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結婚が幸せとは限らない?

何時も読んでくださってありがとうございます!

 私と殿下が知り合ってすでに結構な時間が過ぎている。

 それなのに、殿下が楽しそうに笑っているのを初めて見た気がする。

 いつもは、意地悪そうな笑顔なのに今日のは何の含みもない子供のような笑顔。

 何だか漸く信頼してもらえたような気がして少し嬉しくなってしまった。

 あんな顔見せられたら普通の女性は惚れてしまうだろう。

 魔性か?それとも王子と言う者が産まれながらにして持つオーラなのか?

 殿下には暫く近づかないようにしたい。


「姫様」

「バハル船長」


 バハル船長が私に近づいてくるのを見ていた男の子達が私とバハル船長の間に立った。


「バハル!姫様に近づくんじゃねぇよ!」

「何でだよ!」

「風呂上がりの匂いがすんだよ!」

「まだ香水の匂いがしてた方が言い訳出来るぜ!」

「姫様が汚れる!どっか行け!」


 バハル船長の眉間にシワが寄る。


「姫様に言われたから風呂入って来たんだぞ!」

「姫様の使いで来た執事のおっちゃんがバハルを姫様に近付けるなって言ってた!」

「あのおっちゃんのくれる菓子が旨いんだよ!」

「あの爺」


 私は苦笑いを浮かべた。


「うちの執事長のオルガはバハル船長を信用してないの。ごめんね」

「俺の事殺したくて仕方ねぇみたいなサイコ野郎のあいつの方が姫様に近づかないで欲しいんだけど!」

「今は、有能な執事よ」

「元々がサイコ野郎だろ」


 まあ、否定が出来ない。

 オルガは元々お父様の命を狙っていた暗殺者だった。

 人を殺すことに躊躇いが無いのが、たまに傷な紳士である。

 私がうちに勧誘してからは有能な執事なんだから欠点など気にもならないのだが、バハル船長は殺されそうになった事が何度かあるからオルガが大嫌いなのだ。


「お前らもあのサイコ野郎のいいなりになってんじゃねぇよ!」

「「「姫様の安全のためだっておっちゃんが言ってた!」」」

「くそったれ!」


 バハル船長と男の子達が睨みあっていると後ろからお兄様とジュフア様が現れたのが見えた。


「ユリアス」

「はい。お兄様」

「でん………ルドが居るうちに直しておきたい所を直してもらっておいて、必要な物をリストにまとめたいんだが」


 どうやら、殿下は完璧なお忍びで殿下だと孤児院の人達に気付かれたくないようだとお兄様の言葉で理解した。


「直しておきたい所は子供達の方が良く解ると思います。必要な物はすでにリストにまとめてあるはずですよ」


 そんな話をしていると殿下が私の隣に立った。


「人使い荒すぎだろ」

「備品を壊しましたよね」

「………すまん」

「馬車馬の様に働いていただきます!」

「解ったよ。馬車馬の様に働こう」


 私は思わず笑顔を作った。

 何だかんだ、殿下は凄く優しいのだ。

 私は殿下に何が返せるだろう?

 こんなに良くしてくれて私が返せるのは何だろう?

 前ならバナッシュさんから殿下を護るって役割があった。

 でも今は?

 ああ、どうしよう?

 殿下に借りばかりが増えていく。

 

「ルド、俺について来い!直して欲しい所は山のようにあるぞ!」


 マイガーさんが殿下の背中をバシバシ叩いて言った。


「建て替えた方が良いんじゃないのか?」

「ルド、建て替えてくれんの?」

「え?」

「やってくれるんなら、やって!」

「いや~」

「ルド時間作るの大変だろ?今日中に全部直して」

「………解った」


 マイガーさんはニコニコしながら子供達に向かって言った。


「おし!皆直して欲しい所行くぞ!」

「「「お~!」」」


 子供達は殿下の背中を押して去って行った。






 孤児院の食堂でお兄様とジュフア様とお茶を飲みながら欲しい物リストを広げて安価で入手する話をしていた。

 

