3日目
『前回のあらすじ』
猿でも簡単に抜け出せる森で道に迷い、挙げ句の果てにスライムにやられてしまい、その後蘇生して森を抜けてやっと次の街へ辿り着いた勇者。
「恐らくアイテム調達か装備を揃えるに違いない。」という魔王の予想をぶち壊す勢いで、その街の民家のタンスや壺を調べて、見つけたアイテムを堂々を持ち去る勇者。もう泥棒に転職した方がいいのではなかろうか?
そんな勇者の前に、仲間になりたいと言う2人が現れる。1人は僧侶の老人、もう1人はシーフの少女。
すごい術を覚える覚えない以前に、そろそろ回復の手は必要だろう。本来僧侶を選ぶであるはずなのに、なんということだろう。下心全開でシーフの少女を選んだ勇者。これにはもう、魔王がコイツと会いたくないと言い出す始末。そんなことを言っても、勇者は魔王城に進む足を止めるつもりはないぞ(道草を食いながら)
魔王城最上階の部屋にて、魔法を使い勇者の行動を見ている魔王ユネスと、その配下のヴァン。
勇者達は、縦並びで街の住民から情報を聞き出し、街から出て次の目的地へ目指している真っ最中。
「…なんで勇者って、縦並びで移動するのかしら…」
前々から疑問に思っていたことを口にする魔王。確かに、毎回勇者を先頭に仲間達が後ろで縦に並ぶ。真っ直ぐ歩く時も複雑な進み方をする時も、絶対列を乱さず縦並びを維持し続ける。民衆はそれを見て何を思ってるかは不明だが、気にせずいつも通りの生活を送る。見て見ぬ振りをしているのだろうか?
「魔王様、それを言うなら…我々の配下も必ず横並びで登場しますよね…。接触した際1体しかいなかったはずなのに、戦闘になると増えますし…」
「あぁ、確かに…別にそんな指示を出した覚えがないんだけど……」
そんな話をしつつ、縦並びの勇者達を見ている二人。勇者達は、洞窟へ入っていく。
「魔王様、あの洞窟は…」
「ふふ、そうよ。あの洞窟は…ゴブリンの親玉がいる洞窟ね。」
そう、この洞窟はゴブリンの巣となっており、街の人々に危害を加えている。力だけではない、知能もあり、洞窟内には侵入者を阻む罠も複数設置してある。
ゴブリンの親玉…キングゴブリンは、魔王軍の中では弱い方ではあるが…今の勇者では、苦戦はするであろう存在。それに、今後のことは何一つ考えていないコレ(勇者)では、もっと苦戦するに違いない。
「ふふふ、キングゴブリンを倒し方によっては、見込みはあるわ。強い相手を力でねじ伏せたい…それが私の願望よ…」
不敵な笑みを浮かべて洞窟へ入っていき進んでいく勇者達を見ている……
数分後
「……」
魔王は黙って、最深部近くまで辿り着いた勇者達を見ている。
「…どうですか、魔王様。最深部までの道のりを歩む勇者を見て、少しは見込みがありましたか?」
ヴァンが魔王に尋ねる。
「…えぇ、はっきり言わせてもらうわ…」
「全くない。」
身体中大怪我をしている勇者を呆れた目で見ている魔王。呆れるのを通り越して、イライラしている…
「何をどうしたら、この洞窟にある全ての罠に引っかかれるの。あのトラバサミとか、どんな刺さり方してるの。どうやったら肩に全部の歯が刺さるの。」
本来足に刺さるはずのトラバサミが、肩にぶっ刺さっている勇者。全ての罠に引っかかる様は、恐らく何度見ても理解できないだろう。
「魔王様、勇者の体力は残り15です。」
「そんなのでどうやってキングゴブリン倒すの、1発で終わるわ!」
勇者は、道の真ん中に置かれた、明らかに怪しい宝箱に近づいていく。
「ちょ、あんた、正気?それ罠ってわかるよね?普通木で出来てる宝箱なのに、そんな明らかに怪しいサムシングに手を出すの?ねぇ?」
そんな魔王の言葉は届くはずもなく、明らかに怪しいサムシング…というより宝箱に手をかける。
「ちょ、あんたもう体力が15なんでしょ!?そんなの開けたら…!」
「それ罠だよ、勇者様。」
後ろにいるシーフが、勇者にそう伝える。
「シーフ…!」
そのシーフの行動に、少し感動してしまう魔王。
「今まで役に立ちそうにないと思ってたけど、あなた…勇者を救ったわよ…このポンコツ(勇者)には、あなたみたいなしっかりしてる人が、必y」
「魔王様、勇者が宝箱を開けました。」
「人の話聞いてたのこのポンコツ(勇者)!!」
罠である宝箱に噛み付かれている勇者
「ねぇ、大好きなの!?罠に引っかかるの大好きなドM野郎なの!?さっき後ろの子から罠って、聞いてたでしょ!!」
「勇者の体力が1になりましたね…見込みは」
「無いわ!見込みの欠片すら感じ取れないわ、この勇者からは!」
この後、キングゴブリンにワンパンされたことは、言うまでもない。
次回へ続く