店長
いつも更新が遅くてすみません。
番とは、伴侶ってことで良いのかしら?
私が真剣に悩んでいる間にミーヤさんがマイガーさんに顔を近づけている。
その事にいち早く気がついたマイガーさんが殿下の服を掴んでいない方の手でミーヤさんの顔面を手で鷲掴みにしているのだけど、あれは女性にしていいことなのだろうか?
「獣人の雌は自分より強い雄と番になるのが幸せだっていわれてるんだよ!」
私の横にいたシュナ様が楽しそうにそう教えてくれた。
「それなら! ルドの方が俺よりも強いよ!」
「だって、ルドニーク殿下にはもう番がいるじゃない! 私、貴方のためなら家猫になってもいいのよ」
後半、猫なで声とはこの事か? と聞いてみたくなるような甘い声をミーヤさんが出した。
「家猫も何も、俺はお嬢に爪立てるような野良猫お断りなの!」
「もう立てないわよ!」
ミーヤさんは本当に美しい人だ。
エキゾチック美人とでも言えばいいのか?
そんな美人に迫られて何が不満なのだろうか?
「それに私、貴方が望むなら紐で繋がれても、い・い・の・よ!」
なんとも妖艶な誘い文句である。
横で逃げ出そうとしている殿下の顔色が悪いが見なかったことにしよう。
「あのね子猫ちゃん。悪いけど紐で繋なぐのって全然魅力的じゃないんだよ!」
不満そうに口を尖らせるミーヤさんにマイガーさんは満面の笑顔を向けた。
「俺は、出来ることならお嬢に紐で繋がれたい! むしろ鎖でも良い!」
とんだ営業妨害だ。
マイガーさんの力説にミーヤさんがキョトンとしていた。
「俺はお嬢にだったら繋がれたいし蹴られたいし踏まれたい!」
私は店の中に戻ると他の従業員に声をかけた。
「オルガさんを呼んで」
「はい。すぐに」
店の前で変態丸出しのセリフを叫ぶマイガーさんの対応にはオルガさんが一番。
オルガさんは従業員がいなくなると同時にやって来た。
「申し訳ございません。すぐに回収いたします」
オルガさんは目にも止まらぬ早さでマイガーさんをロープで縛り上げた。
あのロープはどこから?
唖然とする周りを後目にオルガさんはマイガーさんのお腹を蹴り上げてから良い笑顔を作った。
「マイガー、営業妨害ですよ。そんなに繋がれたいのであれば私が鎖で繋いであげます」
「俺はお嬢に繋がれたいのであって、オッサンに繋がれる趣味はない! お嬢助けて!」
「お嬢様のお手を煩わせるようなことを私が許すとでも?」
真っ青なマイガーさんを肩にかつぐとオルガさんは私に柔らかな笑顔を向けた。
「お時間をお掛けしてしまい申し訳ございません。接客は他の従業員にお任せください」
「そうね」
「それと、今使いを出そうと思っていたのですが、ラオファン国のランフア様がお越しになっています」
それを聞き店に入ろうとしたところ、肩を掴まれ、私は殿下を見た。
「君はランフアに何をされたか忘れたのか? 会う必要はない」
ランフア様には殿下と仲が良いことを嫉妬され、腹いせに虐げられるマイガーさんを庇ったせいで殴られたことがある。
だが、それがなんだというのか?
「ランフア様は反省と謝罪をきちんとしてくださいましたわ」
「いつ?」
「殿下が私に何も言わずに獣人の国に行っている間にです」
殿下が息を呑むのが解った。
「ルド兄様、婚約者に黙って行くのは駄目だよ」
「元はと言えばお前が誘拐されたからだろ!」
シュナ様は私の後ろに隠れてみせた。
「とにかく、隣国の姫君を長くお待たせするわけにはいきませんので中へどうぞ」
渋る殿下を置いて、私はシュナ様と店の奥に向かったのだった。
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