「本当に凄いな」

「「何がでしょう?」」


 私とお兄様に聞かれてジュフア様は苦笑いを浮かべた。


「ユリアス嬢は我が国の女性とは違って自立していて凄いと思ったのだ」

「自立ですか?」

「ああ、我が国の女性はいかに男に寄生して楽して生きるかしか考えていない」


 私はため息をついた。


「それはジュフア様の偏見ではないでしょうか?」

「偏見?」

「王族の周りにはそう言った女性が集まりがちですが、ちゃんと男性に頼らずとも生きている女性がいるはずです」

「そうなのだろうか?」

「絶対に居ます。私ほど商魂逞しい女性は居ないかも知れませんがね」


 ジュフア様はハハハっと声を出して笑った。

 そんなに面白かったかな?


「ユリアス嬢の側にいると本当に勉強になるな」

「そうですか?」

「普段はどんな事をして過ごしているんだ?」

「学園に通いながらお金儲けの企画を考えたり店の売り上げを計算したりでしょうか?」

「学園か………」

「なかなか楽しい場所ですよ」


 市場調査が簡単に出来て。

 私はニコニコと笑って見せた。


「ジュフア様、妹に興味を持つのは止めていただきたい」

「べ、別に……友人になりたいと思っているだけだ」

「………左様ですか?ユリアスは国外に嫁に出すつもりはありませんので友人以上になろうなどとは思わないでくださいませ」


 お兄様はジュフア様を睨みながらそう言った。

 何の心配をしているのか?

 お兄様のシスコン具合に苦笑いが浮かぶ。


「ジュフア様、私と友人になってくださいますか?」

「ユリアス」

「お兄様は心配しすぎです。私は暫く婚約にも結婚にも興味はありませんので」

「一生うちに居て良いぞ」

「ありがとうございますお兄様」


 お兄様の優しい言葉に嬉しくなった。


「一生は酷いだろ?」


 慌てたようにジュフア様が言った。


「ジュフア様、結婚が女の幸せとは限りません」

「それはローランドの言い分だろ!なあ、ユリアス嬢」


 私は苦笑いを浮かべることしかできなかった。

 結婚が幸せとは限らないとは思う。

 でも、いつかはしてみたいと思う。

 婚約破棄された私が、普通の女性の様に永遠の伴侶と結婚を夢見る事なんて駄目なことだろうか?


「何の話をしているんだ?」


 漸く戻ってきた殿下は不思議そうに私達を見ていた。


「結婚は女性の幸せだと、ルドも思うだろ?」


 ジュフア様の言葉に殿下はキョトンとした顔をした後、呆れたように言った。


「結婚が女性の幸せ?………そんなの人それぞれだろ?伴侶となる相手と死ぬまで愛し合えるなら幸せだと思うが浮気されたら幸せではないだろ?結婚しなくても充実した幸せを持っている女性は沢山居ると思うしな、死ぬ直前に満足していれば何でも幸せだと思うぞ」


 殿下の言葉にジュフア様はポカンとしていた。


「まあ、どんな状況であれユリアスは幸せになると思う」

「何故ですか?」


 殿下は何時もの意地悪そうな笑顔を作った。


「人を幸せにしている奴には幸せが返ってくるもんだ」

「では、ルド様にも幸せが返ってきますね」


 殿下は今日この孤児院に沢山の幸せを与えてくれた。

 だから、笑顔を作り幸せが返ってくるのを願ってそう伝えれば殿下がフリーズしてしまった。


「どうかしましたか?」

「いや、衝撃が強かっただけだ」

「………言葉の暴力って言いたいんですか?〝幸せが返ってきますね〟がですか?」

「それじゃない」

「え?じゃあどれですか?」


 私が納得いかなくて聞くと殿下は遠くを見つめた。

 

「ローランド、ユリアスをどうにかしろ」

「殿下も愛称で呼ばれただけで、ときめかないでください。ぶん殴りますよ」


 何故か殿下とお兄様がこそこそと話はじめて、私を困った子を見るような目で見てきた。

 何なんだ!

 失礼ではないだろうか?

 私は納得いかず、唇を尖らせるのだった。

ありがとうございます!

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