民俗衣装
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その日、シュナ様とシュナ様の侍女のミーヤさんと獣人の料理人二名を私の家に招待した。
勿論、カリカリクッキーの作り方をレクチャーするためだ。
シュナ様は国賓だから殿下も一緒についてきた。
ハッキリ言って気まずい。
今まで直接的な愛の言葉や行動をしてこなかった殿下が、この前会った時にその両方を私にくれた。
我が儘にモヤモヤを殿下にぶつけて、返ってきたのが愛の言葉とか……
恥ずかしい!
けど、モヤモヤはなくなった。
「コンニチハ!ではメモをお願いしますね」
家の料理長がフレンドリーに話しかけると獣人の料理人さん達は驚いたようだった。
獣人の人達は見た目で怖がられたりすることが多いらしく家の従業員が皆、普通に接することが不思議なようだ。
だが、家の従業員は皆、人種も性別も様々だから怖がったりはしない。
それに、獣人を怖がるような弱い人間は基本この家には居ない。
真剣に料理長の話を聞く獣人料理人さん達をおいて、私は他の方々をサロンに案内した。
料理長の奥さんであるメイド長が優雅にお茶を淹れてくれる。
そして、サロンから見える我が家自慢の庭園を眺める。
「どうですか?カリカリクッキーも沢山用意してありますから沢山食べて下さいね」
「うん!ユリアス姉様のお家は居心地が良いね」
嬉しそうに笑うシュナ様は可愛い。
こんなに可愛いなら私の小さいときのドレスを着せ替えしたら楽しそうだ。
「ユリアス、悪い顔してるぞ」
「殿下、私の心を読まないでいただけますか?」
いつも通りの殿下の反応に少しの安心と、少しの残念が一緒にやって来る。
「そう言えば、シュナ様方は建国記念パーティーの衣装は獣人族の民俗衣装になるのでしょうか?」
私の言葉に殿下がゲホゲホとむせた。
何かマズかっただろうか?
「僕もそのつもりだったのに、ルド兄様が駄目だって!」
口を尖らせて文句を言うシュナ様が可愛い。
私が殿下を見ると殿下は口を袖口でぬぐっていた。
ハンカチぐらい持っていないのか?
「獣人の衣装は駄目だ!」
「何故です?私は獣人族の衣装に興味があります」
私の言葉に、シュナ様とミーヤさんの目が輝いたのが解った。
「ほら!ルド兄様の馬鹿!ユリアス姉様に僕らの国のドレスプレゼントしても良いじゃん!」
「シュナ様、馬車に用意してありますからとってきます!」
「うんうん!今すぐ持ってきて!」
シュナ様とミーヤさんのテンションに驚いていると、殿下が青い顔をして立ち上がった。
「ミーヤ、待て!シュナ止めろ!」
ミーヤさんは殿下の声なんて聞こえていないように素早い動きで馬車に走って行ってしまった。
ミーヤさんが持ってきたドレスに私は驚いた。
綺麗なナイトブルーのマーメードラインのドレスなのだが胸の部分から膝上までの生地はしっかりした物だがほぼ全体的に透け透けの素材で出来ていて露出が多い。
透け透けの生地をどう作るのか気になる。
この露出感をどうにかすればこの生地自体は売れる。
「下着はこれで」
ミーヤさんの出してきた下着に私は言葉を失った。
「この下着は獣人女性の必殺技ですからね!」
「…………何も隠れていませんが?」
「隠さず見せるものです」
私は押し付けられた透け透けの下着に、これは売れるのか首を傾げた。
見ればシュナ様はニコニコしていたが、殿下は両手で顔を隠してしまっていた。
耳が真っ赤だ。
なんだか殿下、ごめんなさいと思ったがとりあえず興味はある。
「必殺技ですか」
「女性から誘うための必殺技です」
「!……凄い。ですが、需要はあるかも知れません」
効果があるのであれば夫婦間の刺激に良いのかも?過激すぎな気もする。
「殿下」
「今話しかけないで欲しい」
「ですが、輸入の許可状が欲しいです」
「!それを輸入するのか!」
殿下はいまだに顔から手を離す気配もない。
「需要があると判断しました」
「じ、需要があるのか?」
あるんじゃないのか?
私には無いが、世の中には必要な女性がいるハズだ。
「ルド兄様はユリアス姉様に着てほしくないの?」
「止めろ!想像したらどうしてくれる!」
「想像したらダメなの?婚約者でしょ?」
殿下は今度は耳をふさいで踞るとアーっと叫んでいた。
目を強くつぶっている姿がなんだかマヌケで可愛い。
「もう、ルド兄様はヘタレなんだから」
「シュナ様、殿下はそんなところが可愛いのです」
シュナ様は驚いた顔をした。
「ユリアス姉様、今ノロケた?」
「……そうですね。ノロケかも知れません」
そうか、これが愛しいと言う気持ちか。
情けなく見える部分も可愛いとは、殿下の情けないところが全部可愛いのか。
じゃあ、愛しくてたまらなくなってしまうんじゃないのか?
「…………なんて質の悪いことでしょう」
私は苦笑いを浮かべて殿下の元へ向かった。
「殿下」
私が殿下の耳を塞いでいる手を掴むと、殿下は警戒しながら手をゆっくり外した。
「そんなに警戒しなくても」
「君はたまに俺をからかう節がある」
「心外です」
私はニコニコ笑って見せた。
「それに、輸入状が欲しいのはあの生地です。あの生地でコサージュ等を作ったら売れますから」
「…………そ、そうか。解った。書こう」
私は渋々そう言った殿下が可愛くて口元がゆるみそうになるのを必死で耐えた。
「つまんな~い!そうだ!ユリアス姉様着て見せてよ!」
シュナ様の言葉に殿下は立ち上がり私を庇うようにシュナ様と私の間に立った。
「駄目だ。ユリアスにそれは着せられない!」
「えー」
「絶対駄目だ」
いざと言う時にはこうやって助けに入ってくれるのも好きだ。
自覚したらなんだか殿下が格好良く見えてしまう。
私はニヤニヤしたい気持ちを押さえて言った。
「申し訳ございませんシュナ様、この国では旦那様になって下さる男性にのみ肌を見せるのが習わしです。ですのでこのドレスはもう少し加工しなくては着れません」
「えー、そうなの」
不満そうなシュナ様に私は言った。
「ですので、シュナ様方の建国記念パーティーの衣装は私がご用意いたします。シュナ様を誰が見ても素敵な殿方にいたしますね」
「本当に!やったー」
シュナ様が跳び跳ねて喜ぶのを横目に私は殿下にニッコリと笑顔を向けた。
「なんだ」
「シュナ様からいただいたものはいずれ殿下にだけに、着てお見せしますね」
その瞬間、殿下は一気に指先まで真っ赤に染まり、踞ると耳を塞いでアーっと言い出した。
そんな殿下を見ながら私はクスクス笑うのだった。
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