよ。」

なにか、手がかりは...と、広告や紙をみながらヒントを探してみる。


「あ...」顔をあげた先のリビングと繋がる部屋に私がいた。

いや、私の笑顔の写真があった。

写真の前にはコーヒーの入ったマグカップが置いてあり、自分が本当にここには居ないことに やっとショックをうけた。


「服が散らかってる」

服を拾おうとして気づく。

(あ、そうだった。)

死んだことに気づいた直後で そのことにまだ慣れない。

戸惑うまま春瑠の隣に座り、重ならない手を重ねてみたら だれにも見えない涙が流れた。どこも濡れない涙がたくさん流れて、聞こえない泣き声を出して泣いた。



その日から春瑠の生活を見る私の生活がはじまった。




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