写真って、売れます?
スランプです。
色々ありすぎてスランプです。
私と殿下の噂は店の限定イベントの宣伝だったと誰もが信じてくれた。
「私も写真撮りたかったです!」
「お小遣い足りなかった~」
庶民棟の皆さんはお小遣い事情により写真をゲット出来なかったみたいだ。
「ツーショット写真は無理ですが、撮影のデモ写真なら一枚から売りますがどうしますか?」
「「お高いんでしょ~」」
「友情割引いたします!」
「「買った!」」
私が鞄から写真を数枚出して見せると庶民棟の女性が集まってきた。
「これ素敵!」
「「格好良い!」」
この写真も売れそうだ。
私は内心ニヤリと笑った。
「ユリアス、顔がゆるんでるぞ」
「殿下」
庶民棟の皆さんは殿下と私を交互に見るとニコニコした。
何なんだ?
「ノッガー様、私はノッガー様と王子様のお昼寝ショットが欲しいです!」
庶民棟の皆さんの中でも仲良しのルナールさんがそんなことを言うと他の人達まで頷いた。
「私が邪魔じゃ?」
「むしろノッガー様の写真が欲しいです!」
私の写真も売れるのだろうか?
「ユリアス、今自分の写真も売れそうだと思ったろ?」
「私の心を読むのは止めて下さい」
「感情が駄々漏れだ」
私が舌打ちするのも、殿下はもう慣れっこだ。
全然気にした様子を見せなくなった。
まあ、別に困らないけど。
「売れるなら良いじゃないですか?」
「女性が自分を切り売りするような真似は感心しない」
「なら殿下の半裸写真を売っても?」
「絶対駄目だ!」
滅茶苦茶睨まれた。
駄目か。
絶対売れるのに。
「ってか、いつの間にそんな写真を手に入れたんだ?」
「うちの執事は優秀で」
「そんなところに敵がいたとは……」
殿下が遠くを見つめていた。
「何黄昏てんの兄弟」
殿下にB定食を手渡しながら、A定食を持ったマイガーさんが首をかしげた。
「ユリアスが自分の写真を売るとか言い出して」
「あ、買う買う!お嬢の写真欲しい!枕の下に入れてお嬢の夢見る!」
殿下は片手で定食を持ち、マイガーさんを指差して言った。
「こういう気持ち悪いやつも居るんだぞ!」
「解りました。諦めます」
「え~泣いちゃいそうなんだけど」
マイガーさんがあからさまにショックをうけた顔をした。
「マイガーさんにはこの前撮ったツーショット写真があるでしょ!」
「勿論、大事にしてるよ」
マイガーさんはへにゃっと笑った。
でっかい男の人なのに可愛く見えるから不思議だ。
こういうところが女性客を集める要因なのだろう。
「お嬢は?今回の写真部屋に飾ったりしてないの?」
マイガーさんに言われて私は顔が熱くなるのを感じた。
「な、何その可愛い顔!誰の写真飾ってるの!?」
「い、言いたくないです」
「何それ!可愛い!お嬢お願い教えて!」
マイガーさんを筆頭に、殿下と庶民棟の皆さんも興味深々だ。
どうしよう………恥ずかしい。
「ノッガー様~教えてくださいよ!私達応援しますから!」
お、応援?
何の応援?
私が首をかしげると後ろから誰かに頭をポンポンと叩かれた。
振り返るとそこにはお兄様が立っていた。
「ユリアスが飾っているのは僕との写真だ。文句あるかマイガー」
「何で若様なのさ!」
マイガーさんに肩を掴まれ揺さぶられた。
「だ、だって、考えてみればお兄様と二人きりで写真なんて無かったから、家族写真の中に混ぜて飾ってます………子供ぽくて恥ずかしいからこの話は終わりです」
私は顔を両手で覆った。
「お嬢が可愛くて辛い」
指の隙間からまわりを見るとマイガーさんが膝から崩れていた。
定食を何処にやったのか心配になる。
よくよく見れば近くのテーブルに置いてあるからセーフだ。
「お嬢!俺の写真もかざってよ!」
「何で?」
「何で!それ聞く?俺がお嬢の事大好きだからに決まってるじゃん」
私が首をかしげると、お兄様が私を背後から抱き締めて言った。
「マイガー、ユリアスの半径一メートル以内に入るな」
「若様が居るの忘れてた~」
マイガーさんは更にうつむいた。
「じゃあ、店の皆で写真撮りましょうか?店の皆も私の大事な家族だから」
「それだと目的が変わってくるって言うか………」
マイガーさんがブツブツ何かを呟いていたがよく聞き取れなかった。
まあ、それも仕方がないと思う。
遠くのテーブルにいたバナッシュさんが叫んだからだ。
「…そんなわけない!」
何を騒いでいるのだろうか?
バナッシュさんの手には最新の予言書が握られていた。
ああ、ヒロインが王子ではなく侯爵を選んだからか。
私はそんなバナッシュさんを見て満面の笑みを作ったのだった。
矛盾や引っ掛かるところがあると思います!
ごめんなさい。