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前日
荷物を準備し、手軽に売れそうなテレビと電子レンジを重い腰で車に積みこむ。
頭の中は両親や会社の嫌いな上司の顔がまるで
ピカソが絵具で色をつけたくらい鮮明にうつっていた。
1Rの小さな部屋に散らばったゴミ袋を見つめ「まあいっか。」
と小さく呟いた。
もうここに、この街に戻る事はない。そう決めていた。
置き手紙を書ける心境ではなかった。
車を走らせ広島市内で友人と合流しラーメン屋に入る。
半分背水の陣のような自分を見て親切か、かっこつけているのか、「いいよ飯くらい出すよ」と言う。
後者のようにしか見えない得意げな口調だった。
夜の街でやけくそに焼酎を飲みながら、少しひきつった表情で言った。
「明日の朝、会社やめる。」
流石、水商売といって良いくらいねえちゃんは表情一つ変えずに答えた。
「どうしたん?」