宇宙のバス
とおいとおい宇宙のむこうの、そのむこう。
太陽系よりも、アンドロメダよりも、もっともっと外がわ。
きみたちのしらない、行ったことのない銀河のかなた。
そこには、おおきな星やちいさな星、いん石やブラックホールがうかんでいる。
そして、そんなふうにいろんなものがたくさんあるなかにまぎれて、一台のバスが走っているのです。
そう。それが宇宙バスです。
光のとどかない暗い宇宙にライトをてらし、バスはひとりで走っています。
宇宙には音がありません。なんにもきこえません。
いん石がぶつかる音も、流れ星がかがやく音も、ロケットのかけらがもえる音も。
そして、宇宙バスが走る音も、きこえないのです。
だからだれも、このバスをしりません。みんな、みんな。
ちかくにすんでいる宇宙人も、きみたち人間も。
でも、たしかに宇宙バスは走っているのです。
そのバスには、のるための入り口がありません。おりるための出口もありません。
ただ大きなまどがたくさんならんでいるだけ。
ふしぎなことにそのまどは、バスの外から中がみえないようになっています。
これでは中にどれくらいおきゃくさんがのっているのかわかりません。
どんな人がうんてんしゅさんなのかもわかりません。
そもそもこの宇宙にはバス停がありません。
だれも宇宙バスののりかたをしらないのです。
けれども宇宙バスは、きょうも宇宙を走っています。
きっとあしたもあさっても、そのつぎも、バスは走るのでしょう。
……きみだけに、この宇宙バスのヒミツをおしえてあげる。
じつは宇宙バスにのれるのは、カラダをもたない人だけなんです。
つまり、しんじゃった人。
カラダからぬけ出た精神。
つまり、ココロ。
ココロだけになってはじめて、宇宙バスにのれる。
カラダがないから、入り口もいりません。カベから入ればいいんです。
そしてバスはたくさんのココロをのせて、ひろい宇宙を走るのです。
たいくつな宇宙でも、みんなでバスにのっていれば、たのしいきぶんです。
いろんな色の星。宇宙にすむウサギ。もやもやとキレイな星雲。
バスのまどをとおしてみれば、そのけしきはとてもうつくしいのでしょう。
だれがどうして、どうやってつくったのか。だれもしらない宇宙バス。
神さまがつくったというウワサもあるけど、ほんとうかどうかはわかりません。
そんなこと、このひろい宇宙ではささいなぎもんです。
きみもいつか、宇宙バスにのる日がくるのでしょう。
だいじょうぶ。おかねなんていらない。
宇宙でひつようなのはおかねでもカラダでもない。
ココロ。ひとつだけ。
だからきみがココロだけになったとき、きっと宇宙バスがむかえに行きます。
それまでのあいだ、ちょっとだけ、まっててね。
わすれちゃってもへいき。
宇宙バスが、きみのことをぜったいにおぼえているから。
だから……だからもう、目をあけて。
きっとそろそろ、きみのおかあさんがあさごはんをつくる。
宇宙にはあさごはんがないから、いまのうちにたくさんたべておいてね。
それじゃあまたね。きっといつか、むかえに行くよ――。