独り占め
長くお休みしていて申し訳ありません。
こうして、一連の事件を解決することができて、私達はパラシオ国に帰ることが決まった。
帰るにあたり、最後に帰国パーティーをしてくれるという。
私はスカイブルーのプリンセスラインのドレスに黒いリボンを使ったアクセサリーといったもの。
殿下はシルバーのスーツに濃い灰色のネクタイであった。
「殿下、ネクタイが曲がっています」
二人ですこしの間、控えの間で待つことになった。
久しぶりに二人きりになったことで、私は少なからず緊張していた。
殿下のネクタイを直していて、パオ様直伝の上目遣いを試してみたくなったのは悪戯心が湧いてきていたからだ。
少し体を近づけてチラッと殿下の顔を見上げ……て見たら、殿下は片手で目を覆っていた。
「あの、殿下? どうかなさいましたか?」
「二人きりってだけでも緊張するのに、そんなに寄られたら君に手を出してしまうかもしれない。出来るだけ見ないようにしている」
手を出す?
いや、今はそれが最終目標である。
「殿下」
「なんだ?」
「殿下は浮気しますか?」
思わず聞いてしまった言葉に、私は後悔した。
意味のわからないことを聞いてしまった。
「してほしいのか?」
質問に質問で返すのは卑怯だと思う。
「して、欲しくないです」
「?」
私は殿下の目を覆っている手を掴むと引っ張った。
私の突然の行動に驚いた顔の殿下がそこにいた。
「私は! 殿下を、ルド様を独り占めしたいのです!」
恥ずかしくてまともに殿下の顔が見られない。
私の恥ずかしい言葉に殿下は暫くフリーズしていた。
そして、おもむろに私を抱きしめた。
「ああ〜クソ。最近の君はなんなんだ?」
殿下の困ったような言葉に逃げ出したくなる。
「も、申し訳ございません」
悲しくなって謝れば、殿下は私を更に強く抱きしめた。
「何故謝る?」
「……ルド様を独り占めしたいなどと我が儘を言いました」
「謝るな」
殿下はそのまま私の首元に顔をうずめた。
「君が望むなら、独り占めしてくれていい。浮気もしない。むしろ、ユリアスが可愛すぎて辛い」
殿下は私の首筋に軽いキスをした。
「そのかわり、君も俺が独り占めして良いという条件付きだが?」
殿下の言葉に私は殿下の背中に手を回して言った。
「では、殿下は私のものです」
「ああ。君は俺のものだ」
そう言って殿下は私に顔を寄せた。
これは、キスしてしまう。
前回はここで邪魔されたのだ。
今回は!
そう思っているうちに殿下の唇が自分の唇に触れた。
気がした。
「今のはキスですか?」
私の質問に殿下は私の肩に額を押し付けた。
「俺だってちゃんとキスしたいが、今からじゃきっと邪魔が入るだろうし、君を怖がらせてしまうかも知れない」
殿下の言葉に私はムッとした。
「私が怖がるとお思いですか?」
私が勢いでそう言うと、殿下は私の顎をクイッと上げキスをした。
私が怖がらないように、ゆっくりと重なるだけのキスだったが、私は殿下とのキスに幸せを感じたのだった。
「すまん。口紅が落ちてしまった」
キスが終わり、殿下が少し体を離して、私の顔を覗き込む。
私の頬に手を添えてさっきまで重なっていた唇を右手の親指でフニフニと押され、なんだか恥ずかしい。
「殿下、私以外とこんなことしてはいけませんよ」
思わず出た言葉に殿下は蕩けるような笑顔を私に向けた。
「するわけない。ってか、それ、嫉妬か?」
殿下の言葉に思わず息を呑む。
「……いけませんか?」
「最高かよ」
殿下はそう言うと私をまた強く抱きしめたのだった。
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