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階段落ちは危険では? 王子殿下目線

 その日、学食で昼飯を食べているとバナッシュがやって来た。

 俺以外のユリアスとローランドとマイガーが貼り付けたような笑顔を作った。

 腹黒とは何時でも笑顔を作れて凄いと純粋に尊敬する。

 まあ、良い意味では無いが。


「バナッシュちゃんどうしたの?」


 マイガーが聞くとバナッシュは目をキラキラさせた後、躊躇うように言った。


「私、ユリアスさんと仲直りしたくて」


 バナッシュはユリアスを見ることなく俺を見ながら言っている。

 バナッシュ、仲良くする気がないのが駄々漏れだ。


「ユリアスさんは私に対して誤解があると思うんです!だから、放課後二人きりでお話しませんか?」

「……かまいませんよ」


 ユリアスが了承するとバナッシュはユリアスに紙を手渡した。


「絶対に一人で来てくださいね!」


 バナッシュはそう言い残して去っていった。


「まあ、バナッシュさんたら階段落ちをしたいみたい」

「階段落ちってあれだよな?」


 俺は預言書を思い出していた。

 嫉妬に狂った伯爵令嬢がヒロインを階段から突き飛ばし侯爵子息が助ける、あれだ。

 だが、ユリアスは嫉妬に狂ったりしない。


「どうやるつもりだ?」

「私が突き飛ばしたように見えれば良いんでしょ」

 

 簡単に言うユリアスが心配になる。


「大丈夫か?」

「記録用魔道具をセットする時間はたっぷりあります」


 ああ、彼女はこういう女だった。





 放課後、俺はやっぱり心配でバナッシュが指定していた場所の近くの階段に向かっていた。

 階段の近くまで行くとラモールが居るのが見えた。

 その先の階段の上に居るのはバナッシュとユリアス。

 その時だった。

 バナッシュが階段を踏み外した。

 預言書の中では階段の中ほどまで来た時に突き飛ばされるハズなのに。


「いぎゃぁぁぁぁぁ」


 バナッシュがカエルを踏んだみたいな悲鳴を上げた。

 たぶん、本気で階段を踏み外したのだろう。

 慌てたのはユリアス。

 バナッシュに思わずといったように手をのばし、バナッシュもその手に掴まった。

 が、予想外の事がまたおきた。

 バナッシュはユリアスの手を引っ張り遠心力を使うと体勢をかえた。

 そのせいでユリアスが階段から落ちる事になってしまった。

 俺は風の魔法を使い加速するとユリアスをギリギリで受け止めた。

 ギリギリすぎた。

 受け止めた衝撃で頭がクラクラして強く目をつぶった。

 情けない。

 もっと格好良く助けられないのか?

 クラクラする頭の中にユリアスの声が響いた。


「殿下!しっかりして!」


 かなり動揺した声だった。

 ゆっくり目を開けるとユリアスはポロポロと涙を流していた。

 な、泣いてる!


「ユリアス」


 驚いてユリアスの名前を呼ぶとユリアスは心配を顔に貼り付けて俺の顔をペタペタと触りながら言った。


「殿下、痛いところは?気持ち悪いとか頭痛いとか無い?」

「ああ、大丈夫だ。君は?」

「私は殿下がかばってくれたから………殿下が死んじゃったかと思った……」


 涙はまだポロポロと流れている。

 そんな顔されると困るな。

 ユリアスが可愛く見えてしまう。


「歯車は代えがないって事か…」

「馬鹿な事を言わないで下さい!私は……」


 うわ、何かに耐えるような可愛い顔。


「殿下が私のせいで怪我なんかして……慰謝料なんて考えたくない」

「………君は本当にぶれないな」

「私は歯車だと思った人は大事にします。だから、怪我なんかしたら許しません」


 あれ?ユリアスってこんなに可愛かっただろうか?

 

「王子様、大丈夫ですか?」

「王子」


 バナッシュとラモールが近づいてくると、ユリアスは泣いているのがバレないように俺を気遣うそぶりを見せながら言った。


「早く医療魔法を使える人を連れてきて下さい」


 慌てたようにラモールが走っていった。

 バナッシュは俺の横に座ると言った。


「私が落ちれば」


 まったくだ。

 ユリアスがケガしていたらと思うと血の気が引く思いだ。


「滅多なこと言わないで、バナッシュさんが落ちそうになったら私は何度でも助けます」

「私のことなんて放っておけば…」

「貴女が危険な事をしなければ放っておきます。けれど、命の危機があるなら何度でも助けます」


 ユリアスは涙を袖口でぬぐうとバナッシュを睨み付けた。


「目の前で人がケガをするのも死ぬのも見ていて気持ちの良いものじゃないって事ぐらい解らないの?」


 ユリアスが本気で怒っている。

 どうやら、俺が思っているよりもユリアスは俺を重要だと思っていてくれているんだって解って結構嬉しく思ってしまったのは秘密にしようと俺は決めたのだった。


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