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船旅

『婚約回避のため、声を出さないと決めました‼︎』が本日発売です!

よろしくお願いいたします!

 私が隣国に行くことを決めたことにより、お兄様とお父様の大反対を受けることになった。


「ユリアス! 何故お前が行かなくてはいけないんだ!」


 お父様は目に涙を浮かべていた。


「殿下のせいか? よし、殺そう」


 お兄様はとても物騒です。


「バルガスとオルガに探らせればいいだろう!」


「執事長と私の店の店長はそんなことができるほど暇な人間ではございません」


 それに、宝石の買い付けも自分でしたい。


「船の上は男だらけで何日も海の上なのだぞ! よからぬことを考える乗組員もいるかも知れない」

「父上、乗組員を全て女性に代えることは出来ないのですか?」

「女性に海の仕事は無理だ」


 過剰に心配する二人に私は笑顔を向けた。


「殿下も一緒ですから大丈夫ですわ」


 私は安心してもらうために言ったのに、二人はあからさまに深いため息をついた。


「ユリアス。殿下が安全な男だと本当に思っているのかい?」


 お父様の言葉に、思わず首を傾げると今度はお兄様が眼鏡を上に押し上げてから言った。 


「殿下だって可愛いユリアスとずっと同じ船の上にいたら血迷って押し倒してくるかも知れない」


 二人は顔色を悪くしながら心配だ心配だと騒いだ。


「私はシュナ様やミーヤさんのように可愛くもありませんし大丈夫です。それでも心配であれば、私の護衛のルチャルとバリガのお二人に女装していただくのなんてどうでしょうか? 船の中に女性が少ないから心配なのでしょう? 部屋の鍵も特注品に付け替えれば安心できませんか?」


 私のあの手この手の提案にようやく二人の説得に成功することが出来た。

 


 船は勿論、バハル船長の船である。

 バハル船長の船ならば、隣国まで一週間の船旅のはずが四日で着いてしまうのだから凄い。

 バハル船長は珍しい風の魔法が使える。

 と言っても、風の魔法が珍しいわけではなく魔法自体が珍しいのだが。

 ちなみに、殿下はそんな魔法を何種類も使える。

 便利な人間。

 ……こんな便利な人物が私の婚約者なのだから不思議だ。

 船が出航する前に殿下にそれとなく聞いてみた。


「風の魔法を船の帆にかけて下さいませんか?」

「はやる気持ちはよく解るが、船が壊れたら元も子もないぞ」


 殿下も魔法を使ってくれたら直ぐに辿り着けると思ったのに、残念。

 そんなことを考えていると、バハル船長がやって来て私にニカッと笑顔を向けた。


「姫様が俺の船をご所望とはね! 気合い入れるしかねえな」

「期待しているわね」


 バハル船長は私に顔を近づけるとニヤニヤしながら言った。


「姫様がキスの一つでもしてくれたら、いつもより早く船を走らせられるんだけど?」


 その言葉に私の護衛の二人が私とバハル船長の間に入った。

 二人とも殺気も剣も出しているが、バハル船長はガハガハと豪快に笑って二人に笑顔を向けた。


「こんな可愛い護衛がついてるとは姫様も出世したな!」


 私の護衛であるルチャルとバリガの二人は今、女装している。

 ルチャルはフリルたっぷりのオレンジ色の膝下ワンピースに金髪ロングヘアーのウィッグ明るく若い印象のメイク。

 バリガは白シャツに紫の落ち着いたロングのタイトスカート(動ける用にスリット深め)、元々髪が長い彼は髪はいじっていないが妖艶メイク。

ちなみに二人とも私がメイクを施した。

 凄く楽しかったからまたやらせてほしい。


「どっちも可愛いな! 船を下りたら一杯どうだい?」


 あからさまに嫌そうな顔をする二人にバハル船長はフーっと息を吐いた。


「俺、結構モテんのにな。自信無くすわ」


 二人とも、声はしっかり男性のため喋らないようにしているように見えた。

 私のワガママで二人には凄く迷惑をかけてしまっていると、少し反省した。


「バハル船長、私の護衛を口説かないで下さい」

「いやいや、こんな美人口説かないのは失礼だろう? な、王子」


 突然声をかけられた殿下は遠くを見つめて呟いた。


「失礼以前に失礼だからな」


 殿下が任命した護衛なので殿下はこの二人が男性だと解っている。

 こんな格好をさせるなんて言って無かっただろうから凄く気まずそうだ。

 案の定、二人が殿下に向ける視線は辛辣なものに見える。


「とにかく、出航だ! 王子は魔法使えるんだよな? 帆に風を送ってくれ」


 バハル船長は事も無げに殿下に魔法を使うように促した。


「いや、船を壊してしまったりしたらだな……」

「俺らの船はそんな柔じゃねぇし、この船が他の船より速いのは俺が魔法使ってるからだぞ? 早く解決して姫様を家に帰さないと若様に殺されかねないしな。で? やるのか? やらねぇのか?」


 バハル船長の言葉に殿下は苦笑いを浮かべ、腕まくりをした。


「本当に壊れても知らないからな」


 こうして、バハル船長と殿下が魔法を駆使してくれたおかげで隣国まで二日で着くことができたのだった。


読んでくださりありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 親子揃って心配症だなw [気になる点] 戦闘能力のある侍女とか居ないのかな?
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