採寸
よろしくお願いいたします。
ランフア様が帰って直ぐにシュナ様達の元に戻ったのだが、何故かシュナ様はピンクのフリルがたっぷりついたドレスを着てクルクルと回りながらスカートが膨らむのを見てはしゃいでいた。
「シュナ……」
「あ、ルド兄様! 見て! 可愛いでしょう!」
「可愛いでいいのか?」
殿下は疲れたように頭を抱えた。
「シュナ様はドレスがお好きですか?」
「嫌いじゃないよ! 僕、王子だって解らないようによく女の子の格好させられるの。王子だって解ったら殺されちゃうかも知れないって! だけど女の子だと思われて誘拐されちゃったから今度は男の子の格好をしなさいって! でも、僕可愛いものって大好きだからドレス着られて嬉しい」
私は思わずシュナ様を抱きしめた。
そしてゆっくりと頭を撫でた。
フワフワの髪の毛を触っていると私が癒されている気さえするのが不思議だ。
「離れろ」
殿下にシュナ様を奪われてしまい少し寂しくなった。
「シュナを甘やかすな! さっき君も言っていただろう? 君は誰の婚約者だ?」
「……殿下の婚約者ですわ」
「そうだ! 君は俺の婚約者だ! だから他の男を抱きしめるのはダメだ!」
私は暫く黙るとニッコリと笑顔を作った。
「では、殿下を抱きしめて頭を撫でるのはいいのですね!」
私の言葉に殿下はフリーズしてしまい、私は殿下からシュナ様を奪い取ると紺色の布を棚から取り出しあてがってみせた。
「ピンクを差し色にしてスーツを作りましょう襟は丸みをつけて可愛いシュナ様を可愛くコーディネートさせて下さい」
私はメジャーを取り出しシュナ様の頭から順に採寸を始めた。
途中ドレスでは採寸出来ないのでドレスは脱いでもらったが仕方が無い。
「やっぱりユリアス姉様大好き」
ニコニコと笑うシュナ様は本当に可愛くて癒される。
頭を撫でくり回したい。
私はそれをすんでのところで我慢した。
「それでも俺の婚約者だからな!」
「ルド兄様! 男の嫉妬は見苦しいらしいよ」
「煩い」
シュナ様と殿下がじゃれているのを見ながら私はクスクスと笑ってしまったが許してほしい。
「それにしても、シュナ様を誘拐した犯人は何故そんなことをしたのでしょうか?」
私の言葉に答えたのは殿下だった。
「獣人は耳や鼻がいいせいで火薬の匂いや特殊な笛などでいうことをきかせようとする奴らがいるんだ」
「それは獣人は凄く大変なのですね」
「人よりも優れた身体能力を持っているせいで奴隷のように扱われることが過去何度もあったんだ」
「お給料と拘束時間は?」
「奴隷のようにといっただろう? 衣食住ぐらいってことだ」
私は拳を握ると力強く言い放った。
「それは……許せませんね! 不当な賃金で従業員を使うなんて経営者の風上にも置けない人間です! 勿論殿下が捕まえたのですわよね?」
そこで殿下は私から視線を逸らした。
「殿下?」
「そう簡単に捕まれば苦労はしない」
私は深いため息をつくと言った。
「犯人は至極簡単な人物ではありませんか?」
私の言葉に周りは凄く驚いた顔をした。
「君には誰が犯人なのか分かるのか?」
「殿下には分かるはずですが?」
殿下は難しい顔をしている。
「では、ジュフア様に会いに行きましょう」
「何故⁉︎」
「ランフア様から力を貸してほしいとお願いされましたので」
私はクスクスと笑ってしまった。
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